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説明を終えたシリル王子はローランに向かって、
「この後、アンリと打ち合わせをしてほしいんだけど、僕もアンリと少し話しておきたいことがあるから、ちょっと待っててね」
と言って、一旦、彼を別室に移動させた。
その後、アンリに向き直り、
「ちゃんと大人しく話を聞いていて偉かったね」
と褒めてくれたが、アンリの所感としてはーーシリル王子には申し訳ないが、一連の流れに懐疑的だ。
「ローランは嫌そうにしていましたけど……」
本当に協力するつもりはあるのだろうか。王子の手前、その場しのぎに請け負ったふりをしただけのような気がする。
アンリの言葉に、シリル王子は飄々と告げた。
「まあ、面倒ごとを持ち込まれたんだから、嫌だろうねえ。ーーでも、そうしなきゃいけないことは、貴方と同様、彼も分かっているはずだよ」
アンリとは逆に、シリル王子はローランが協力してくれることを疑ってはいないようだ。何故だろう、とアンリが首を傾げていると、シリル王子は苦笑を漏らす。
「だってお兄様を通さず呼びつけたのに、ここに来てくれた。僕から話があるって聞いた時、すぐにアンリに何かあったんだろうって分かったはずだよ。いつも元気いっぱいな貴方が、突然、一週間も休んでいるんだもの」
元気いっぱい、という言葉に、ローランが言った「君でも風邪をひくんだな」と同じ響きがあるような気がするがーーきっと気のせいだ。
「第一陣営筆頭騎士の権限は強い。彼の立場なら、断ることもできた。それでも来てくれたんだよ」
そもそも、とシリル王子は続けた。
「ローランは騎士としての筆頭でもある。貴方に何かあったら、もちろん貴方の副官が代行するけど、絶対に不足が出る。そうなると、ローランがそれを補う必要があるからね。それはそれで、彼も面倒なはず」
悔しいがローランは自分より僅かに立場が上だ。
「貴方に第二陣営をしっかり抑えさせておく方が、彼にとっても長い目で見ると得なんだよ」
シリル王子の説明は理解したが、それでも首を傾げずにはいられない。
「でも最初は断られましたが……」
大概、迷惑そうな顔をしていたが。するとシリル王子はくすくす笑った。
「アンリはローランのことになると周りが見えないねえ。あれは腹芸だから。易々と請け負ったりはない。仕方なく折れてやるけど、お前たちが協力することが前提だって暗に言ってるんだよ」
それが本当なら、王位継承権を放棄したとはいえ、第二王子に対して、なんて不遜なんだろうと内心、憤る。同時に、こうも思う。
「私がカミーユ様に何か頼まれましたら、即座にお受けしますが」
「そりゃお兄様は次期国王だもの。僕とは立場が違う」
シリル王子のその認識は、アンリとしては多少、不本意だ。シリル王子だって兄王子から強い信頼を得ている方だ。
「カミーユ様が王位継承者だから命を聞くのではありません。カミーユ様が貴方の兄君だから、聞くのです」
自分はシリル王子の忠実な部下だということを主張すると、シリル王子はくすぐったそうな、そして嬉しそうな顔をした。
「ふふっ、アンリらしいね。。ーーもちろん、貴方の忠誠を疑ったりしない。貴方は、僕が誰よりも信頼している人だもの」
その言葉はアンリにとって、主人からの何よりの報償だった。しかし。
「だからこそ、僕も貴方をしっかり支えたい。そのためには、ローランの助力が必要だと僕は判断した。……ちゃんと仲良くするんだよ? 間違っても『お前の力なんて借りないよ、クソが』なんて言ったら駄目だからね」
最終的に、しっかりアンリにも釘を刺してくるシリル王子は、やはり策士だと思った。




