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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます if  作者: しののめ


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1-2

 彼は、物語の王子様然とした美しさに反して、腹が立つほど強い男でもある。


 ーーよりによって一番最初に出会うのがローランとは、幸先が悪い。そもそも。


(こいつに殺される夢を見て、こうなったし!)


 夢の中では、アンリが属する第二陣営とローランが属する激しく争っており、その中でアンリはローランとあい見(まみ)え戦った末、殺されるという夢だ。


 妙にリアルな夢で、今思い出すだけでも刺された胸がじくじく痛むような気がする。


 それに。


(いつもはお前、こんなところにいないだろう!?)


 筆頭騎士には二つの私室が与えられる。一つがここ、騎士宿舎の一室で、もう一つは王城にあり、仕える王子の私室の近くに位置する。

 ローランは普段、王城の私室に詰めていることが多く、滅多に騎士宿舎に戻らない。そのうえ、この辺は第二陣営の騎士が多い界隈……つまりアンリの影響力が強い場所なので、第一陣営の筆頭騎士は、滅多に寄り付かない場所だ。


 しかし出会ったものは仕方がない。


 幻影魔法は完璧なはず。であれば不自然な動きにならぬよう、いつもどおり背筋を伸ばして歩くだけだ。何食わぬ顔で通り過ぎようとしたが、


「アンリ」


と声をかけられた。


 ……………。


(ーーいつもは声なんて、かけてこないだろう!!)


 何故、今日に限って声をかけてくるのか。その存在の全てが小憎らしい。


「……な」


と答えようと声を出した瞬間、いつもより声が高いことに気づき、慌てて変声の魔法をかけた。誤魔化すため軽く咳払いし、


「なんだよ」


と言い直した。


「いや……昨日は予定にない休みを取っていたようだが」


 まさか、突然休んだアンリを心配したというわけではないだろう。

 アンリが休めば、基本、副官が代理で業務をこなすが、副官の権限では出来ないものもある。その場合、ローランが業務を代行することになる。


 自分に面倒が降りかかってくるのを煩わしく思い、探りを入れたのだろう。つまり、アンリが長期に休む可能性があるかどうかの見極めが目的だ。


「俺だって休みくらい取るよ」


 新人騎士時代は休みなどないに等しかったが、任期も半分を過ぎると、次世代に任せるべきこともあり、適宜休暇は取得している。


「君が突然休んだから、第二陣営の騎士たちが心配していた」


 予告なく休んだことが問題なのだろう。アンリはそれっぽい理由を告げておく。


「大したことじゃない。少し風邪気味だったから大事を取って休んだだけだ」

「……君でも風邪を引くんだな」


 含みを感じる一言である。


「なんだそれ!? 馬鹿は風邪引かないとでも言いたいのか?」

「そんなこと言ってないだろう? 被害妄想だ」


 目の前に立つ男は、誰にでも人当たりが良く品行方正な好青年と言われているが、アンリには当たりがきつく、時折、こんな嫌味をぶん投げてくる。


 まあ、アンリが悪い部分もあるのだが。


 王立学園で同級生だった六年間、首席であったローランに対抗心を燃やし、


「次の試験で一位を賭けて勝負しろ!」


だの、


「武闘大会で、絶対お前に勝つ!」


だの、何かにつけ突っかかっていたため、当時はさぞ、アンリのことが鬱陶しかったに違いない。


(しかも、一回も勝てなかったし)


 悔しい限りである。


 しかし騎士になって大人になり、必要最低限しか関わらなくなったのだ。若気の至りということで、当時の黒い歴史は忘れて欲しいところである。


「……まあ、いい。明日からは出てくるんだな」

「明日は出るよ」


 そう答えると、ローランは一応納得したのだろうか。そうか、と応じ、そのまま去って行った。

 その後ろ姿を見送って、アンリはひとまず、ほっと胸を撫で下ろす。


(不審には思われなかったみたいだな)


 アンリの異変に気付きそうな人間は、この王城では主に二人。そのうちの一人は、先ほどのローランであり、何とかごまかせた。そして、もう一人は………と考えているところで、


「アンリ様」


と声をかけられた。アンリの身の回りの世話をする双子の従騎士であり副官の片割れ、テオだ。彼は心配そうに言葉を継ぐ。


「お加減が悪かったと聞きましたが、大丈夫ですか?」

「ああ。もう大丈夫だよ」


と答えたが、テオはまだ心配げにアンリを見つめていた。


「そうですか……昨日ちらりとお見かけした時、すごくモコモコされていましたし、まだ少し顔色が悪いように見えますよ」


 ーー昨夜の着膨れしている姿を目撃されてしまったらしい。

 何にせよ、この状況だ。顔色が悪いのも当然だが。


「シリル王子も大変心配されておられました。動けるようになったら顔を見せるように、と仰せです」

「そ、そうか。……すぐに向かおう」


 もう一人の、アンリの異変に気付きそうな人間である主君シリル第二王子。

 最初から、最大の難関が立ち塞がっていた。

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