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死に戻ったら前世で私を殺した宿敵が溺愛してきます if  作者: しののめ


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五-1 第一陣営の騎士たち

 艶やかな漆黒の髪、濡れたようにも見える黒曜石の瞳。闇の精霊のように凄絶な美貌の主は、ローランを見ながら苦しげな表情で毒づいた。


「この、クソ野郎……!!」


 自分の手には短剣。その切先が彼の胸に深々と沈み込んでいる。明らかに致命的な一撃だった。


 ーーそれは、全て夢の中での出来事だ。


 ローランがフィリウス王立学園に通い始め、アンリという存在に出会った頃から度々見るようになった夢である。


 その夢の中の自分は、強い執着心と使命感を持って「彼を殺さなければ」と思っているのだが。


(何故だ……?)


 意味が分からない。


 ーー確かにローランにとってアンリは、面倒であると同時に無視できない存在ではあるが、殺したいというような物騒な願望は持ってないと思うが。


(いや……)


 深層心理では殺したいと思っているのだろうか。確かにアンリが女になったという話を聞かされた時には、


「よりもよって何故アンリ」


とは思った。


 他の人間なら騎士を辞め、ひっそりと女性として第二の人生を歩むという選択肢もあるだろう。

 だがアンリは騎士の名門セネヴィル家の一人息子で、北の要衝地スヴェン領の跡取り息子だ。姿を眩ますなど許されない。


(アンリ、か……)


 アンリ自身に責任がないこととはいえ厄介なことに巻き込まれ、考えるだけで頭が痛かった。


⭐︎


 そんな折、


「たまには飲みに行こうぜ」


と同僚から誘われ、気分転換の必要性を感じたローランは、久々に城下町に出ていた。


 誘ってきたのは学生時代からの友人であり副官のレノー・フォートリエであり、他に従騎士のフレッド・ラフォレが付いてきた。


 社交性に富むレノーは、こうしてたまにローランを連れ出す。なお、フレッドはローランの遠縁に当たり、シャルトル家の血筋である。どちらもローランが信頼する第一陣営の騎士である。


 自分達は国家の防衛機関の幹部だ。そのため酒精が入る飲み会は、どんな店でも良いというわけではない。そういうわけで結局、行きつけの店に行くことになる。


 ここは高級な店だが、雰囲気は砕けた感じである。しかも個室完備で従業員の教育も行き届いているため、気楽に飲める貴重な店であった。


 酒が進んでしばらくすると、ちょうど良いくらいに酔ったレノーが、グラスの中の氷をカラカラ鳴らしながら、


「お前さ、官女のステラちゃんから迫られたって本当か?」


と、どこから仕入れてきたのか探りを入れてきた。


(ステラって誰だ?)


と本気でそう思った。強引に迫って来た見知らぬ女官の名を、一々覚えてはいない。しかし思い当たることが複数あり、隠すようなことでもなく、また人物を特定せずとも話は進められるなので、


「……まあ、そうだな。断ったよ」


と答える。


「え? もったいねえ。ステラちゃん、美人だったじゃん」


 レノーはそう言うが、男女を問わなければ、王立学園に入学した時から類稀(たぐいまれ)な美貌の主を、見飽きるほどに見慣れている。


 そもそも自分がパートナーに求めるものは、そういうものではない。


「この年になってくると、将来のことも考えるだろう?」


 ローランの家庭環境ーーシャルトル家の内情は複雑だ。


 シャルトル家はセネヴィル家と双璧を成すフィリウス王国の名門だ。

 しかし国をいたずらに混乱させ毒婦と呼ばれた国王の第二夫人アンジェラに与し、彼女と共に権力を私物化していたのだが、アンジェラが失脚し急逝するなり、共倒れになったのである。


 ただ、ローラン自身は幼い頃から王位継承権者であるカミーユ王子の支援を受け、シャルトル家から距離を置いていたため、あまり影響を受けずに済んでいるが。


 それでも、残念ながら完全に縁が切れるものでもない。

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