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第38話 竜狩り船


 エリオたちは幽霊船の内部へ足を踏み入れた。


 船内は静まり返っている。


 床板は腐り、

 踏むたびに木がぎしりと軋む。


 霧が船内まで流れ込み、

 白く漂っていた。


 リュカが小声で言う。


「なんか……変な感じ」


 ルルカが周囲を見回す。


「魔力が残ってる」


 ベルクが短く言った。


「気を抜くな」



 奥の部屋。


 床に何かが転がっていた。


 プルだった。


「助けてケロ……」


 足に


 白い手


 が絡みついている。


 ルルカが手をかざした。


 淡い光が弾ける。


 手は


 霧のように崩れて消えた。


 ルルカが言う。


「亡霊の類ね」


 プルが立ち上がる。


「怖かったケロ……」


 しかしその時。


 ベルクの視線が止まった。



 壁。


 そこには巨大な武器が並んでいた。


 長い槍。


 巨大な鎖。


 鋭い鉤爪。


 ベルクが低く言う。


「これは……」


 ルルカが近づく。


 武器を見つめる。


 そして静かに言った。


「竜狩りの装備ね」


 空気が変わる。


 リュカが目を見開く。


「竜を……狩る?」


 ルルカは頷く。


「昔はあったのよ」


「竜は金になるってね」


 エリオは武器を見つめた。


 胸の奥がざわつく。



 その時。


「これ見て」


 ルルカが古い本を拾い上げた。


 航海日誌だった。


 ページはボロボロ。


 読める部分だけが残っている。


 


 「竜を発見」


 「子竜だ」


 「逃がすな」


 


 ページをめくる。


 


 「竜が怒った」


 「海が割れた」


 「これは罰だ」


 


 最後のページ。


 文字が乱れている。


 


 「奴が来る」


 


 その瞬間。


 船が揺れた。


 ギィ……


 奥の通路から音。


 影が動く。


 ぼんやりと人の形。


 船員だった。


 だが


 体は霧のように透けている。


 目だけが光っていた。


 ベルクが剣を抜く。


「来たか」



 亡霊船員が襲いかかる。


 エリオが蒼刃を抜いた。


 斬る。


 だが


 刃はすり抜けた。


「効かない!?」


 亡霊の手が伸びる。


 ルルカが前に出る。


 光が集まる。


 閃光。


 亡霊が霧のように消えた。


 ルルカが言う。


「この船……」


「呪われてる」



 その時。


 霧が渦を巻いた。


 船の奥。


 巨大な影。


 


 その影は、


 船が揺れているのに


 まったく揺れていなかった。


 


 霧が裂ける。


 巨大な骨の翼。


 エリオが息を呑む。


「……竜⁉︎」


 霧の影は巨大だった。


 だが


 その中心にいる竜は


 子竜ほどの大きさしかない。


 ベルクが眉をひそめる。


「竜?」


「こんな時に何を冗談言ってる」


 エリオは指をさす。


「いや、そこに竜の亡霊が」


 プルが震える。


「幽霊コワイ、いやだよ」


 ルルカが腕を組む。


「エリオしか見えないわけね」



 霧の中。


 竜の亡霊がゆっくり目を開いた。


 その声は


 エリオの頭の中に直接響いた。


 


「……人の子よ」


 


 エリオが身構える。


 


 亡霊竜の視線が


 エリオの剣に止まった。


 


「……あれ?」


 


「その剣」


 


「邪竜殺しじゃん」




「なんで人間が持ってんの?」


 


エリオは眉をひそめる。


「え?」


 


 だが次の瞬間。


 


「チュリッス」


 


 エリオは固まった。


 


 「マジ見えてる?」


 「うわ、嬉しい」


 「何年ぶりかな。話したの」


 


 エリオは心の中で突っ込んだ。


 (軽っ!)


 


 亡霊竜が慌てて咳払いする。


 


 「待って、やり直すね」


 「この反応嬉しすぎてつい」


 


 そして小声で言う。


 


 「この船」


 「竜封印の匂いが強くてさ」


 「なかなか出てこれなくて」


 「出ても誰にも見えないし」


 


 ルルカが聞く。


「エリオ、なんて?」


 エリオは答える。


「久しぶりに出れて嬉しいって」


 


 亡霊竜が慌てて姿勢を整えた。


 


 「コホン!」


 


 声の調子が変わる。


 


 「人の子よ」


 「なぜここにいる」


 


 エリオは剣を構える。


 


「俺は……」


 


 竜の目が光った。


 霧が揺れる。



 その時だった。


 船の奥から


 さらに重い音が響いた。


 ギィ……


 巨大な扉が開く。


 暗闇の中で


 何かが動く。


 竜が小さく呟いた。


 


 「……あ」


 


 エリオが聞く。


「どうした」


 


 竜は言った。


 


 「本物の呪い、起きたかも」

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