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俺達が魔法を使う理由  作者: イイコワルイコ
その4、壊れキャラは突然に
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火種




もう少し。



あともう少しだけ…イベントが遅れて発生していれば。




「あと2日で終業式だぞ…そのまま夏休みなのに…!」


立ち直ってしまった。


いや、その気になれば無理やり行かない方法もあるだろうけど。



何かと気まずい!!


行きたくない!


いいか!


クラスで普段不登校気味の奴が珍しく登校した時は!


適度な距離感で!


腫れ物に触るように、でも友達っぽく少し雑に!


来てくれて嬉しいという特別扱い、しかしお前は皆と同じだという特別扱いしない的な意識を



ガラガラ…


「おおおおお!夏野っちいいいい!」

「夏野君ーーーー!」

「…お金貸して」



だ、ダメ…助けて…!!


ヘーーーーーールプ!!




…………………。



楽しい人間を演じてるのか?


それとも本当に面白い人間なのか?


でも、疲れるんだよな。


だけど、少し充実した気分。


………。


………ヒカリさんは学校に来てなかった。




「モモは一緒に暮らしてるし…住所なんて知らないしなぁ…」


「夏野っ!今すぐ職員室来い!」


「え?」

ー夏野っちやらかしたのー?

ー大丈夫?

ー…ワンコインでいい。



…………。



「火狩から話は聞いてるぞ」


「あの…」


「お前は一体何を考えてんだ!」


「いや…」


「ちゃんと着けろ!ったく、不良でも着けるやつのが多いってのに」


「…うん?」


「なんだ。何か言いたい事でもあるのか。」


「先生、確認のために聞きますけど」



「これ、何の話ですか?」



「ああそうか、しらばっくれるのか。だから火狩も困ってお前の連絡先やら住所やら聞きに来たんだな!」


「は?」


…俺の部屋に突然現れた時か。


「お前な。出来てしまったからには、ちゃんと考えるんだ。育てる力は何もお金だけじゃない。家族同士で話し合って、協力して子育てすることだって不可n」


「先生。先生。聞いてください。」


「なんだ。」


「俺、キスすらした事ないです。」


「…お前!キスも無いってそんな…愛の無い子だと!!ちょっと家族に」


「いや、だから!俺まだ新品!」


「なーにを言ってる!今電話するからな!」



「俺はまだ童貞だってば!!!!」



シーーーーン……



勘違いして勝手に盛り上がるタイプのお前。

俺は、お前が、大っ嫌いだ。



「……先生、俺が不登校になった時はあなたの責任だからな。」


「夏野…夏野、すまん、ちょっと…夏野…待って…ごめーん!」



授業中だから生徒はいない…ギリギリアウトぐらいだ。

でも、男にとってこの問題は地球温暖化よりも重大なんじゃないか?

世界より先に自分が崩壊するもんな。

とにかく、帰ろう…予想外過ぎるけど、コレをネタに学校を休める。

先生に責任を主張すれば単位も大丈夫。


少し早い夏休み、いただきます。





「ただいま。」


「ナギちゃん。学校から電話があって、先生がずっと謝ってきたわよ?何かあったの?」


「ああ。俺と先生の問題だから、俺の大切な心の問題だから、本当に、詮索しないでほしい…」


「ああ…ナギちゃん、ナギちゃん。」


「どうしたの?」


「お客さん来てるわよ?ガール・フレンド?うふ。」


「いや。もうそういうの嫌だ。」


「あ、ごめんなさい…夜ご飯…コロッケだからねー、テーブルに置いとくから!」

「はーい。」



ガールフレンド?

俺を訪ねてくる人がそもそもいないし。

誰かなんて考えるまでもない。



ガチャ。


「話って…あれ?」


違う…!!


「勇者。待ってた。」


「モモ?え?お前1人?」


…………………。




もぐもぐ。

「…コロッケ。」


「これ食べるの初めてなのか?」


「おいしい。」


「そ、そうか。じゃあ俺のも食べていいぞ?ほら。」


「…食べる。」



モモの事もあんまり分からないな…



「勇者。」


「なんだ?」


「ヒカリ、様子がおかしい。」


「…………。」


え?本当に出来てしまったとでも?

だとしても俺は…"新品"だよ?

性教育が恥ずかしくて困るレベルだよ?


「勇者。」


「んあ!?ああ。えっと…どんな様子?」


「毎日、魔物探す。戦うために。」


「ああ…俺達は皆そうだろ?」


「モモ達を攻撃、後悔してる。」


「…あの日か。」


思い出したくないな。


「とりあえず、話し合えってことか?」


「………おいしい。」

もぐもぐ。



……………。



モモのこと、餌付け出来るんじゃないか?

なんて考えてたら連れてこられました。


ここが…ヒカリさんのお宅…


「オートロック・マンション……!」


うーん。現代ならまあよくあるじゃんと思うだろうけどさ。

なんかちょっと…見た目が、こう…高級感?あるんだよね。

本当に…


ドン。


「あ。」

「あ、すいません。大丈夫ですか?」


完全に外観眺めてよそ見してたらぶつかってしまった。

住人かな?


「あぁ…大丈夫です。それじゃ。」


「…………あ。」


俺知ってるよ!あれ、ユーシャーズに取材記事載ってた!

RPG大好きなアイドル、マリマリだ!


「芸能人が出入りするレベルか…」


「勇者。早く。」


「ああ。ごめん。」




ガチャガチャ…


「え、モモ、お前合鍵とか持たされてないの?」


盗賊の鍵を生活面でそんな使い方する!?


「開いた。」


「お、おじゃましまー…す。」


女の子の部屋に…しかも家主は居ない…!

すごい背徳感が…


あんま女の子してないというか…


「大人かっ!!」

「………?」

「いや、なんでもない。」


オシャレ空間。そして所々に彼女の匂い。

………ぬいぐるみが…ああ、モモのか。


「…お茶。おいしい。」

「ありがとな…」


………なんだこれ。前回の熱い戦闘からなんだこれ。

緩急酷すぎて酔っちゃうよ。リバース寸前。



ガチャガチャ…


帰ってきたーーー!待って!心の準備が!



「ただいまー。」


スタタタ…

「ヒカリ。」


帰りを待ち望んでた子供か!

いや、ツッコミで誤魔化してる場合じゃない!

落ち着け…落ち着け…!


「…ナギ君?来てたのね…」

「…も、モモが連れてきたんだよ。」


よし、大丈夫、事実。


「そうなの…この前は突然家に行ってごめんなさい。」

「い、いや…俺も…ちょっと…色々あったから…あの時はごめん。」


やっぱり気まずい。


「あー、えっと、今日学校来てなかったね?」

「そうなの。魔物と戦闘していたから。」

「先生に呼び出されてさ…あはは。びっくりしたんだ、ヒカリさんが出来ちゃったとかで一方的に怒鳴られて」

「…あ!!」


はい、口ポカーン。


「ごめんなさい!ナギ君の連絡先とか聞きたかったけど先生が教えてくれないから…」

「やっぱ口実だよね…はは…」


…………………。


そこから、モモの本格的な食欲のゴングが鳴ったのをきっかけに、少しずつ溝が無くなった。

と、思う。


いや、モモも俺も、どちらかと言えばよく食べる年頃だとは思うけど、俺は夜飯2回はキツい。




「俺さ、ヒカリさんのこと、モモのこと、ちゃんと知らないなって思ってたんだ。」

「そうね…私もナギ君のこと、あまり詳しくないかも。」

「だから、聞かせてほしいな。どうしてヒカリさんは戦うことになったのか。その…家族を差し出してまで。」


「あれは…私が10歳の頃よ…モモちゃんくらいの時かしら。」

「モモって10歳?」

「モモはモモ。」

「そう来るか…」


「うふふ。…当時、とっても仲の良い友達がいたの。親友ね。その子とは、死ぬまでずーーっと仲良く一緒に居ようねって。」


「その子、私の目の前で殺されてしまったの。」


「………。」


「その"何か"は泣いてる私に見向きもしないで、周りの人達に魔法を撃ったわ。そしたら…」


「誰もその子を覚えていなかった。」


「その子のご両親は、子供を授かったことは無いと言ったわ」


「小学校にはあの子の席も、何の記録も無くなっていて…」


「私だけが彼女を覚えていた。」



「私は両親に精神的に病んでいると思われて、冷たく扱われるようになったの。」



「カウンセラー、セラピー、色んな病院に連れていかれて。"見えないお友達"を消すための毎日。」



「そんな辛い日々に、突然終わりがやってきたの。」



「そのお医者様は、私に魔法を見せてくれた。その場で小さな虹を作ったり、ぬいぐるみを動かしたり。」


「こう言われたわ。」


『君のお友達は、悪い魔王に魔法で消されてしまったんだ。君が皆の"光"となって魔王を倒して、お友達と世界の平和を取り戻さなくちゃね。』


「そして、そのお医者様は両親に治療と嘘をついて…私にテストをした。」


「子供ながらに強い復讐心を"燃やして"いた私は強い魔法を求めた。」


「でも、まだ幼くてその役割は付与出来ず…私は魔術師になった。」


「偶然にも名前の通り。火で魔物を狩り、皆の"光"となって。」


「今は家族を差し出したこと、後悔しているわ。私のことを、治そうとしてくれていたんだもの。当時の私には、そう見えなかったのだけれど。」


「………。」



親友を目の前で殺されて

周りの人達からその子の記憶が消された

両親に冷たく扱われて

家族を犠牲にしてでも親友を救いたかった


「……深いな、闇が。」


「…そうね。」


「…ヒカリさん、頑張ったよ。」

「ヒカリ、えらい。」


「うふふ。ありがとう、聞いてくれて。初めて話したわ。こんなにスッキリするのね。」


「え?バカには話してないの?」


「バガ様には話してないわ。あの人は…ただ、最初に配属されたエリアで戦いを教えてもらっただけよ。」


「そ、そうなのか…あいつ知ってるみたいな感じだったから…」


「うふふ。あの人の中では私とハネムーンにも行ったことになってるくらいだもの。」


「…と、とりあえず。このことはここだけの話にしよう。」


「どうして?」


「なんか、バカとかに話したら…うん、勘違いが加速しそう。」


「…そうね、ここだけの秘密にしましょう。」




……zzzz


「んへ?」


「あら。寝る時間だもの。待ってね、ベッドに運ぶから。」



…そうか、もう夜中だ。


人生初の、女の子の家で夜遊び。


いや、それなりに真剣な話だったけどね。


また明日から、やり直せる。


世界を共に救う。絶対に。








「…ナギ君も泊まっていくでしょう?」


「…え?」




大変。

自分が片付け苦手な人だと今更思い出した。


この物語…ちゃんと散らかした物を片付けられるのだろうか…

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