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11.変わり果てた町

 仲のいいラムネとガムの大げんかに、キャンディちゃん一家の花壇が荒らされた事件。それだけでも、花の町では大事件でした。なぜなら、この町にはおおらかな性格の持ち主しかおらず、このような事件が起こる事は滅多になかったからです。しかし、キャンディちゃん一家の花壇が荒らされたその翌日も、事件は続きました。町一番の富豪である《白ブタ》のミスター・ディンガが、一番大切にしていた幻の宝石である精霊石を盗まれたと、きいきい騒ぎ出したのです。ミスター・ディンガによれば、その精霊石には文字通り、精霊が宿っており、彼の屋敷を守る役目も担っていたという本当に大切なもので、厳重に保管してあったにも関わらず、その警備をあざ笑うかのように、他のお宝には目もくれず、精霊石だけが盗まれていたという。

「しかし、そんな大切なものを盗むような者がこの町にいるのかどうか……」

 ミスター・ディンガにきいきい文句を言われて、花の町の《黒ヤギ》町長は頭を抱えていました。ミスター・ディンガは、町一番の富豪であると同時に、神経質で心配性といわれるくらい、疑り深い性格をしていました。もしかしたら、精霊石が無くなったのは、ミスター・ディンガの勘違いで、どこかに転がっているだけなのではないか、という考えすら噂されるほど、この町で泥棒という行為はあまりないものでした。

 しかし、その次の日も、事件は続いたのです。次に被害を受けたのは、なんと、《黒ヤギ》町長の方でした。町長が盗まれたのは、いつも首から下げているロケットでした。それは、若かりし頃の町長さんと、約十年前に若くして病で亡くなったという奥さんとが一緒に写っている写真が入ったものでした。

 町長さんにとって、それはそれは大切なもののひとつであることは、誰もが知っていました。ロケットを首から下げていない町長さんなんて、見た事がないってくらい、いつも下げているのですから。

 ロケットを盗まれて、町長さんはひどく落ち込みました。そして、暇さえあれば町中によく現れていたと言うのに、あまり人前に姿を見せなくなってしまいました。

 こうして、花の町では、物を盗まれる人がだんだん増えていきました。そしてついに、ビスの家にも、防犯対策として家に鍵を使うことになったのです。そうです。いままで、花の町の人達は、鍵というものを使っていませんでした。使っている人と言えば、お宝のために用心深いミスター・ディンガぐらい。そんな町だったのですが、こんなご時世です。たくさんの家が鍵を使い始めました。

 そして、お互いに、お互いを疑いあう日々が、少しずつ始まっていったのです。

 ある人は、夜道で後ろから殴られたと訴えました。また、ある人は、大切にしていた鉢植えを壊されたと訴えました。少しずつ、でも、確実に、花の町で起こる事件は増えていきました。そして、いつの間にか花の町では、「警察署」というものが出来たのです。それまで花の町では、何かあったらすぐ役所へと訴えていました。けれど、役所ではもう受付切らないほど、訴えの数と種類が増えていったのです。

 新しく出来た警察署では、防犯対策を考えるために結成された組合の人達が働いていました。その中には、《雪狼》のお姉さんもいました。フレイズ・ベリーというのが彼女の名前だと、警察署の公開の日に、ビスとクルトンは、初めて知りました。

 正義感の強いフレイズ・ベリーを始め、警察署の人達の目は、めらめらと燃えているかのように光っていました。そのくらい、今の花の町では、犯罪が多くなってしまったのです。

 ビスとクルトンは、めまぐるしく変化していく花の町の中で、さまざまな想いを胸にしていました。隊長の《火ネズミ》ナッツが帰ってきてこの状態を知ったら、なんて思うでしょうか。町のために《のねずみ隊》の活動も忙しくなりそうです。けれど、その《のねずみ隊》の中でも、ラムネとガムのケンカや、サーモンの花壇荒らし疑惑という解決してない問題が転がっているのです。

 ――どうしてこんなことになったのだろう。

 ビスはぼんやりと考えました。

 変化と言うものは必ず起こります。世の中に不変のものというものは、滅多にないのです。だから、花の町も日々変化し続けているものでした。

 ――けれど、花の町がこんな風に変化するなんて、思いもしなかった。

 この変化はどこからやってきたのでしょうか。

 ビスとクルトンは頭を抱えました。

 一体この町で、何が起こっているのでしょうか。


 ※


 今宵の賑やかさはひとしおだった。

 寒さはさほど強くなかったが、念のためにいつものガウンを着てわたしはまた星達と話をしようと空を覗いた。星達の会話は、いつも発見をもたらしてくれる。彼らの頭はとても柔らかくて、ひとつの物事に捉われるということがない。まるで、子どものようでもあるとわたしはいつも感心している。

 子ども。そういえば、最近、町の子どもが遊びに来ない。風の噂で耳にしたのだが、町の方では最近変化が激しいのだという。何やら物騒な噂も聞く。けれど、仕方のないことだ。人が集まり、生活をすれば、おのずと変化は訪れるもの。それが、悪いものでないなどという決まりは、ないのだから。だからこそ、わたしも人を辞め、ここにいるのだから。

 わたしは、星になりたかったのかもしれない。

 だからこそ、星を会話することは楽しかった。

 しかし、今宵の賑やかさは、少し変だった。星達がなにやらざわついているようにも感じる。いつもは穏やかな彼らの瞬きが、どこか緊張しているようにも感じられるのだ。何が違うかと問われれば、答えられる確信はない。けれど、確実に、昨日の夜とは違うことが空で起こっていた。

 わたしはじっと星達を見渡して、ふと、一点で目を留めた。

 メドサだ。

 先日、空にぽつりと生まれていた赤い星の瞬きが、おかしい。周りの星達も、それに反応しているかのようにざわざわと瞬いているようだった。わたしは、今日のメドサが昨日のメドサとどう違うのか、考えてみた。そして、すぐに結論に至った。

 メドサの光が、肥大しているのだ。

 ――メドサ、その赤光、肥大する。

 メドサの光とそれに同調する星達の明かりで、空はとても明るかった。


 コスモス


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