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現代お茶人作家のつれづれ日々帖  作者: 久慈柚奈
2026年4月

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茶溜まりを覗きこむのが好きすぎる

茶溜(ちゃだ)まり」とは、抹茶碗の内側底部にあるくぼんだ部分のこと。

茶碗にはありとあらゆる部位に決まった名前がありますが(他の形をしたうつわにもあるのかもしれない、私が詳しくないだけで!)、茶溜まりもそのひとつです。


個人的にはこの茶溜まりが美的にも実用的にもとっても重要だと思っていて。

この茶溜まりがしっかりある茶碗でお抹茶(薄茶)を点てると、茶筅を持ち上げた時にお茶が全然ついてこないのです!液だれしないってこと。

道具の美観が守られ、後片付けも楽に済ませてくれる、とってもありがたい窪みなのです。

茶溜まりのないうつわを茶碗に見立てて使ったときや、茶溜まりのない作りの片口碗を使った時は、びっくりするくらい液だれしまして。茶溜まりのありがたみを体感的に知ったわけです。


抹茶碗って骨董品と近接しているからか、手に持てる美術品と言われるからか。「茶をおいしく飲む」という実用面のみならず、形をはじめとした美しさ的な面でも取り上げられますね。

話題にあがりやすいのは〇〇焼きなどの産地と、色柄と、高台(こうだい)の作りとかかなと思いますが……私は個人的に、茶碗をぐっと覗いて茶溜まりを眺めるのが大好き。

いろんな形の茶溜まりがあるんです。

茶碗が緩やかに傾斜していったなめらかさのまま、ちょっと角度が急になったようなのや。

そこだけ型で抜いたみたいにぽこんと窪んでいるのや。

作者の指の動きろロクロの回転が感じられそうな渦巻きや……。


もしかしたら私は、渦巻きに目がないのかも。

うつわの内部に渦巻き状の模様を刷毛で施した模様の「刷毛目(はけめ)」に心惹かれがちだし、茶溜まりも渦巻き状にくるりと丸まっているのが好きなんです。

ロクロが回って、作者さんがそこで手を使って模様をつけていったんだな……とか、

茶溜まりから茶碗の胴へ向かって、絶妙な力加減で作っていったのかしら、とか、

この形で満足いったから窯へ入れたのかしら、それとも究極の形を追求する道の途中にある一碗なのかしら、とか

あれこれと想像を膨らませてしまいます。

真偽は、分からない。

私の知り合いの範囲に陶芸家はいないし、この世に無数にいる陶芸家たちがみんな同じところを目指しているわけでもないと思うから。

この茶碗を作った作者さんには、この茶碗を作っていた瞬間だけの理想や正解がきっとあって。

もしかしたら時間が経つうちに、その正解も形を変えているかもしれなくて。

人間の試行錯誤や歩みの途中に生み出され、偶然今は私の手元にある、茶碗。

そこに形として残された正解の一種の痕跡……。


視点がミクロとマクロを行き来しながら、考え事にふけりたくなる感じです。

うつわって身近にあるのになかなかじっくり見たりしないから……。じっくり見るのも、お抹茶碗だからこそ、なのかもしれません。

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