1970年の万博にはいた、あの人、この人
ふらりと入った古本屋で、はちゃめちゃな掘り出し物を見つけて狂喜乱舞しつつ、読みふけっていました。
その「掘り出し物」こそ、千嘉代子さん著「胸の小径」(淡交社)。
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布で装丁され、紙箱に入った和綴じの本で、とっても保存状態がいいのにお値段はなんと500円。一も二もなく購入を心に決めている自分がいました。
なんといっても千嘉代子さんは、裏千家第14家元の奥様であり、仙台市出身であり、千歳盆という新しいお点前道具を作り出した方。
仙台で生まれ、曽祖母から千年盆はじめ基本の茶道具を受け継いだところから茶道に本格的な興味を持ち始めた私にとって、非常に心を寄せずにはいられない人なのです。
そんな嘉代子さんが随筆(回顧録?)を出版していたとは、店頭で実物を目にするまで知りませんでした。
著者表記によれば、嘉代子さんは口述し、実際に原稿に起こしたのはお嫁さんである登三子さんであるとのこと。千家の家族構成には明るくありませんが(縁あって3代目宗旦さん、14代目宗室さんと嘉代子さんしか知らない)、「胸の小径」を読んだことで登三子さんの存在を強く記憶しました。
今の家元は16代目とのことですから、登三子さんは16代目のお母様にあたるということかしら?
「胸の小径」の中身に話の本筋を戻しましょう。
章立ては日本の12ヶ月に合わせてあり、その月に行われるお献茶やお供茶、咲く花や天候などの列記や、そこから連想して思い起こされる嘉代子さん子ども時代の思い出、子どもたちがまだ小さかった頃のこと……などなど、「とある嘉代子さんの1年」を軸にした回顧録となっていました。
本書の刊行は1974年となっていますが、嘉代子さんが口述したのは1970年ごろと思われます。嘉代子さんが過ごす一年の中に、「万博」が頻出するからです。これは時代と年号を照らし合わせるに、どうやら大阪万博のことらしい。
ちょうど現在の時間軸からすると、21世紀の大阪万博が去年でしたね。
万博を軸に過去と現在を見はるかすような、荘重な気持ちになれる一冊でした。
「荘重」と言えばこの本をうやうやしく扱いたくなる理由は、何もこの本が昔のものだからだけではありません。表紙が布で装丁されているからです。
私は多汗症で手のひらがすぐ汗でいっぱいになってしまうので、貴重な本を自分の手汗で傷めたくないな………とヒヤヒヤしつつの読書でした。
そうはいっても、緊張のしすぎもまた多汗の一因。「胸の小径」は家でゆったりする時に読む本というマイルールを定めて、出先では別の本を読むなど、できるだけリラックスして楽しめるようにしていました。おかげで読了まで、本に新たなしみを増やすこともなく笑。
つるりとして綺麗な紙が本文に使われていますので、きっと私一人の手汗如きで崩壊するほど脆い本ではないことでしょう。
仙台民にとっては、折々に出てくる嘉代子さんの慎ましいお国自慢の言に触れると、一緒に「どうだ、仙台もいいところだろう」と胸を張りたくなりました。京都に無限の憧れはあるけれど、仙台も捨てたもんじゃない………遠く離れた二つの町が、時代も距離も超えて繋が理ます。




