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さればこそ無敵のルーメン  作者: 宗園やや
第六話
49/277

4

ネグリジェ姿の銀髪美女が、真っ暗な廊下を抜き足差し足で進んでいた。

どこに足を置き、どの方向に体重を乗せれば床板が軋み音を奏でないかは、事前に下調べしてある。

事前の練習も万全なので、物音ひとつせずに目的の空き部屋に到着した。

このドアの蝶番には事前に油を差しておいたので、ゆっくり開ければ軋み音はしない。


「ふふふ……。この館に来てからずっと大人しくしていたので、プリシゥアも油断しているハズですわ。このスキに……」


窓を開け、庭に出る。

窓枠にもたっぷりと油を差しておいたので、こちらも音も無く開く。

今夜は月光が明るく、外を歩くには不自由しない。

庭の掃除も念入りにしておいたので、

例え闇夜だったとしても、小石を蹴飛ばしたりへこみに足を取られたりしたりはしないが。

問題無くテルラの部屋の前に来た。

この屋敷の窓は全部屋でほぼ同じ作りになっているので、自分の部屋で外からの鍵開けの練習をした。

だから、窓を開けるのには苦労しない。

そう考えていたのだが、窓が半開きになっていた。

カーテンもしっかりと閉まっていない。


(おかしいですわ。窓を開けて寝る様な気温ではないはずですのに。閉め忘れ? 風邪を引いては一大事ですわ。わたくしが人肌で温めて差し上げますわ)


そっと部屋の中を覗く。

ベッドの位置を確認し、真っ直ぐそこへと向かう為に。

部屋内の床の状態が分からないので音を立ててしまうかも知れないが、中に入ってしまえばどうにでもなる。


(あら、まだ起きていらっしゃる……?)


部屋の中で一人の人間が立っていた。

なので、慌てて頭を引っ込める。


(テルラの体格ではありませんでしたわね……。泥棒? 泥棒なら、窓が開いていた事にも納得出来ますわね)


緊急事態が起こっていると(さと)ったレイは、改めて部屋の中を覗いた。

月光のお陰で良く見える。


(ベッドはあそこ。テルラは眠っていますわね。無事で良かった。机と椅子は、あそこ。犯人は……壁を探っている? タンスとかではなく?)


金目的ではないっぽいが、それだけに意味不明で不気味だ。

静かに窓を全開にする。

この窓もこっそりと油を差しておいたので、泥棒に気付かれる事は無かった。

そうして障害を取っ払ってから、勢いを付けて部屋の中に飛び込んだ。


「何奴! 大人しく投降しなさい!」


相手を驚かせると同時にテルラを起こす目的で大声を出したレイは、部屋に入ると同時に椅子を持った。

犯人は慌てずに短刀を抜く。

この落ち着き、素人ではない。

レイも月光を背に笑んで余裕を演出する。


「わたくしは椅子を使った護身術の心得も有ります。貴方が何者でも、一対一でその程度の刃物なら後れを取りませんわ」


数秒睨み合う二人。

深夜なのでお互いの呼吸音が聞こえるくらい静かだ。


「……」


犯人が無言で短刀を突き出して来たが、レイは椅子の足を絡ませてそれを捌いた。

二度三度と突いて来たが、その全てを椅子で受ける。


「どうですか? 観念しなさい」


「んん? 誰ですか?」


物音でテルラが起きた。


「泥棒ですわ。危険ですので離れてくださいませ!」


「何事っスか!?」


物音に気付いたプリシゥアが起きて来て、鍵が閉まっているドアを蹴破る。


「……っ」


泥棒は突きから大振りに戦い方を変えた。

三対一で不利になったと判断し、立ち位置を移動して窓かドアから逃げるつもりの様だ。

相手の目的は察したが、月明かりのみの薄闇の中での刃物相手は分が悪い。

プリシゥアも慌てて来た為に素手なので、手を出しあぐねている。

レイはまんまと相手の思う通りに動かされ、犯人は窓から逃げて行った。


「待つっス!」


プリシゥアも窓から飛び出し、怪しい人を追って行った。

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