同じ屋根の下
よし、こんな服装で大丈夫かな。
せっかくゆいさんの家に行くのだから、いつもより気を使わないと。
そう、おれは今日ゆいさんの家へ行くのだ。
おれとゆいさんの家は隣だから、予定の時間ぴったりに家を出た。
「ゆいさんいますか?」
インターホンを鳴らす。
家の中からドタドタ足音が聞こえてくる。
ゆいさんが慌てているのだろうか。
「香くん、おはよう。ちょっとだけ待ってて。」
ゆいさんはかなり慌てているみたいで息を切らしていた。
そこから2分ほど待つとドアがガチャりと開いた。
「香くんいらっしゃい。」
「おじゃまします。」
ゆいさんの家はかなり片付いていて、とても綺麗だ。
今日はゆいさんの親御さんは家にいないらしい。
「香くん、おいで」
ゆいさんに招かれ、ゆいさんの部屋へと行った。
ゆいさんの部屋は普通の女の子の部屋みたいだった。
ぬいぐるみがいくつかあり、勉強机もあった。
ゆいさんは今年からこの家に引っ越してきたらしく、まだ段ボールもあった。
そして、とても生活感がある部屋だ。
「香くん、見てこれかわいいでしょ。」
「めっちゃかわいいね。」
ゆいさんが見せてきたのは、どこかのマスコットキャラクターになっていそうな丸いぬいぐるみだ。
ゆいさんはたくさんキーホルダーなどもつけているなかでも丸いものが多かったように思える。
ガリガリガリガリ…
何事かと思うとゆいさんが爪をといでいた。
引っ越しで使った段ボールとは違う段ボールで爪を研いでいる。
「こうしてると落ち着くんだよね。いつまでもこうしていたいと思っちゃう。」
爪をといでるゆいさんはとても幸せそうだ。
突然ドアがガチャリと開き、元気な声が聞こえた。
「ただいま!」
誰かが帰ってきたみたいだ。
「香くん、ちょっと待ってて。」
玄関に行ったゆいさんの方を見てると、ゆいさんを小学生ような子ともう一人ゆいさんを中学生にしたような子がいた。
「おねえちゃん、ただいま。」
「とうま、こはるお帰り。お母さんとお父さんは?」
「保護者会があるって。」
「わかった。あとお姉ちゃんの部屋にいまお客さんが来てるからお姉ちゃんの部屋を空けちゃだめだよ。」
「はーい」
ゆいさんには弟と妹がいるみたいだ。
ゆいさんの弟が中学生くらい、妹が小学生くらいだ。
ゆいさんが部屋に戻ってきた。
「香くん、そういえばクッキー作ってみたんだけど食べってって。」
ゆいさんがクッキーを持ってきた。
ゆいさんが作ってきたクッキーは少し不格好だったがとても美味しいクッキーだった。
ゆいさんって料理とかするのかぁ。
「ゆいさ…」
突然ドアが開き、ゆいさんの妹がやってきた。
「お姉ちゃん、一緒にゲームしよ。お姉ちゃんが男の人連れてくるのも珍しいね。」
「そういうのじゃないから。」
俺の言葉は遮られ、聞こえていなかったらしい。
ゆいさんの顔は見えなかったが、耳が少し赤く染まっていた。
「こはる、開けちゃだめって言われたでしょ。」
ゆいさんの弟くんも来た。
「香くんも一緒にやろっか。」
おれもゆいさんにつられて、4人でゲームをすることになった。
ゆいさんはとても上手で長女の威厳を示していた。
ほのぼのした雰囲気だったがだんだんヒートアップしていった。
ゆいさんが全力でゲームするんだ。
妹や弟の面倒もちゃんと見ててお姉ちゃんらしいな。
ゆいさんが楽しそうにしているのを見るとおれまで幸せになれる気がする。
今はゆいさんと妹でゲームをしている。
「やったー。お姉ちゃんに勝ったー。」
妹に負けてゆいさんはとても悔しそうだ。
寝光さんの弟のとうまくんが話しかけてきた。
「ねえちゃん、学校でちゃんとできてる?楽しそう?」
「できていると思うよ。おれよりちゃんとできてる思うよ。それに友達もいて楽しそうだよ。どうしてそんなこと聞くの?」
「獣人のなかでも異質な方だから昔から無理ばかりしてると思うんだ。それでそれが重荷ってないかなって。」
「…」
俺がこんなことをしていてゆいさんの重荷になってたりするのかな。
ゆいさんとまたゲームをしていてもゲームに集中することはなかった。
ゲームを終え、ゆいさんの部屋に戻ると、ゆいさんは眠そうにしていた。
ゆいさんと窓の奥に見える夕焼けを見ておれは…




