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灰色の街で、光を拾う  作者: 秦はるま
第一章『ロウフォグ』
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第4話 不穏な影

 おいしい料理を初めて食べ次の日を迎えたミナトはいつも通り仕事をして帰ってくるのであったが、家に近づくとそこには見知らぬ人影が見えた。

 ルカでもいるのかと思ったが、近づいてみると背丈が高い二人組で全身灰色の服を着た素姓がよくわからない人たちであった。──この街の人たちも服装は黒か白のモノクロ映画のような人たちばかりで、素姓がよくわからないと言っても過言でないが、顔まで灰色をまとっている人なんてこの街にはいない。


 すると、向こうも家の方へと近づいてくる人に気付き、二人組がお互い顔を合わせ何やら言葉を交わしたのちに一人がこちらに近づいてきた。


「突然失礼する。この街を調査しているものなのだが、最近妙な人を見かけたと噂になっている。そこで怪しい人物でないか調べていたのだが、どうにもあの家に人がおらなくて困っていた。空き家だと隠れていても不自然ではないから見ておく必要があるが、持ち家だと勝手に入るのはマズイ。そんなわけであの家の持ち主を知っていたら教えてほしい」


 そう長たらしい経緯を一息で言って長身の男が指をさしたのは、ミナトの家であった。昨日は家にはルカがいたので、今日は出かけてまだ帰ってきていないのであろうと思考を巡らせ、ミナトは質問に対しての回答を構築する。


「あの家はボクの家です」


 街の調査をしている人が居るなんて初めて聞いたが、された質問には回答するべきと思ったので毅然とした態度で言った。


「ああ、あなたの家であったか。これはすまない、家を勝手に覗いてしまった。それでは我々はこれで失礼する」


 そう言って長身の男はもう一人に近づき、言葉を交わしたのちにこちらを向いてお辞儀をして帰っていった。

 最近はルカとやり取りが増えた影響かもう少し話をする必要があると考えていたが、あっさり帰ってしまったのであらかじめどのような回答をしておくか準備していたものが無駄になってしまった。

 それはそれとして、家の前に誰もいなくなったので中に入る。


 朝から昨日と何も変わってない状態の家を見て今日はまだ帰っていないのかと思い、ミナトは見渡してから荷物を置きテーブルの前に座った。

 ルカもいないのはすでにわかっていつつこんな行動をとってしまうのは矛盾があるようにも思えたが、今日からルカがここに住まなくなったというわけではないので、無意識でもこのような行動をとってしまうのは無理もないだろう。


 少ししてルカが帰ってきた。


「たっだいまーっ! おっと、今日はミナトが先だったかぁ。待たせちゃってごめんね! 今から用意するから──」


 そう言ってせわしなく動くルカを見ていたが、そういえば今日はいつもと違うことがあったと思い口を開く。


「帰ってきたら灰色の人たちが街を調査していたんだ。ルカは何か知っているかな」


 人を探していたということで知っている人が多い方が良いと判断して切り出した話題であったが、ルカはその話を聞いた途端手を止めて浮かない顔をしていた。


「──なるほど……、もう来ていたんだ──」


 小さな声であったのでちゃんと聞こえず、もう一度言ってくれと頼もうとしたところでルカは続けて言葉を紡いでいた。


「その人たちはきっとグレイウォッチだと思う。今日は街の人もちらほら見かけたけど、とても調査をするような住人じゃなさそうだったし。一応確認だけど全身が灰色の服で間違ってないよね?」


 そう尋ねられてミナトは「うん」と頷くことしかできなかったが、そんな反応でも情報としては足りていたのか、


「そっか──、早めに蹴りをつけないといけないかもね。ごめん、しばらく帰ってこれないかも」


 少し申し訳なさそうな顔をしてミナトに話しかけると、用意のできた夕食をテーブルの上に並べた。

 ルカから何か言葉が続くかと思ったが、特になかったのでこの空間は静寂に包まれていた。


「……じゃ、じゃあボクも一緒に行くよ」


 そんな若干の静寂を引き裂いたのはミナトの言葉であった。

 そんな言葉を想定していなかったのか、ルカは驚きを隠せない顔で、


「ぇ、なんで」


 と困惑したが、


「──あぁそっか、この前手伝うって言ってくれたもんね。でも別に、そんなこと気にしなくて良いんだよ。迷惑に巻き込まれる可能性100%の内容なんだし」


 そう言い関わらせないように言葉を並べていたが、ミナトはまた口を開いた、


「……やるといったからには最後までやり遂げないと。見過ごすことはできない」


 この街の人間はロボットのように自分の仕事をただただこなす。ミナトも例外ではない。与えられた仕事を最後まで放棄することはない、それだけだ。

 ただそんなことはつゆ知らず、ルカは良いように解釈をする。


「ミナトは良い男すぎるよぉ。こんなの誰でも頼っちゃうって。──わかった! 一緒についてきてくれるかな?」


 そう言ってルカはミナトの前に手を差し出す。差し出された手を見て無表情のまま動かないミナトを見てルカは慌てて、


「握手だよ、握手っ! ほら、手を出してっ!」


 言われたまま手を差し出すミナト。その手を『ガシッ』と掴むルカは続けてこう言った。


「助けてくれたときは手を差し出してくれたのに、握手の時は全然理解できないで動けなくなるのも不思議ね!」


 見たことのない顔をしながらそう言ったルカであったが、ふと顎に空いている手を当てて、


「そういえば、仕事はどうするの? やらないとお金ないんでしょ?」


「……明日やめるように言ってくるよ。すぐにでもお金が無くなるほどではないし」


 何事もないかのように放たれた言葉にルカは首を傾げた。


「仕事ってそんなに簡単にやめられるものだっけ?」


「……? うん、そういうものでしょ」


 またも何事もないかのように言われてしまい、「うーん」と唸り声を出してしまったルカ。

 ただそんな様子は束の間のことで、


「──ミナトが言うなら大丈夫かっ! 明日からよろしくね!」


 ルカも納得したことで結論が出たが、夕食の時間は途中であったのでシチューをたいらげて明日に備えるのであった。

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