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灰色の街で、光を拾う  作者: 秦はるま
第二章『テイミスト』
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第22話 先導者

 ルカとチオリ、そしてヤヒコの四人で絶賛行動中である。

 洞窟まではルカしか場所を知らないのでルカが先頭に立ち、チオリが隣に立つ。そしてヤヒコが後方を守る形だ。

 つまり、必然的にボクがみんなに守られるように真ん中で縮こまっているのだが……。


「ミナトってば、まるでお姫様みたいだねっ」


「気にしてるんだから言わないでよぉ……」


「いいんでなくて? この中で身長が低いのですから」


 新たに加わったチオリもヤヒコもボクより明らかなほど背丈が大きい。ボクの街は身長が低い人が多いのだろうか……、いや──カイもヤヒコほどではなかったが高かったな。

 ルカとはほとんど変わらないのだが、少しだけボクの方が小さいのである。

 プライドというほどでは無いが、モヤモヤとした気持ちが心の中に渦巻く。


「もっと大きくなりたいなぁ……」


「ミナトはそのままで良いんだよ! むしろそのままのミナトで居て!」


「んっ……」


 ルカが目を潤ませて縋るようにボクの方へと向いてくる。

 この想いに応えないのは男が廃ると思ったが、身長についての話は複雑で何もしゃべれずにいた。

 結局男らしくないところを見せてしまって萎縮してしまう。


「素晴らしい関係性ですわ。ですがあたくしとヤヒコの間柄には敵わないですけどね!」


「恐縮です」


 ヤヒコは周りを警戒しつつ透き通った声で返事をしてチオリの方へ一礼をする。


「二人は仲が良いんだねっ。どうやって出会ったの?」


「物心がついた時には隣にいた幼馴染というやつですわ」


「幼馴染か……」


 ついボクの幼馴染のことを思い出してしまう。豪快でそれでいて優しいところがあるカイ。

 でも今はどこにいるかもわからない幼馴染。


「どうしましたの?」


 チオリがボクの顔を覗き込んでいた。

 暗い顔をしてしまったようで、心配をかけてしまっていたらしい。


「大したことじゃないよ、幼馴染のことを考えていただけ」


「あら、あなたも幼馴染がいたのですね」


「むむっ、なんだか仲間はずれにされている気がするよぅ。私も幼馴染はいないけどかわいい妹がいるんだからねっ!」


 これ以上は話を広げたくないと思っていたのだが、まさかのルカが参戦してくるという混沌。

 それよりもルカって妹が居たのか。


「お姉さんだったんだね……」


 なぜか憐れんだ目になってしまうのはボクが悪いんじゃないと信じたい。


「なんか失礼なこと考えているでしょ! ひどいなぁーっ。ちゃんとお姉ちゃんしてたのにっ!」


 ぷいと顔を明後日の方向へと向けてしまう。

 これはしばらく拗ねていること間違いなしだろうな。


 話しているうちにもう林に着いていて洞窟がある場所まではあと少しといったところであった。


「この辺りだったんだけどなぁ。見間違えることもないはずだし」


「スゴイ自信だね……。昨日のはずなのにここを逃げてきたのかも覚えてないよ」


「あたくしは実際に見ていないのでわかりませんが、本当にここなのですか?」


 ボクとチオリは訝しげにルカを見るが、自信満々な顔をしてこちらを振り向くと、


「記憶力には自信があるんだよ! 心配いらないからね!」


 チオリはその言葉で納得した顔をしたのだが、ボクは信じることはできなかった。

 なんせその言葉に騙された前科があるのだ。


「帰り道わからなかったりしたのに……」


「ミナトなんか言ったでしょ! ふーんだ。何言っても信じてくれないんだよ」


 ボソッと言っただけなのに伝わってしまったようだ。


「最近ミナトが冷たい気がする──、あっ! あったよ、洞窟!」


 急に大きな声をあげたルカにびっくりしてボクはルカと同じ方向を見る。距離はあったが明らかに崖のところに穴が開いているところがある。


「まさか、本当にあったんだね」


「さすがルカですわ! 走りながらアレを見つけるなんて!」


 こうして洞窟の入口の近くに来たのだが、人がギリギリ入ることができそうな穴で誰かが開けたのではないかと思えるほど綺麗であった。


「ここからが本番だね……」


「レッツゴーだよ!」


「ですわ!」


 乗り気で入っていくルカとチオリに置いていかれないようにボクもゆっくりと足を踏み入れた。




「準備万端って本当だったんだね」


 洞窟に入ってすぐそんな言葉を漏らしてしまう。

 暗い中をどうやって進んでいくのかが気になったが、リュックの中からランプが出てきたのはさすがとしか言いようがない。


「何事にも対処してこそですからね。ヤヒコの手腕は確かなものですわ」


「いえ、チオリ様のお世話は当然のこと。それがいかなる場合でも準備は怠れないです」


 何かを撒きながら答えるヤヒコ。毎度見るたびにチオリのために行動をしているのが従者らしくて良いと思えてしまう。

 怪しいものを撒いているのではないかと疑ってもしまうが。


「空気の状態も良好、外とあまり変わらないほどですね」


「あら、穴だらけということかしら」


「誰かが使いやすくするように空気の循環を考慮して掘られたものかと思います」


 何やら話をしていたが話の内容は全然理解できなかった。洞窟の空気は何か危険な物でも含まれているのだろうか。


「それにしても思ったより広いねっ。入口は人の大きさくらいだったから良かったよ」


 ルカがこちらに話しかけてくれる。


「洞窟なんて初めて入ったけど、中は暗いものなんだね」


「そりゃ横にポコポコ穴なんて開いてないからねっ。山の中に入った感じで真っ暗だよ!」


 ランプの明かりはあるが、足元は満足に見えない暗い道を進む。

 初めは何があるかわからず恐いと感じたが、今は楽しく話しながら進めている。


「あら、分岐ですわね」


 先頭を歩いていたが分岐を見つけたチオリはいち早く立ち止まる。

 ちょうど左右対称に穴が並んでおり、どちらに進むべきかなんてわからない状態であった。


「どうするの? 別々に進んだ方がいいのかな?」


 このグループで二手に分かれるだろうか?

 それなら話しやすいルカとペアが良いが、ヤヒコと一緒だと何を話せばいいのかわからない。


「いえ、何が起こるかわからないのに分断するのはマズいですわね」


「じゃあどっちか決めないとかな? それなら私の最強の決め方で──」


「あちらから風の気配を感じます」


「むぅーっ」


 ルカの提案を遮るようにヤヒコが右側の穴を指差した。

 おそらくルカの方はろくでもない考えであろうから、ヤヒコを咎める気持ちは一切ない。


「だとすると、右側は外へ通じているということでよろしくて?」


「可能性としては高いです」


 ヤヒコは風なんて言っていたが、ボクは気付きもしなかった。

 何が起こるかわからない場所、視覚情報以外にもいろいろと張り巡らさないと一生外の景色を拝めなくなってしまうかもしれない。


「あたくしたちは洞窟の内部へと向けて進んでいるのですから左に行くのが良いですわね」


「左だね! よーし、どんどん進んでいっちゃうよ」


 どちらかわかればルカは恐いものなしという雰囲気で、ずんずん先へ進んでいってしまう。


「離れたら危ないよ……」


「あれっ、みんなまだ来てなかったの? 八面玲瓏な私の前には何者も足を止めることができないんだから!」


「……いつもああなのですか?」


「そうだね……」


 あきれながらもリードを離さないかのようにルカの後を急いで追いかけていく。

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