第五十一話 最後のぬくもり
俺は頭も冷えて自室に戻ってきていた
しかし
到底眠りにつけるような気分でもなかったため俺は電気をつけ、ベッドに腰掛けた
零「.....」
なんで...だろうな...
いつから俺達はすれ違っていたのだろう
小さい頃はずっと仲が良かった
いや...
仲が良かったというより
兄さんが俺の我儘を一方的に聞いてくれていただけなんだけどな
おもちゃが欲しい
お菓子が欲しい
アイスが欲しい
俺がそうごねると
兄さんはいつも呆れながらもなけなしのお小遣いをはたいていつも買ってくれていた
兄さんは他の人には絶対に何かを買うなんて事しなかった
でも、弟の俺にはいつも甘かった
小さい頃の俺はそれが当たり前だと思っていた
でも....
今になって初めて気づいた
兄さんは
強欲だ
七つの大罪の能力者はその能力を持っている以上その欲に少なからず影響される
強欲の罪を要している兄さんが他の人に物をあげるなんて本来ならば自分の心が許さないだろう
でも...
兄さんはいつも俺に与えてくれた
欲しい物も
愛情も
俺はその凄さを今更になって気づいた
あぁ...本当に...
零「大好きだよ...兄さん...」
その言葉は誰にも聞かれる事なくただ深夜の闇へと消えていく
俺達は家族だった
誰より身近で
何より大切だった
....
それでも
終わりは一瞬にしてやってきた
あれは
今と同じような真夏の夜の出来事だった
父「明日は零の誕生日だな」
母「お寿司とケーキ予約してあるからね」
零「ほんとっ!?」
司希「夕飯の前にケーキ食べて夕飯食べれないとか言うなよ」
零「そんな事しないよ!」
司希「それを去年やったのはどこのどいつだ?」
零「うぐっ...」
お茶の間にどっと笑い声が広がる
母「ほら、明日は誕生日パーティーの準備で忙しいんだから早く寝なさい」
零「はーい」
そう言って僕と兄さんは腰をあげ
ドアの前へと向かった
司希「母さん父さん、おやすみ」
父「あぁ、おやすみ」
母「おやすみなさい」
僕達はそんな言葉を受け
寝室に向かった
僕達は二人で一つの寝室を使っていた
僕は横になって目を瞑ったが...
....寝れない
時計に目をやると時刻はすでに11時を回っていて
僕は思わず兄さんに声をかけた
零「ねぇ...兄さん起きてる?」
少しの静寂の後
司希「....どうした?」
返事があった
零「楽しみで眠れない」
司希「子供か」
零「子供だもん!」
司希「ハハッそうだな」
兄さんは優しい笑みを浮かべながら僕の頭を優しく撫でてくれた
司希「明日はお前が欲しがってたゲーム機買ってやるからな」
零「ほんと!?」
司希「あぁ」
零「兄さん大好き!」
司希「はいはい」
司希「ほら、もう寝るぞ」
零「はーい」
そこで会話は終わった
しかし、僕はやっぱり眠りになんてつけなかった
明日は僕の誕生日
それはもちろん楽しみだ
だが...
それ以上に楽しみな事があった
明日は7歳の誕生日
能力者は7歳から15歳の間に能力が開花する
そう言われているが...
どうやら能力者の8割は7歳の誕生日に能力が開花するらしい
僕はそれが楽しみで仕方なかった
今までは呪いとして扱っていた勇者の剣
でも...
僕が思ってる以上にこの世界は平和だった
勇者の剣を顕現する事はあっても
僕は今日までそれを振る事なく生きる事ができた
僕は前世は前世
今世は今世として楽しもうと決めた
僕はもう十分今世に染まってしまったが
新しい力を授かる一つの節目
それが明日だった
フフッ...
零「楽しみだなぁ」
兄さんは寝ているらしく僕のその言葉に返事をしてくれる人は誰もいなかった
そうしているうちに僕も睡魔に襲われて...
そのまま眠りに落ちるのだった
司希「いつまで寝てんだよ、零」
司希「誕生日だぞ」
遠くからそんな声が聞こえ
零「.....ん」
僕は目を覚ました
だんだんと意識も覚醒してきて
零「!!」
司希「やっと起きたか」
兄さんは呆れながらも笑っていた
零「おはよっ!」
司希「おはよう」
司希「ほら、朝食食べに行くぞ」
零「はーい」
そうして僕達は一階に降りた
一階に降りたところ、テーブルの上には少し豪華な朝食が並んでいた
零「わぁ...!」
僕が目を輝かせていると
父「零、起きたか」
父「今日で7歳だな」
母「お誕生日おめでとう」
司希「おめでと」
零「みんな....」
零「ありがとう!!」
僕は思わず涙目になっていた
司希「朝食でこんなに感謝するなら夕食の時どうなるんだろうな」
零「もしかして...」
零「お返しとしてプレゼント没収!?」
司希「プレゼントの意味がなくなるだろ!」
また家族の間から笑いが生まれる
母「ほら、冷めないうちに食べましょ」
零「はーい」
家族で談笑しながら朝食をとり
やがて食べ終えると
司希「零、出かける準備しろ」
司希「ゲーム機買いに行くぞ」
零「!!」
零「うん!」
そして僕は準備をして
兄さんの後をついていくのだった
本当に幸せだった
こんな時間が一生続けばいいと思っていた
しかしこの世に永遠なんてない
いつかは全て崩れて消えていく
でも....
その終わりがあまりにも
あまりにも早すぎるものだった
第五十一話 終了




