第三十八話 勇者を辞めた日
魔王「....勇者との因縁もここで終わり、か」
我はその死体を見つめ踵を返した
魔王「この姿...どうやって隠したもんかな...」
魔王「次は傲慢...?」
我がそんな独り言をいいながら歩いていると
???「あ....あぁ....」
後ろからそんな泣き声が聞こえてきた
我はゆっくりと後ろを振り返るとそこには...
零「あぁ...全部気づいたよ...勇者」
俺は目尻からとめどなく溢れ出る涙を袖で拭った
魔王「お前...殺したはずだろ?」
魔王「なぜ生きてる?」
零「そりゃ能力開花できねーか...」
魔王「お前何無視してんだ?」
零「....あ?わりい、いたのか」
魔王「......」
零「なぁ...魔王」
零「一つ聞いていいか?」
魔王「....なんだ」
零「俺は勇者じゃないんだよな?」
魔王「事実だ」
魔王「我と死闘を繰り広げた勇者とお前は全然違う」
零「そうだな」
零「多分....事実だ」
魔王「.....?」
零「俺は思い上がっていたんだ」
零「勇者の力が使えるからって自分が勇者だとかなんだとか」
零「呪いの力だとかさ」
零「勇者と同じは嫌だとか言って一人称を僕に変えたり」
零「この力を呪いの力にしていたのは俺だった」
零「俺は勇者じゃない」
零「俺は勇者にはなれない」
零「でもさ」
俺はゆっくりと顔を上げ魔王を見た
涙の跡はまだ残っているだろう
でも....
それは弱さの証明じゃない
逆だ
もう...
弱かった自分にさよならを
零「だからなんなんだ?」
零「勇者じゃないからなんなんだ?」
零「勇者じゃなきゃお前倒しちゃいけないなんて決まりがあるのか?」
魔王「.......」
零「違うだろ」
零「俺は誰かに認められたかったんだ」
零「誰かに」
零「自分自身に」
零「お前の人生は意味があったって言われたかった」
零「でも....」
零「もういいんだ」
俺は胸に手を当て笑みを浮かべた
零「俺の胸の中には俺を認めてくれた男がいる」
零「だから、もういいんだ」
零「俺は勇者じゃなくていい!」
零「他の誰にも認めてもらえなくてもいい!」
零「だから....」
俺は地面に落ちていた剣へと手を伸ばした
零「俺は神谷零としてこの人生を生きる」
カシャン!
握った剣を俺は魔王に刺突させた
魔王「....分からない奴だな」
魔王も漆黒の剣で受け止める
魔王「俺は勇者じゃなくていいだと?」
魔王「勘違いするな」
魔王「ならないんじゃなくてなれないんだよ!」
魔王「お前は力も心も何もかも足りていない!」
魔王「だから...」
魔王「もう勇者の格を下げるな」
魔王「我と接戦した時の綺麗な記憶のまま消えてくれ」
そして目の前の魔王は俺を剣で押し切った
零「くっ!」
俺は体勢を崩しよろけた
魔王「死ね、神谷零」
零「あっ——」
魔王は斬撃を放っていた
その斬撃は俺の心臓部にあたり...
魔王「お前は自分を奮い立たせただけ」
魔王「強くなった訳じゃない」
魔王のそんな言葉と共に俺の意識はだんだんと遠のき
そして
そして
そして.....
魔王「......」
零「敵前逃亡か?魔王?」
魔王「!?」
魔王は振り返り酷く驚いた顔をしていた
魔王「な...ぜ....」
魔王「なぜ傷一つついていないんだ!!」
魔王「なんでお前は殺しても死なないんだ!!」
初めて本気で焦る魔王の顔を見た
零「なぁ....魔王」
魔王「.....?」
零「お前は七つの大罪を知っているか?」
魔王「...皮肉か?」
零「ハッそうかもな」
魔王「知らない訳ないだろ、ずっと演じてきたんだから」
零「そうだよな」
零「じゃあ...自己紹介するとしようか」
零「俺の能力は...」
零「自分が最強だと信じている間は絶対に死なない」
零「そりゃそうだよな、格下相手に殺される訳がないんだから」
零「そんな未来は存在しないから」
零「俺の能力はそんな能力」
魔王「まさか...お前は!?」
俺はニヤリと笑った
零「あぁ」
零「七つの大罪がここに一人」
零「傲慢の罪、神谷零だ」
魔王「くっ....」
魔王の顔が引き攣る
零「そりゃ何年経っても能力が発動できないよな」
零「発動条件が一度死ぬ事だなんて...」
零「これでもお前には感謝してるんだぞ?」
零「俺は他のプレデターに殺されてたら仕方ないと割り切っていた」
零「お前だから死にたくないと思えたんだ」
零「お前だから俺は自分が最強だと、負ける訳がないと自分に言い聞かせる事ができた」
零「お前が相手じゃなかったら俺はこの能力に気づかないまま生涯を終えていた」
零「ありがとな?魔王」
魔王「勇者お前っ!」
零「さて....」
俺は剣先を魔王に突きつけた
零「俺はお前を殺せば勝ち」
零「お前は俺に敗北の2文字を頭によぎらせたら勝ち」
零「先に限界が来るのは俺の心か」
零「お前の体か」
零「第二ラウンドと行こうじゃねーか!」
第三十八話 終了




