第三十六話 嘘つきは魔王のはじまり
魔王「いつから気づいていた?」
零「戦闘中から違和感は感じてた」
零「そうだな、僕が感じていた違和感は...」
零「既視感」
零「あの日戦った魔王と蓮さんの戦い方はよく似ていた」
零「そこでまず違和感を覚えた」
零「でも確信したのは....」
零「お前のあの最後の発言あってこそだな」
魔王「失言だったか...」
魔王「じゃあ逆に問おう」
魔王「お前は本当に...」
魔王「勇者なのか?」
魔王のその質問に僕はしばらく沈黙し
零「あぁ」
短くそう答えた
魔王「....なぜ生きてる?」
魔王「お前はあの日確実に私が殺した」
魔王「どうやってあの状況から助かった?」
零「お前目ついてないのかよ」
零「お前はあの日戦った勇者と僕が同じように見えるか?」
魔王は僕を数秒観察した後
魔王「少し若返ったか?」
零「ちげーよ」
零「いわゆる転生ってやつ」
零「僕はお前に殺された後死んで別の体に魂が移った」
零「まぁ....」
零「記憶と力も同じように引き継いだんだがな」
魔王「本当にそんな事が....」
零「質問に答えてやったんだ」
零「僕からの質問にも答えろ」
零「どういう芸当を使ってたんだ?」
魔王「........」
魔王「話してもいい、か」
魔王は肩の力を抜き話し始めた
魔王「お前が死んだ後、私は世界を恐怖に陥れた」
魔王「はずだった...」
魔王「お前が死んだ後に、能力というものがこの世界に産み落とされた」
魔王「そこで、政府の人間は能力者を何人も連れて魔王城へとやってきた」
魔王「我は勇者をも倒したこの力があれば勝てると思っていた」
魔王「だが...」
魔王「それは間違いだった」
魔王「我も人外だがあっちも人外レベルの力を得ていた」
魔王「我は瀕死の状態に追い込まれ、ギリギリの所で逃亡した」
魔王「だがもう人間の目の前に現れる事はできない」
魔王「我は一生人間から逃げる生活をするのかと思っていた」
魔王「そんな時...」
魔王「我に一つの力が宿ったのを感じた」
零「....まさか」
魔王「それは、能力だった」
零「憤怒の...能力?」
僕は本当に魔王が最強の能力を得たのかと思った
しかし...
魔王は首を横に振った
魔王「我に宿った能力は」
魔王「虚飾」
零「虚飾?」
魔王「虚飾の能力は、嘘でも周りが信じれば真となる能力」
魔王「我はこの身に能力が宿った時から、憤怒として自分を偽ってきた」
魔王「嘘もつき続ければ案外信じられるものでな」
魔王「我は憤怒の能力を手に入れた」
零「.....」
魔王「美月の能力はコピー能力だ」
零「?急になんだよ」
零「察してはいたが...」
魔王「個人戦の入れ替わり試験を覚えているか?」
零「あぁ、あのお前の能力を使おうとした....」
魔王「美月は最初能力が不発に終わった」
魔王「なぜなら我の能力は憤怒じゃないから」
魔王「美月は憤怒ではなく虚飾をコピーしたのだ」
零「虚飾が...成立した...」
僕はあの時の事を思い出していた
あの時、美月は憤怒の能力を扱えていなかった
だが....
観客は皆美月を憤怒だと噂し始めた
零「嘘が...真に...」
魔王「分かったか?これが我の能力だ」
零「....なるほどな」
零「もう蓮さんの姿には戻らないのか?」
魔王「....痛い所を突いてくる奴だな」
魔王は夜空を見上げ
一言呟いた
魔王「戻れないんだよ」
魔王「虚飾は嘘が真になる能力」
魔王「だから、誰か一人にでも嘘だとバレればそれは真ではない」
魔王「我はもう憤怒にはなれない」
零「....そうか」
零「なら」
零「前世の決着を着くようじゃねーか」
僕はそう言って地面に捨てられていた剣を拾い上げ
魔王に突き立てた
零「プレデター試験なんかどうでもいい」
零「これは神谷零vs黒埼蓮の戦いじゃない」
零「これは」
零「前世勇者と現魔王が時空を超えて決着をつける」
零「そんな戦いだ」
魔王「.....」
魔王は数秒僕を見つめた後
魔王「ハッハッハ!!」
あろう事か笑い始めた
零「....何がおかしい」
魔王「お前は何勘違いしてるんだ」
魔王「我はお前を勇者だなんて認めていない」
魔王「お前だって気づいてるだろ?」
魔王「今のお前は前世の勇者の力を半分にも引き出せていない」
魔王「いや半分どころか....」
魔王「15パーぐらいしか引き出せていないんじゃないか?」
零「.......」
魔王「お前はあの白い空間にいた時だけ前世の勇者の面影があった」
魔王「そこから考えるに...」
魔王「お前はあの白い空間でしか前世の力を引き出せないんじゃないか?」
零「そんなわけっ!!」
魔王「お前に勇者を名乗る資格などない」
魔王「前世の勇者なら...」
魔王「我の今の攻撃ぐらい簡単に回避した」
零「....どういう事だ?」
魔王「だから...」
魔王「勇者、お前もう死んでるぞ?」
その瞬間....
ザシュッ!
零「.....え?」
地面に目をやるとそこには致死量の血が地面に付着していた
血の発生源を見てみるとそこは
僕の腹部からだった
それに気づいた時にはもう遅く
零「あ....」
僕の意識は暗闇に落ちていくのだった
第三十六話 終了




