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第三十五話 世界で一番遠い再会

次に目を開けると....

そこは先程と同じ風景の森だった

一つだけ違う事があるとしたら...

目の前に肩を押さえうずくまる蓮さんがいる事だ

蓮「....何しやがった?」

零「....特に何もしてませんよ」

零「強いて言えば...」

零「願った...ですかね」

蓮「なんだよそれ...」

蓮「さっきとは口調も違うようだな」

蓮「さっきのやつとお前は同一人物か?」

零「えぇ、さっき戦ってたのは正真正銘僕ですよ」

零「100パーの力を使えるようになる代わりに自我を少し失うと言ったところですかね」

蓮「....なるほどなぁ」

蓮さんは空を見上げ...

蓮「残念だよ...」

蓮「あれがお前の本気なら....」

蓮「お前はここで死ぬしかないんだからな」

蓮さんは黒刀を地面に突き刺し立ち上がった

零「.....」

僕はそれに反応できるだけの気力も体力もなかった

蓮さんは一歩一歩と僕に近づいてきて...

蓮「恨むならこんな身分不相応な試験を受けた自分を恨めよ」

零「あぁ......」

僕はこの時死を悟った

人生で初めての経験だった

何があってもこの勇者の剣でなんとかしてきた

でも....

この状況は勇者の剣があろうともひっくり返らない

だから僕は....

カランカランッ!

蓮「....なんのつもりだ?」

自分が持つ勇者の剣を投げ捨てた

零「もう...勝ち筋が見えないんですよ」

零「僕は正直白空間さえ展開できれば勝てると信じて疑わなかった」

零「でも....」

零「無理でした」

零「最後は綺麗に死なせてください」

蓮「......」

蓮さんは静かにその剣を構えた

蓮「変わったな」

少し寂しそうにそう答えた

蓮「昔のお前は何があろうと諦めようとはしなかった」

蓮「今は敵を前にして武器を投げ捨てる、か」

零「....昔?」

零「僕達会った事ありましたっけ?」

蓮「いや...なんでもない」

蓮「もう、このクソみたいな試験を終わりにしよう」

蓮「プレデターは変わらない」

蓮「それが結果だ」

その瞬間蓮さんは地を蹴り僕との距離を一瞬にして詰めた

僕は目を瞑った

シュッ!

剣が振り上げられる

蓮「死ね...神谷零」

そして

そして

そして....

僕が次に目を開けると....

零「....?ここは?」

そこは真っ白な世界だった

まるで僕がいつも使っている白空間のような

零「でも今日の分の回数はもう終わった...」

僕がそんな事を考えていると...

???「俺が呼び出したんだよ」

背後からそんな声が聞こえてきた

ゆっくりと後ろを振り返ると...

勇者「よっ、会うのはDクラスの入れ替わり試験ぶりか?」

勇者と名乗った男がそこにはいた

零「...なんの用だよ」

勇者「おー怖い怖い」

勇者「自分にはもう少し優しく接した方がいいぞ?」

零「茶化すな」

零「ここは天国なのか?」

勇者「ハハッ!面白い事言うんだな!」

勇者「何もない真っ白な空間に一生いろなんて、そんなの天国じゃなくて地獄だろ」

勇者「安心しろよ、お前はまだ死んでない」

零「死んでない?」

零「ふざけるな!!あそこから助かる方法なんてある訳ないだろ!!」

勇者「だから言ってるでしょ」

勇者「〈まだ〉死んでないってさ」

零「まだ?」

勇者「言ってしまえばここは君の精神世界」

勇者「今ここにいる間は精神世界の時間が進むから現実世界の時間は進んでない」

勇者「現実世界は黒埼蓮とかいう奴が剣を振り上げてるとこ」

勇者「だからまあ...」

勇者「このまま君が何もできずに現実に戻ったら」

勇者「その時、君は本当の天国に行くだろうね」

勇者はそんな悍ましい事を淡々と言ってのけた

零「じゃあどうすれば助かるんだよ?」

零「ここに呼び出したって事は何か助かる方法があるから呼び出したんだろ?」

勇者「....ずばり」

勇者「君が助かる方法はね...」

勇者「俺も知らんっ!」

零「.....は?」

零「なんだよそれ!」

僕は思わず勇者に殴りかかっていた

しかし...

当たり前のように避けられ

僕は剣を突きつけられていた

勇者「勘違いすんなよ」

勇者「俺はお前に助かる方法を教えにきた訳じゃない」

勇者「ずっと感じてたんだろ?違和感」

勇者「その違和感の正体をお前に知って欲しいだけだ」

勇者「いや違うな...」

勇者「お前、本当はもう気づいてんだろ?」

零「!!!!」

勇者「ただ現実から目を背けてるだけ」

勇者「そんな訳ない、あり得ないと思いたいだけ」

勇者「違うか?」

零「.......」

勇者「....お前が認めないなら言ってやるよ」

勇者「あいつは——」

勇者「?」

僕は口元でバツを作り、勇者を黙らせた

零「分かったよ、勇者」

零「これは僕自身が気づかないといけない」

零「これは僕の問題、そうだろ?」

勇者はフッと微笑んだ

勇者「なんだ...分かってんじゃん」

勇者「ならやるべき事は分かるな?」

僕はコクリと頷いた

勇者「よし、ならもうこの世界は必要ないな」

その瞬間...

パリイン!

そんな音を立て世界は崩壊を始めた

僕は勇者に背中を押され

勇者「行ってこいよ、勇者!」

世界は暗転し、僕は現実世界に戻るのだった


現実世界に戻ると....

シュッ!

風をきる音が聞こえた

僕は現実世界に戻ってきたのだと瞬時に理解し

零「嘘」

一言、そう呟いた

そうただそれだけだ

それなのに...

蓮さんの剣を振る手は止まっていた

零「全部嘘だったんですよね」

蓮「.....何がだよ」

零「全部ですよ」

零「自分が憤怒の能力者である事だったりね」

蓮「な...何言ってんだよ!?」

零「もうその仮面取ったらどうですか?」

零「蓮さん」

零「いや....」

零「さっさと取れよ」

零「魔王」

蓮「.....」

僕がそう言った瞬間...

パリイン!と何かが砕けた

もう一度蓮さんに視線をやると

そこには....

蓮さんの姿なんてなく

あるのは

僕が前世本気で殺し合った相手

魔王がいるのだった


第三十五話 終了

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