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第二十九話 最後に信じられるもの

悠「......」

伊織「.......」

闘技場の中央

二人は向かい合っていた

学園長「実技授業、はじめ!」

その瞬間....

悠「っっ!!」

伊織さんがナイフで悠に斬りかかり

悠はスレスレのところでそれを回避していた

悠「....随分物騒ですね」

悠「迅さんは木の模擬刀を使ってましたが?」

伊織「....たとえ斬らなくても脅しにはなるでしょ?」

悠「.....完全に当てに来てるように見えたのは俺の勘違いですか?」

伊織「多分、ね」

悠「.....そうですか」

悠「じゃあ、次は俺から行かせていただきます」

悠は一瞬で伊織さんの眼前にまで迫り拳を放った

しかし....

拳が届く直前、その速度が急速に落ちた

まるでカタツムリのようなスピードで悠は拳を振るっていた

伊織さんはそんな悠の懐に簡単に入り込み腹部に一撃を放つ

悠は吹っ飛ばされ地面を何度か叩きつけられた

悠「がっ!」

伊織「あれ?」

悠に近づいた伊織さんは真っ先に疑問符の言葉を発していた

伊織「能力が...解除されてる?」

伊織「まぁ他にも試してみたかったしいいかな」

伊織「さっきの子には通用しなかったけど」

伊織「君はどうかな?」

その瞬間

男子生徒「息....が....くるじぃ...」

生徒が次々に息苦しさを訴え始めた

無論それは僕も同じ事で

零「はぁ....はぁ....はぁ....」

悠「.......」

伊織「酸素不足?明らかにさっきより動き鈍いよ?」

伊織さんの言う通り悠の動きは先程とは比べ物にならないぐらい鈍っていた

だが.....

悠「はぁ.....めんどくさい....」

悠がそう呟いた瞬間

零「......あっ」

息がしやすくなった

伊織「へぇ」

伊織「君の能力、私の能力と相性最悪みたい」

悠「......みたいですね」

悠「なら....」

悠「次はこっちの番です」

その瞬間、悠の手に光の粒子が集まり

それは顕現された

零「.......」

まったく.....

当たり前のように勇者の剣を扱うやつが何人もいて困る

悠「では.....」

その瞬間悠は地面を蹴り伊織さんとの距離を詰めようとした

伊織「.....今までの戦い見てなかったのかな?」

悠「....あっ」

悠は地面に膝をつきその場で倒れた

伊織さんは湊の時と同じように悠との距離を詰める

しかし....

伊織「っ!!」

悠は一瞬で立ち上がり伊織さんに向け一撃を放っていた

間髪入れずに二発、三発

男子生徒「おい...これって...」

女子生徒「プレデターを押してる?」

そう、悠が放つ連撃により伊織さんは防戦一方だった

Dクラスは悠を応援する声で溢れかえった

だが....

悠「くっ!」

悠が何発放とうが一撃もプレデターに当たる事はなかった

零「....そりゃそうだろ」

僕は小さくそう呟いた

よく考えればそれは当然の事なのだ

美月や悠が使っている剣が引き出している力が15パーの物なのか100パーの物なのかは分からない

ただ一つわかる事があるとしたら

あいつらはただ最強の武器を願ったにすぎない、という事

豚に真珠という言葉があるように

いくら武器が最強であろうが使っている人物が扱えなければそれはゴミと化する

それにずっと頼ってるようじゃ....

零「お前は絶対に勝てないぞ」


伊織「隙だらけ」

悠「あっ!」

伊織さんのナイフが悠の持つ剣を弾き飛ばした

キイイン!

そんな音を立て剣は空高く舞い上がり

そのまま闘技場の端に突き刺さった

Dクラスの歓声が止まる

伊織「いい剣だね」

伊織「でもさ....」

伊織「これ、使い慣れてないんでしょ?」

悠「......」

伊織「能力を使うのも悪くないと思う」

伊織「でも...」

伊織「それだけじゃ届かない」

伊織「能力はあくまで能力」

伊織「自分が最後に信じられるのは....」

伊織「自分の力、だよ」

そう言った瞬間

伊織さんは一気に悠との距離を詰め

シャキイン!

そのナイフを悠の首元にあてがった

悠「....あはは」

悠「これじゃ.....」

悠「めんどくさいだなんて、思えないじゃん」

学園長「....そこまで」

学園長「プレデター九条伊織の勝利とする」

悠は伊織さんからの拘束から解き放たれ

フラフラとこちら側に戻ってきた

学園長「それにしても.....」

学園長はニヤリと笑いながらDクラスを見渡し

学園長「誰も司希を選ばないんだな?」

.......

静寂

Dクラスの生徒が学園長から目を逸らす

司希「.........」

学園長「まぁ、この学園最強の男」

学園長「唯一のランクsssなんて言われたらやる気も失せるか」

学園長「次、行く者は誰だ」

零「.......る」

学園長「?何か言ったかい?」

零「やってやるって言ったんだよ」

学園長「ほう」

学園長「では、誰を選ぶ」

零「.....もう決まってる」

零「あんただよ」

零「人気ワースト1位の司希さん?」

学園長はひどく驚いた顔をし

やがて笑い出した

学園長「アハハッ!本当に君は面白い人材だ!」

学園長「では、始めるとしようじゃないか」

こうして今、兄弟対決が始まるのだった


第二十九話 終了


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