……そうだなぁ。 大体6割ぐらいかな
スタンピードは、条件が揃えば、幾度となく発生します。
アリンからの話が終わったと判断して立ち上がろうとすると、アリンから「待った」が掛かった。
「待って。 最後にこれを」
アリンが俺達の前に出したのは魔法誓約書だった。
「この件に関しての事よ」
俺は、魔法誓約書の内容を隅から隅まで一字一句を確認する。
勿論、ユリナ達も確認する。
「……特に問題無いな。 ユリナ達は?」
「問題無いわ」
「問題ありません」
「無いのじゃ!」
「問題無いわね」
「大丈夫だよ」
「大丈夫だわ」
「それなら、魔法誓約書に名前を書いて」
「ああ」
俺達は、魔法誓約書に名前を書いて、アリンに渡すと、アリンは確認をする。
「……記入漏れは無いわね」
アリンが、そう言うと魔法誓約書は一瞬で燃え尽き灰も残さず消えた。
これで、魔法誓約書との契約が受理され、俺達は契約を遵守する事を強制される事になった。
まあ、無関係の人達に話す気は無いがな。
「長く付き合わせて悪かったわね」
「気にするな」
「ありがとう。 また、縁があったらよろしくね」
「ああ。 縁があったらな」
こうして、普通の女性冒険者にとっては「良い話」を断わる事で終わった。
会議室を出た俺達は、ギルド内が葬式の様に静かになっているのに驚いた。
「何が有った?」
俺は受付嬢に聞いた。
「実は……」
受付嬢が話した内容は、かなり深刻だった。
どうやら、俺達が壊滅させたゴブリン共の集落が有った方角とは都市を挟んで反対側から、此方に向かってモンスターの大群が進行中らしい。
「……スタンピードか」
「はい。 しかも、進行上に存在していた村や町が音信不通になっている事から、壊滅され現在も増加していると予測しています。
しかも、遥か後方に大型モンスターの存在が確認されました。
残念ながら、あまりに後方な為に種類までは特定出来なかったみたいですが」
「……そうか。 防衛は可能か?」
「可能だと思われますが、想定される被害は甚大です」
それで、ギルド内が葬式の様に暗く静かになっていた訳か。
「スタンピードの到着予想日は?」
「……3日後だと思われます」
「分かった」
俺達は、冒険者ギルドを後にして、近くの甘味処に入り個室を取った。
「それでどうするの?」
注文したドリンクやお菓子等がテーブルの上に置かれて、ユリナが聞いてきた。
「勿論、スタンピードは潰す」
「それは分かっているわ。 何処まで潰すの?」
「……そうだなぁ。 大体6割ぐらいかな」
「方法は?」
「とりあえず、雷属性の魔法は無しだな。
今回も雷属性の魔法だと、俺が放ったってバレる可能性が高いしな」
「そうなると……」
因みに、会話にはユリナしか参加していない。
理由は、リンとランが奴隷で、ソフィア達が従魔だからだ。
それと、リンが参加しないから、ランも静かにしている。
意外と言うと失礼だが、ランは空気を読む賢い子なのだ。
それに、ソフィア達は敢えて参加していないとも言える。
ソフィア達は、ユリナ達に対しては完全に「お姉さん」ポジだからで、ユリナの成長を願い静かにしている訳だ。
「氷属性の魔法だな」
「……そうね。 氷属性の魔法なら、討伐後の素材がダメになる事も、それ程は無いだろうしね」
「リンやランに、ソフィア達はどう思う?」
「ライカ様。 異論はございません」
「我が主。 賛成なのじゃ!」
「賛成よ」
「私も賛成だよ」
「同じく賛成よ」
「……決まりだな。 後、スタンピードの群れに大型モンスターが確認されたらしいが、基本的にはユリナ達に討伐して貰おうと思っている」
「任せて!」
「ライカ様、お任せください」
「任せるのじゃ!」
こうして話し合いは終わり、俺達は翌日からは、軽く身体を動かしながら宿屋でゆっくりと過ごし、3日後の朝を迎えた。
冒険者ギルドでは……
「冒険者共、覚悟は出来ているな!」
「「「「「「「「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」」」」」」」」
「最終確認が済み、間違いなくスタンピードは、此方に向かっている。
数も、少なくとも1万は超えている」
「「「「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」」」」
「スタンピードからの防衛こそが、自由な冒険者が背負う唯一ともいえる公的な義務だ。
もう一度聞く。 覚悟は出来ているな!」
「「「「「「「「「「「「「「「おぉー!!!」」」」」」」」」」」」」」」
「良し! それと、領主様から充分な軍資金を預かっている。
勿論、戦勝会の酒代もな。
生きて帰って、動けなくなるまで呑むぞ!」
「「「「「「「「「「「「「「「おぉー!!!」」」」」」」」」」」」」」」
因みに、戦略的な作戦は存在する。
冒険者ギルドに対して、優等生な冒険者達が中心になって防衛ラインの中央を担当する。
更に、魔法や弓矢が得意な者は、防衛ラインの後ろに作った高台で、近接戦闘だと冒険者側が不利になるモンスターや指揮官的なモンスターが居たら、それを狩る事が仕事だ。
そして、冒険者の中でも「我」が強い者達は、防衛ラインの左右の端で待機している。
……俺達も、左側で待機している。
俺達に与えられた指示は「好きなだけ暴れて生きて帰って来い!」だった。
そして、スタンピードの先頭が地平線から見えると、都市の「時」を告げる大鐘が厳かに鳴り響いた。
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