【17話】大切な人
【17話】
里見君と一緒に帰る途中には勉強は最近どうなのとか、久々に普通に話せてとても楽しかった。今日もまた話せるかなって期待しながら学校に向かった。
教室を開けて、無意識にも里見君の席を見てもう来ているか探してしまう。
まだ来ていない。そう里見君はいつも遅め、なぜなら朝が弱いから。あいつはゆとり教育が生んだゆとりモンスターみたいなやつだから、遅刻ぎりぎりに来る。やだあたしこんな里見君の解説できるなんて。と少し私はいつもより機嫌が良い。
「おはよ紗英。」
「おーーーう!ってなんか久々に見たぞ?あんたのその生き生きとした顔」
紗英には何でもお見通し。今日みたいな日はいっそう勉強にやる気が出てしまう。黙々といつも通り予習・復習をしていると、でっかい神谷の声が聞こえてくる。
あいつは馬鹿か。でっけぇ声で騒ぎやがって。でもまあ今の私にはゆとりが…。
ふと教室の扉を見ると里見君と来ている。しかも私のノートを見ながら。
「見やすいね。やっぱり。」
「だろ?俺のお気に入りのノート。参考書よりわかりやすいんだぜ?」
「へーぇ。あたしにもコピーさせてよ!」
「いいよ。」
そして里見君と目が合う。
「あ、立川。これありがと。全部コピーさせてもらったわ。」
「あぁうん。」
私は思わず目をそらしてしまった。
「それと今日の居残り勉強なんだけど、神谷もいるから。」
「へ?」
わたしは驚いて里見君をみる。
昨日帰り道
「こんなノート貸してもらってさらなるお願いしてもいい?」
私の家の前でノートに感動しながら里見君は図々しくお願いしようとしてくる。
「内容に寄るけど。。。」
「明日一緒に放課後勉強しない?」
「え?二人で?」
「そう。立川にも予定っつうもんがあると思うから無理なら良いんだけど。。。」
久々にまともに話せて、なおかつ二人で居残り勉強に誘われた。予想もしていなかった事で私は呆然としてしまった。
「おーーーい?立川?」
「え、ああ、テスト近いしね!集中してやろう!!」
「じゃ、また明日!」
いやいやいや。昨日二人って言ったじゃんか。え、なんで?なんで神谷を誘うの?てかそんな神谷とやりたいのなら二人でやれよとか色んな不満が沸いてくる。でもそんな不満はやっぱり言えず。
「あぁ。良かった。私用事できちゃって、断ろうと思ってたの。でも神谷さんがいるなら良かった。悪いけど二人で勉強してもらっていい?」
里見君は少し間を置いてから、心なしか低めのトーンで
「いや、立川?やろって。テスト近いじゃん!」
私はあえて無視を貫いた。
「ほれ、出席とるから座れ~。おい、もたもたすんな里見。」
「はぁ~い。」
「やる気なさそうな返事しやがって。そもそもお前の登校時間なんでそんなにぎりぎりなんだよ。そ~ゆ~とこだかんな?」
何事もなくまた1日が始まる。
もう里見君の事考えるのやめよう。私の生活に支障が出る。私は前みたいに、まじめに勉強だけしてればいいの。いらないのよ勉強に色恋沙汰なんて。
そう、私はもう里見君の事でいちいち喜んだり悲しんだり悩んだりする事をやめた。つまりこの恋愛はあきらめたと言うこと。
あきらめるにいたるこの一連の流れをとりあえず紗英に話した。
「はー。。神谷の存在はでかいなぁ~。まあ優梨奈がそうしたいならあたしはそれでいいと思う。」
「え?」
「なんかつらそう。まあ恋につらくないことなんてないけど。」
「ううん。もーいいの。あたし勉強頑張る。そーする。」
「あんた無理してない?」
「無理?あたしが?前に戻るだけじゃん。別になんとも思って無いよ。」
「そっかー。まぁ何でも悩みは聞くから。」
「ありがとう。」
いつもよりやたら疲労感に包まれながら帰宅しいつもの大好きなバラエティーの録画を見る。
それでもやっぱり頭の片隅には悲しさがある。
かれこれ2時間ぐらい見たところで、そろそろ勉強を始めようと携帯を見ると星柄君からの着信が。
私の側にいるじゃん。笑顔にしようとしてくれる人。優しい人。裏切らない人。
わたし大切なこと見落とそうとしていた。
「電話しなきゃ。」
そう返事をしなきゃ。私は何もかも里見君でいっぱいだったけど、星柄君がいる。
すぐに電話を折り返した。電話のコールごとに緊張は増していく。
「出ますように出ますように」
『ガチャ』
「ほ、星柄君?」
「立川さん」
「話があるの。」
「俺もあるんだ」
「ごめん。私。」
「そう、だから俺も…」
「私、星柄君と側にいたい。そして一緒に笑っていたい。遅いかもしれないけど、私今気付いたの。」
「え…。てっきり俺は無理かもしれないと思って、立川さんに断りの電話しようと考えていたんだ」
「ごめんね。長く待たせちゃって。」
「全然。ありがとう。」
そして私は完全に未練を断ち切り、星柄君と付き合うことになった。




