それは学校での出来事
ファ、ファンタジー勢に負けるな!(震え声)
ガヤガヤ、と朝の教室は騒がしい。
妹と途中で分かれた後、俺は真っ直ぐ学校へ向かった。この学校は『航空戦闘員育成学校』という名前で、名前の通りビジターに対抗するPUの操縦者を育成する学校だ。卒業すれば即刻軍に配属される。
一応普通科の学校みたいに授業だってあるが、他と比べたら10のうち2しか学ばない。一週間のうち、三日ユニット操縦訓練とユニットの知識向上のための授業、二日は午前中普通に授業で午後から訓練、そんなカリキュラムになっている。
以前、そんなんで人としての道徳や一般教養が身に付くのかと、議論されたことがあったようだ。長い間続いたそうだが結局『そんなこと言ってる間に殺されたらどうするんだ』の一言で議論は終了。国からもGOサインが出、試行錯誤しながら今のカリキュラムに落ち着いたらしい。
確かに人間同士でワーワーやってる間に横からビジターに攻撃されたらたまったもんじゃないしな。
そして今。
俺は自分の席にきちんと着席し、机の上に両腕をクロスさせ、額を乗せ、周囲の雑音と視界を断ち、一人妄想の世界に入り浸っている。
つまり、寝た振りをしているのだ。
別に友達がいないとか、話しかけるだけの勇気が無いとか、そんなんじゃない。こうしているのには二つ理由がある。
「おい、あいつまた学校来てすぐ寝てるぞ」
「お、ほんとだ。夜遅くまで何やってんだ~?」
「どうせエロ動画でもみてたんじゃねえの?」
根も葉もない事を大声で言いながらギャハハ、と笑うクラスメイト。それにつられて周りの数人が笑い出す。周りにウケたことでさらにヒートアップする暴言。
ほんの数十秒の出来事だがなぜ俺が寝た振りをしているのかがわかったと思う。これが一つ目の理由、イジメだ。キッカケはこの学校ではよくあるモノだった。
それはここに入学して初めての、PU訓練機を使った飛行訓練だった。学生のためのPU、ということで開発者と軍のPU操縦者が意見を出し合って作られた訓練機、日ノ丸 零式。この機体は何の知識もない人間が『最低』でも浮くことは出来るように作られたユニットで、浮くことが出来なかった者は絶対に居ない、と言われるほどだった。
しかし、俺はその『最低』すら出来なかった。みんな簡単に浮かせていたし、訓練前の授業でも操縦の仕方などはしっかり頭にたたき込んだつもりだった。
最初はみんな機体の故障だと思った。俺もそうだった。だが、俺の次のやつらがどんどん浮かせていくのを見て機体の故障ではない、と確信してしまった。
さて原因はこれでわかったと思うがこれがどうやってイジメに発展したのか、それは・・・・・・。
「みんな、おはよう!」
ガラッ、と元気良くドアを開け、これまた元気良く挨拶した男子生徒。彼が教室に入ってくることによって先ほどまであった、俺への悪意ある陰口や視線が嘘のように消える。そしてクラスメイト全員が満面の笑みを浮かべ次々に挨拶していく。
元気ある男子生徒は挨拶を返し俺の隣の席に座りこちらを見る。
「やあ狩人、おはよっ」
俺は渋々寝た振りを止め顔を上げ、おう、と返事をする。
「また朝から寝てたのかい?今日はこんなにいい天気だというのに」
そう言いながら笑顔になる。この男子生徒の名前は片崎 葵という。イケメンではなく可愛い感じの美少年。髪も肩くらいまであり、その綺麗で男にしては大きめな瞳が、こちらを見つめている。きっとこいつは女装したら絶対男とはわからないだろうな、などと思っているとふいに、悪寒が走る。
「どうしたんだい、狩人?」
「い、いやなんでもない」
振り向かなくてもわかる。葵と話をするとこんな感じにクラスの連中に睨まれる。
これが俺が寝た振りをしていた理由その2だ。
葵はその容姿もさることながら、性格まで良い。男女分け隔て無く話ができるし、話していると心が落ち着いていくというか、安心するというか。とにかくどんな奴とも仲良くなれる。良いことずくめだ。
ではなぜ俺と葵が話をするだけで、イジメられるのか。
それは、葵は入学してからPU操縦の天才、と呼ばれていてなおかつ、葵と俺は幼なじみだからだ。
ここからは俺の想像なのだが、簡単に説明するとこうだ。
葵、天才、容姿端麗(男だが)、性格良い、みんな仲良くなりたい。俺、最低すらできない奴、葵と幼なじみ、容姿悪い、髪はボサボサ(これは多分関係ない)。俺に関してさらに言えば、落ちこぼれも付いてくる。
それをまわりはどうみるか。邪魔、落ちこぼれ、葵と仲良くなりたいのに俺が隣にいる、邪魔、気持ち悪い。
俺が金魚の糞にみるんだろう。
俺が、上流貴族にまとわりつく三下貴族みたいな感じに見えるんだろう。
排除したい。だが隣には葵が居る。なら葵がいないときに俺を攻撃すれば、自分から離れていくだろう。
こんな感じだとおれは思っている。
あとなぜおれと葵が幼なじみなのかはかんたんだ。ただのお隣さんだからだ。
「そういえば狩人、今日はPU航空団の実地見学の日だよね。楽しみだな~」
PU航空団。これは正式名称ではない。正しくは自衛軍人型戦闘機航空部隊という。こんな長ったらしい名前面倒くさいから公式の場以外ではみんなそれぞれの言い方をする。
「ああ、そうだな」
正直言って俺は楽しみじゃない。見学に行くところは現在確認されている最前線より一番離れた場所だが、前線なんてあってないに等しい。
ビジターはこの地球上のどこかに現れ、撃墜されなければ出現したときと同様にフッ、と消えてしまう。そう、地球上の『どこか』に現れるのだ。現在は地中海、アラビア海、フィリピン海、そしてアメリカ合衆国上空に出現することが多い、ということがわかっている。
日本の前線はフィリピン海上空だ。そう考えれば前線は遠いのだが。
「僕は早く、訓練機じゃないPUに乗りたいなぁ!」
胸の前で手を会わせて目をキラキラするのをやめろ。あまりに似合いすぎて女子と少しの男子が鼻を押さえて上を向いてるぞ。というか男子、おまえはおわったな、いろいろと。
「さー鼻血でてる奴はそのままくたばってていいから他の奴は席に着けーHRはじめっぞー」
そこそこカオスになってた教室に、生徒間で美女が野獣、で通っている鬼瓦 千代先生が入ってくる。
「今日は自衛軍の航空団のところへ一日見学となる。くれぐれも粗相のないように。」
以上だ、校門前にバスがあるからついた奴順ですわってけー、と即座にHRを切り上げた鬼瓦先生。俺たちは先生に続くように教室を出た。
ある雑誌のとある項目
ではPUの生みの親である羽柴博士に、PUを開発するまでの経緯などをインタビューしたいと思います。今日はよろしくお願いします。
「よろしく」
じゃあ最初は、PUを思いつくまでの経緯をお尋ねします。
「そうですね、最初は友達と遊び半分で作った、ハングライダーにエンジンつけてみた、ってやつですね」
エンジンですか!?
「ええ。案外早かったですよ。」
ではそこからどうやっていまのPUに?
「ええっと、そのころ丁度全身鉄板で覆われた空飛ぶロボットの映画がやってまして、そこで、『もしかしたらアレロボットに出来んじゃね?』ってなりまして。」
なるほど、そしてなんやかんやあって今のPUの形になったと・・・。
「スゴい端折りましたね(笑)」
時間限られてますしね。では次ですが・・・・・・




