表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/145

第99話 アークデーモン討伐

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!


第一覚醒を閉じた直後、不完全アークデーモンの右肩で、止まりかけた再生が再び動き出した。


同じ夜。あれから、まだ数呼吸しか経っていない。


毛布の上で息を吸うたび、左腕が焼けた鉄のように痛む。黒い紋章は治療布の奥で肩の手前まで広がったまま。黒銀色の封魔具も、二重固定も外れてはいない。


それでも、暗赤色の魔力は容赦なく外殻へ戻っていく。


砕けた右肩が盛り上がり、不完全な脚へ肉が絡み、胸郭中央の焼けた亀裂が閉じ始める。


「銀黒色の線を確認!」


成人記録官の声が飛んだ。


薄くなった再生魔力の下から、一本の線が浮かび上がっていた。


本物の心臓遺物から五つの偽核を巡り、仮初めの身体へ戻る銀黒色の循環線。四本の召喚杭へ続いていた術式線とも、ローデン評議官が作った仮接続とも違う。


新しく生まれたものではない。


《魔骸仮生》で身体が組まれた時から、再生の流れに隠れていた最後の術式線だ。


「偽核から心臓へ魔力が戻っています」


セレネ先生が測定盤を見た。


「線を断てば循環は止められます。ただし、心臓から新しく放出される魔力までは止まりません」


「ならば、両方を同時に止める」


学院長は第二防衛区画の制御盤から離れずに命じた。


「成人警備隊は巨体を片膝のまま固定。保守班は攻撃路を再構築。生徒は各担当を成人指揮下で実行せよ。失敗時は即時退避だ」


成人警備員と王都残留警備隊が動いた。


強弩が右肩と脚へ突き立つ。物理拘束鎖班が左右から鎖を引き、不完全アークデーモンの重心を南へ傾けた。


巨大な右腕が振り下ろされる。


盾が三枚、同時に鳴った。


先頭の成人警備員たちが二歩押し戻され、後列が肩を押し当てる。打撲を受けた一人はすぐ交代し、盾列は崩れなかった。


「根束を南へ! その土嚢は右側へ寄せて!」


ティアナの声が震えながら通った。


彼女は魔法を使っていない。


残っていた根束を、成人保守職員と十回生たちが運ぶ。土嚢を並べ、物理楔を床の亀裂へ打ち込み、固定帯で根束を留める。


「幅は一人分だけ残して。中央へ根を出さないで。アルトの足に触れたら《閃駆》を邪魔するわ」


床へ固定された二列の根が、僕から南へ伸びる直線の左右を示した。


不完全アークデーモンが鎖へ逆らうたび、成人保守職員が楔の角度を直す。ティアナは床の亀裂と支持線を見比べ、その位置を一つずつ指示した。


「直線、固定完了」


言い終えた彼女の膝が大きく震えた。


成人治療職員がすぐ背後から支える。ティアナは退かされながらも、最後まで一本道から目を離さなかった。


その間に、フィアが盾列の隙間へ入った。


右手首の固定具へ細剣の柄が結ばれている。握力は戻っていない。魔法も雷も使わず、成人警備員二人の盾に守られて胸郭の手前まで進む。


銀黒色の線は、外殻表面を心臓へ向かって震えていた。


フィアは一度だけ、その揺れを見た。


大きく振りかぶらない。


線の根元へ刃を当て、腰ごと半歩引く。


硬い糸が切れるような音がした。


五つの偽核の脈動が、初めてずれた。


「最後の線は断った」


力の抜けた細剣を成人警備員が受け取る。フィアは盾の内側へ戻され、右腕を胸元へ固定された。


循環は止まった。


だが、本物の心臓遺物はまだ脈打っている。


「位置を修正します」


セルフィナが以前の探索で作った物理図面を床へ広げた。


精霊は呼ばない。休息中の健康な風精霊も、隔離治療中の風精霊も動かさない。


成人記録官の脈動遅延記録と、不完全アークデーモンの現在の姿勢を照合する。


「片膝をついたことで、本物は以前の位置から下へ一手幅。左へ指二本分です」


彼女が照準札を動かした。


喉元、左肩、右脇腹、下腹部、背骨側。五つの偽核ではない。


胸郭中央の深部。


「伝達遅延も一致します」


成人記録官が答え、セレネ先生も頷いた。


「銀色の封印帯に細い亀裂があります。召喚と再構成の負荷で生じた損傷でしょう。再生中なら閉じますが、止まっている間なら届く可能性があります」


セルフィナは標識棒を傾けた。


「本物の心臓は、下へ一手幅、左へ指二本分。狙うのは封印帯の亀裂です」


「了解した!」


レグルスが銀槍を握った。


成人保守職員が、焼けた外殻の亀裂へ二基の物理開閉具を差し込む。


レグルスは下側へ銀槍の穂先を入れた。傷ついた掌から血がにじみ、肩と足首が震える。それでも一人で持ち上げようとはせず、三人の成人保守職員と呼吸を合わせて柄を押し下げた。


「下側は開いている!」


反対側では、ユリウスが上側の開閉具を固定していた。


魔法を失った長剣は鞘へ収めたまま。熱傷を負った掌で留め具を押さえ、成人保守職員へ再生の動きを伝える。


「上側も維持する。閉鎖まで長くない!」


亀裂が上下へ開いた。


奥で銀色の封印帯が見えた。


その中心に、乾いた暗赤色の心臓遺物がある。


僕は毛布から身体を起こした。


右脚が痺れ、視界が揺れる。バルト先生が肩を押さえ、脈を取った。


「第一覚醒は一度だけだ。三呼吸を越えるな。対象が広がる前に閉じろ」


「はい」


「使用後の魔力がどう残るかは分からない。異変は即座に申告しろ」


学院長、セレネ先生、成人警備隊長が、直線と退路と安全距離を確認する。


誰も僕へ命じなかった。


最後に選ぶのは僕だ。


僕は封魔具の留め具が二つとも固定されていることを見た。


「外へ放出された再生魔力だけを喰います」


第一覚醒を開く。


一呼吸目。


左腕の熱が肩の手前まで駆け上がった。


ティアナが固定した直線の先で、フィアに断たれた循環線が光を失う。五つの偽核から本物の心臓へ戻ろうとした流れが途切れた。


僕は、心臓そのものを選ばない。


封印帯も、偽核も、人も、精霊も、結界も喰わない。


選ぶのは、銀色の封印帯より外へ出た再生魔力だけ。


二呼吸目。


暗赤色の流れが契約境界へ消えた。


外殻へ向かう魔力。


右肩へ向かう魔力。


脚へ向かう魔力。


放出された分だけを、一つの対象として喰らう。


三呼吸目。


「再生流量、低下!」


成人記録官が叫ぶ。


測定盤の針が落ちていく。


まだ心臓内部には膨大な魔力がある。僕が真に無限の何かを喰い尽くしたわけではない。


フィアが帰還線を断ち、僕が外へ出た供給を喰った。


だから、身体へ届く流れだけが零になった。


「再生流量、零!」


僕は《暴食》を閉じた。


左腕の痛みが爆ぜる。捕食した魔力の大半は、契約境界の奥へ消えた。ベルゼバスがどれほど取り込んだのかも分からない。


けれど、再生構造を失ったごく小さな欠片だけが、無属性の通常魔力となって僕の魔力器官へ戻ってきた。


僕の小さな容量を満たすだけ。


第一階位魔法、一回分。


それ以上は入らない。


「再生停止を確認!」


再び右肩へ強弩が刺さった。


傷は閉じなかった。


成人盾列が左右を固め、僕を十歩以上前へ護送する。移動盾の間を歩くたび、右脚の痺れが強くなった。


不完全アークデーモンまで残り六歩。


成人警備員二人が僕の腰へ物理安全帯を結ぶ。その先を後方の四人が握った。


左腕は身体の近くへ固定する。


右手だけで学院剣を構えた。


「《閃駆》は一度しか使えません」


「六歩先までの安全は確保した」


成人警備隊長が答えた。


短い声が、左右と後方から届く。


「直線は固定したわ」


ティアナ。


「最後の線は断った」


フィア。


「下へ一手幅、左へ指二本分です」


セルフィナ。


「下側は開いている!」


レグルス。


「上側も維持する。残りは僅かだ!」


ユリウス。


バルト先生が安全帯を確かめた。


「一度だけだ。戻れなければ、こちらで引く」


僕は銀色の封印帯の亀裂へ剣先を合わせた。


「届かせます」


不完全アークデーモンが右腕を振り上げる。


成人警備隊長の腕が下がった。


「開始!」


「集え、散るな。形なき力よ、我が一点に重みを結べ――第一階位・基礎魔法《衝圧》」


圧力を剣先の一点へ結ぶ。


右脚を後ろへ引いた。


呼吸を一つ。


重心を前へ落とす。


《閃駆》。


一歩目で床を蹴る。


二歩目で腰と肩を直線へ揃える。


三歩目、右脚の痺れが痛みへ変わる。


不完全アークデーモンの爪が迫り、成人盾列が四枚の盾で受け止めた。


四歩目。


レグルスの銀槍が外殻下側を支えている。


五歩目。


ユリウスと成人保守職員が上側の開閉具を押さえる。


六歩目。


セルフィナの照準札と、銀色の亀裂が重なった。


剣先が亀裂へ届く。


《閃駆》の運動量と、《衝圧》の一点を重ねた。


銀色の封印帯が、甲高い音とともに割れた。


その奥にある乾いた暗赤色の心臓遺物へ剣先が食い込む。


圧力が一点から内側へ走った。


黒褐色の亀裂が心臓遺物を横断する。


次の瞬間、遺物は二つに破断した。


残留魔力が衝撃波となって弾けた。


成人盾列が踏み止まり、中央分節結界が軋む。ティアナの根束が床を押さえ、物理遮断板が飛散する石片を受けた。


僕の右脚から力が消えた。


腰の安全帯が張り、成人警備員たちが一斉に引く。


僕の身体は一本道の外へ回収された。


「全員後退!」


レグルスが銀槍を抜き、ユリウスが開閉具から手を離す。二人も成人警備員に支えられて盾列の内側へ戻った。


不完全アークデーモンの胸郭で、六つの脈動が乱れた。


本物の心臓は、もう打たない。


五つの偽核が代わりになろうとすることもなかった。


喉元の赤い光が消える。


左肩、右脇腹、下腹部、背骨側。


順番に同期を失い、凝縮していた再生魔力へほどけていく。


仮初めの外殻が崩れた。


次に筋肉が形を失い、左右非対称の骨格が内側へ折れた。


不完全アークデーモンは一言も発さない。


五百年前の魂も、記憶も、人格も現れない。


心臓遺物を型に作られた四メートルの災厄は、学院中央南側へ沈み、動きを止めた。


成人記録官が三台の測定具を並べた。


「心臓反応、消失」


「再生流量、零のまま」


「偽核反応、全て消失!」


セレネ先生が物理記録を確認し、学院長へ頷いた。


学院長は崩れた巨体と、防衛線に残る全員を見渡した。


「確認した。不完全アークデーモンは討伐された!」


歓声より先に、次の命令が飛んだ。


「残存する星冠教団侵攻部隊を制圧せよ!」


学院警備員と王都残留警備隊が南へ進む。


大型地下門と側面通路は成人警備隊が封鎖した。退こうとした信徒は盾列に阻まれ、武器を捨てた者から拘束される。抵抗した者も、成人警備員の制圧具によって非致命的に倒された。


四本の召喚杭、再接続針、封印破壊杭、短剣、盾。


全てが成人封印官と成人記録官の手で証拠札を付けられた。


学院へ侵入した星冠教団の部隊は、指揮も召喚手段も退路も失い、軍事的に壊滅した。


けれど、それで星冠教団そのものが消えたわけではない。


「ここへ来た一部隊を退けただけです」


セレネ先生が静かに告げた。


「指導者も、本拠地も、全体の規模も分かっていません」


王国各地では今も本物の危機が続き、七大魔法騎士と主要騎士団主力はそれぞれの戦場を離れられない。


学院での勝利が、全ての終わりではなかった。


ローデン評議官は《認証縛環》と医療用拘束帯を施されたまま、成人警備員二人以上の監視下にいた。


逃げず、死なず、封印簿原本にも触れていない。


原本は学院側と王国側の成人記録官によって、二重封印された証拠箱に収められたままだ。


僕は毛布へ戻され、バルト先生の診察を受けていた。


左腕は熱を持ち、右脚は動かない。通常魔力は《衝圧》でほとんど空になり、意識も今にも途切れそうだった。


災厄級の魔力を得たわけじゃない。


一人で戦えば、僕は心臓へ六歩近づくことさえできなかった。


盾列が攻撃を受け止めた。


先生たちが結界を守った。


ティアナが直線を固定した。


フィアが最後の線を断った。


セルフィナが本物を示した。


レグルスとユリウスが成人保守職員と外殻を開いた。


《暴食》が再生魔力と噛み合い、成人警備員が僕を届け、そして引き戻した。


僕一人が災厄を超えたのではない――分け、断ち、示し、開き、支えた全員の一線が、僕の第一階位魔法を本物の心臓へ届かせ、アークデーモンを討伐した。

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


 下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品の応援をお願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークといただけると本当に嬉しいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ