↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/231

第24話 王都の買い物

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!



「というわけで、二人で行ってきて」


 中央広場へ着くなり、メルナは買い物一覧をティアナへ押しつけた。


 その上には、学院から預かった祭典用の予算証も載っている。


「三人で行く予定だったよね?」


「昨日の開幕演出に使った幻像魔導具、点検しないといけなくなったの」


「昨日は先生に任せたって言ってなかった?」


「任せたけど、やっぱり心配になりました」


 メルナの笑顔が少しも心配そうではない。


 ティアナは疑わしそうに目を細めた。


「絶対、今考えたでしょ」


「細かいことを気にすると、せっかくの二人きりを楽しめないよ?」


「メルナ!」


「買い物が終わるまで戻ってこなくていいから。それじゃあね!」


 橙色の髪を揺らし、メルナは校舎へ走っていった。


 僕はティアナの持つ一覧を覗く。


「人数が減ったなら、荷物は僕が多めに持つよ」


「……アルトは、本当にそういうところだよね」


「何か間違えた?」


「間違ってないから困ってるの」


 意味は分からなかった。


 それでもティアナは帰ろうとは言わない。


 僕たちは予定どおり、二人で王都へ向かった。


 七彩祭の期間中だけあって、魔導具街は普段より混雑していた。


 店先には七色の布が飾られ、武具店も菓子の屋台も、学院の生徒を呼び込もうと声を張り上げている。


 人の波が横切るたび、ティアナとの間が開きそうになる。


「あっ」


 ティアナが僕の制服の袖を掴んだ。


「はぐれそうだから。いい?」


「うん。この方が歩きやすいね」


 僕が歩幅を緩めると、ティアナは袖を掴んだまま隣へ並んだ。


「アルトは、誰かと二人で王都へ来たことある?」


「孤児院の買い出しなら何度か。でも、学院に入ってからは一人が多いかな」


「じゃあ今日は、いつもと違うね」


「荷物を分けられるから助かるよ」


「そこじゃないんだけどなあ」


 ティアナの声は人混みに紛れ、よく聞こえなかった。


 最初に入ったのは、魔導靴を扱う店だった。


 店員へ事情を話すと、僕は椅子へ座らされ、両足の靴を脱ぐことになった。


「こりゃひどいな。右だけ外側が削れてる」


 並べられた靴底は、明らかに厚さが違う。


「摩擦軽減を使う時、右へ多く魔力を流してるだろう?」


「はい。右脚で踏み込む癖があるので」


「このまま続けると、靴より先に足首を傷めるぞ」


 セルフィナの指摘どおりだった。


 店員が出してきたのは、高価な速度強化靴ではない。


 見た目は普通の黒い靴底だった。


「こいつは訓練用の交換式だ。魔法は入ってないから、履いても速くはならん。ただ、左右へ魔力を通しやすくて、摩擦を削っても熱を持ちにくい」


 表面がいくつかの部品へ分かれている。


 削れた場所だけ取り外し、交換できるらしい。


「上位品の方が速くなりますか?」


「速くはなる。ただし、今の制御で速度だけ上げたら壁へ突っ込む」


「それは、もう何度かやってます」


「なら標準品にしろ」


 反論できなかった。


 交換式靴底を取り付けてもらい、店内奥の短い試走路へ立つ。


 正面には、安全用の厚い布が何枚も吊られていた。


「短距離加速は禁止だからね」


 ティアナが念を押す。


「使わないよ。摩擦の左右差を確かめるだけ」


 両足へ、ごく弱い摩擦軽減を使う。


 床から伝わる抵抗が、同時に薄くなった。


 以前の靴なら、右足だけ先に滑って身体が回転していた。


 今回は正面へ進む。


「真っすぐ!」


 ティアナの声が聞こえた直後、僕は止まれないことを思い出した。


「わっ」


 両腕を広げたまま、吊られた布へ突っ込む。


 何枚もの布に包まれ、ようやく足が止まった。


 後ろからティアナの笑い声がする。


「ちゃんと真っすぐ突っ込んだね」


「前より綺麗に失敗できた」


「それ、成長って呼んでいいのかな?」


 少なくとも左右差は減っている。


 靴底を替えただけで、停止方法まで身につくわけではない。


 僕は学生向けの標準品を購入した。


 次に入った訓練魔導具の店で、奇妙な金属環を見つけた。


 腕輪ほどの大きさで、内側に細い術式が刻まれている。


「重量調整環だよ」


 店員が訓練用の木剣へ金属環を取り付けた。


「武器の重さを段階的に変えて、筋力や姿勢を鍛える。実戦用じゃないし、武闘大会への持ち込みも禁止だ」


 木剣を持ち上げる。


 最初は普通の重さだった。


 環の目盛りを一つ動かすと、手の中から重さが抜ける。


「軽い……」


 さらに逆方向へ目盛りを動かすと、腕が下へ引かれた。


 重さを変えるだけで、剣の形も長さも変わっていない。


 振り始める時だけ軽くする。


 速度が乗ったあとで、通常の重さへ戻す。


 もし自分の魔法で、命中直前だけ重くできたなら――。


「アルト?」


「ごめん。少し考えてた」


「また、新しい使い方?」


「まだ考えだけだよ。重さを変える魔法も使えないし、切り替える瞬間も分からない」


 今の僕が持っても、すぐ技になる物ではない。


 だからこそ、感覚を覚える訓練には使える。


 新品は高かったため、傷のある中古品を自分の学院支給金で購入した。


 武具関係の買い物を終えると、一覧に残ったのはティアナの祭典用小物だった。


 髪飾り。


 手袋。


 それから、舞踏会用衣装の確認。


「衣装は時間がかかるから、アルトは他のお店を見ててもいいよ」


「一緒に来たんだから、選ぶところまで付き合うよ」


「本当に?」


「一人で決めるより、誰かに見てもらった方が選びやすいでしょ」


「……うん。じゃあ、見てて」


 ティアナは衣装店の奥へ入った。


 しばらくして、試着室の幕が開く。


 一着目は、白と金を基調にした衣装だった。


 肩から腰へ金色の刺繍が走り、長い裾が床近くまで伸びている。


 露出は少なく、騎士団の式典でも使えそうなほど格式が高い。


「どうかな?」


「すごく立派だね。土亀騎士団の式典に出ても浮かないと思う」


「やっぱり、そう見えるよね」


 似合っていないわけではない。


 けれどティアナの背筋は普段より硬く、笑顔にも力が入っていた。


「もう一着あるから、着替えてくるね」


 二度目に幕が開く。


 淡い緑と生成り色の衣装だった。


 裾と袖には、小さな葉の刺繍がある。


 白と金の衣装より華やかさは控えめだが、動くたびに布が柔らかく揺れた。


 ティアナも、今度は肩の力を抜いて笑っている。


「どっちがいいと思う?」


「緑の方がいい」


「すぐ決めたね」


「そっちの方が、ティアナがいつもみたいに笑ってるから」


 ティアナが瞬きをする。


 頬が少しずつ赤くなった。


「それって……衣装が似合うって意味?」


「うん。ティアナによく似合ってる」


「じゃあ、可愛い?」


 そこだけ、声が小さかった。


 僕はもう一度、淡い緑の衣装を見る。


 いつも制服や訓練着で会う時とは違う。


 でも、葉の刺繍も柔らかな色も、ティアナの明るい笑顔によく合っていた。


「うん。可愛いと思う」


 ティアナの顔が、さっきより赤くなる。


「そ、そっか。なら、こっちにしようかな」


「私も緑の方がいいと思う」


 入口から聞こえた声に、僕たちは同時に振り返った。


 フィアが立っていた。


 腰まで届く金髪に、いつもの黒いカチューシャ。手には、小さな書類を持っている。


「フィア? どうしてここに?」


「メルナに、祭典用予算証の控えを届けろと言われた。私なら一番早いから、と」


 ティアナが受け取る。


「控えなら、帰ってからでもよかったのに」


「私もそう言った。でも、今すぐ必要になるかもしれないと言われた」


 どうやら、本当に必要だったわけではなさそうだ。


 フィアは淡い緑の衣装を着たティアナと、僕を交互に見た。


 眉が僅かに寄っている。


「右手、痛むの?」


「違う」


 フィアは包帯の残る右手を見た。


「でも、見ていると妙に落ち着かない」


「衣装が?」


「アルトとティアナを見ていると」


 ティアナの肩が少し動く。


「どうして?」


「理由は分からない」


 フィア自身も、その感覚に困っているようだった。


 ティアナを責めることも、店を出ていくこともしない。


 ただ、胸元へ一度手を当てている。


「それより、靴底を買ったんだよ」


 ティアナが話題を変えた。


「フィアにも見てもらおうと思ってたの。速く動くなら、一番詳しいでしょ?」


 僕は交換式靴底を見せた。


 フィアはしゃがみ、素材と分割された部品を確認する。


「左右差は減る。でも、停止時に両足の摩擦を同時に戻すから前へ投げ出される」


「そこが直せなくて」


「両足を同時に戻す必要はない」


 フィアが僕の右足を指した。


「片足だけ先に摩擦を戻す。次に身体を横へ流して、もう片方を戻す。速度を消すのではなく、向きをずらして分ける」


「片足ずつ……」


 僕は止まることだけを考えていた。


 勢いを一度で消せないなら、二つに分ける方法もある。


「次の訓練で試してみる。でも、今日はやらないよ」


「ここで試したら、商品棚へ突っ込む」


 もっともな指摘だった。


 ティアナが衣装を着替え、僕たちは店を出た。


 通りの向こうから、メルナが手を振っている。


「お疲れさま。買い物、どうだった?」


「なんでフィアまで送ったの?」


 ティアナが詰め寄る。


「予算証の控えを届けてもらっただけだよ」


「絶対、ほかにも理由があるでしょ」


「結果的に靴の助言ももらえたんだから、よかったじゃない」


 メルナは僕たちを順番に見る。


 衣装の包みを抱えたティアナ。


 新しい靴底と重量調整環を持った僕。


 そして、僕とティアナを見るたびに僅かに眉を寄せるフィア。


「なるほど。本人が一番分かってないやつだ」


「何か言った?」


 僕が尋ねると、メルナは笑顔で首を振った。


「何も。帰ろうか」


 学院へ戻る途中、王都広場に人だかりができていた。


 大型魔導映像が、魔物戦線からの速報へ切り替わっている。


 荒れた大地。


 土煙の向こうで、城壁ほどもある巨大な影が動いた。


 その正面に、一人の騎士が立っている。


 銀の髪。


 水を纏った剣。


 遠くからでも見間違えるはずがない。


「水蝶の騎士だ!」


「レイシア様なら大丈夫だ!」


 王都の人々が歓声を上げる。


 僕は足を止めた。


 隣でティアナも映像を見上げている。


 楽しかった今日が消えたわけではない。


 買った靴も、重量調整環も、ティアナの緑の衣装も、すべて僕の手元に残っている。


 それでも映像の中のレイシアは、誰の声も届かない場所で、巨大な敵と一人で向かい合っていた。


 王都中が彼女なら大丈夫だと笑う中で、僕だけは、その“大丈夫”の向こう側にいるレイシアを見ようとしていた。

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


 下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品の応援をお願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークといただけると本当に嬉しいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。