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『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


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第217話 裏切りの炎

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!


 最初に感じたのは、手首の冷たさだった。


 目を開くと、両手に白銀の枷がはめられていた。


 枷から伸びる鎖を、王国騎士が握っている。


 僕が立たされていたのは、王都の中央広場だった。


 白い石畳を取り囲む群衆。その向こうには王城がそびえ、正面には十三段の階段を備えた処刑台がある。


 空は炎を塗り広げたように赤い。


 けれど、風は吹いていなかった。


 王国旗も、騎士の外套も、広場を囲む木々の葉も動かない。


 群衆が口々に何かを叫んでいるのに、声だけが水の底から聞こえるように遠かった。


「ここからは、王国に任せるね」


 ティアナが鎖から手を離した。


 僕の前には、ティアナ、フィア、レグルス、セルフィナが並んでいた。


 誰も武器を向けてはいない。


 それがかえって、僕には痛かった。


 敵として戦う価値さえない。


 もう自分たちが手を伸ばす相手ではない。


 そう判断されたように見えたからだ。


「何度も言ったよね。危ないなら隠さないでって」


 ティアナは笑っていなかった。


「でもアルトは、また一人で決めた。異変があるって分かってたのに、私たちには大丈夫だって言ったよね」


「それは――」


「自分だけが傷つけばいいって顔をしてさ。私たちが止めても、最後には一人で背負うんだもん」


 ティアナの目が、僕を通り過ぎる。


「だからもう、隣には立てないよ」


 胸の奥へ、細い針を差し込まれた。


 けれど、僕は最初から理解していた。


 これは現実ではない。


 本物のティアナなら、僕が危険を隠したことに怒る。


 胸倉を掴んででも、勝手に一人で決めるなと言う。


 それでも、僕の隣を他人へ明け渡したりはしない。


「アルト」


 フィアが僕の名を呼ぶ。


「剣を置いて。今のあなたは危険」


 短い言葉も、少し鋭い声も本物と同じだった。


 ただし、その目は僕を見ていない。


 僕の腰にあるはずの剣だけを見ていた。


 本物のフィアなら、危険だと判断すれば迷わず僕へ剣を向けるだろう。


 それでも、僕自身から目を逸らしはしない。


「君を信じたい気持ちと、王国を危険へ晒す判断は別だ」


 レグルスが告げた。


 冷静で、誇りを失わない声だった。


「僕は君を競争相手だと認めていた。しかし、自分を律することすらできない者と競い続けるつもりはない」


 違う。


 本物のレグルスなら、僕が立てる限り競争を終わらせない。


 倒れたのなら、立てと言う。


 置いていくとしても、二度と追いつけないとは決めつけない。


「事実として、アルトさんは《憤怒》の影響下にあります」


 セルフィナが続ける。


「安全だと証明できない以上、拘束と引き渡しが妥当です。皆さんを頼らず異変を隠したことも、その判断を補強しています」


 これも違う。


 本物のセルフィナは、分かっている事実と、まだ確かめられていない推測を混同しない。


 危険性があることと、僕が必ず危害を加えることを、同じ結論にはしない。


 四人とも偽物だ。


 声が似ていても、顔が同じでも、間違えるはずがない。


 ただ――偽物の言葉は、嘘だけで作られてはいなかった。


 僕は何度も異変を小さく報告した。


 少し痛むだけ。


 まだ動ける。


 今は話すほどのことじゃない。


 そんな言葉で、自分の状態を軽く見せた。


 みんなを危険へ巻き込みたくないと思いながら、相談する前に一人で決めた。


 差し出された手を信じ切れず、自分だけが傷つけば済む形へ逃げたこともある。


 怒られて、もうしないと約束した。


 それでも、僕は繰り返した。


 ならば、いつか本物のみんなが疲れ果てる日は来ないのか。


 何度手を伸ばしても、僕がその手を取らないのなら。


 もう勝手にすればいいと、手を離す日が絶対に来ないと言い切れるのか。


 偽物だと見抜くことと、その可能性を恐れないことは、同じではなかった。


 胸の底で、熱いものが揺れた。


 そして、一つの問いが浮かんだ。


 ――なぜ、信じてくれなかった。


 浮かんだ瞬間、僕はその言葉を消そうとした。


 目の前にいるのは偽物だ。


 信じてもらう必要なんてない。


 それなのに生まれた問いは、本物のみんなへ向いたものではないのか。


 信じてほしいと願うことと、信じなかった相手を責めること。


 その境目が分からなかった。


 こんな怒りを認めたら、僕は仲間を疑った人間になってしまう。


 枷の内側が熱を持った。


 冷たかったはずの金属が、じわりと皮膚を焼く。


『今の問いは、誰へ向けた』


 声がした。


 男とも女ともつかない。


 どこから聞こえたのかも分からない。


 静かで、冷たく、怒鳴っていないのに、言葉だけが頭の内側へ深く沈んだ。


「お前が作った幻だ」


『幻に信じられて、何の意味がある』


「意味なんてない」


『ならば、なぜ怒った』


 答えられなかった。


『お前が責めたのは、ここにいる偽物ではない』


「違う」


『いつか自分を見捨てるかもしれない、本物の仲間だ』


「違う。僕はみんなを信じている」


『怒りとは、自分が不当に扱われたという訴えだ。お前は、仲間が自分を裏切る可能性を思い描き、その相手へ問いを投げた』


 枷の熱が強くなる。


『怒りを感じた時点で、お前は本物の仲間を疑いの中へ置いた』


「違う……」


『ならば、なぜ信じてくれなかったと考えた』


 奥歯を噛み締めた。


 怒ってはいけない。


 怒りを認めれば、こいつの言葉を認めることになる。


 本物のみんなまで疑っていたと、自分で認めることになる。


 胸の熱を押し殺した瞬間、枷から伸びる鎖がひとりでに張った。


 身体が処刑台へ引かれる。


 一段。


 また一段。


 足を止めようとしているのに、力が入らなかった。


『よく抑えた』


 声は僕を褒めていなかった。


『怒らぬ善人でいるためなら、お前は自分の足を差し出せる』


 階段の上に、一本の剣が突き立っていた。


 赤黒く変質した《魔剣サタン》。


 刃の周囲では、赤い炎が呼吸するように膨らんでは縮んでいる。


 黒い柄には、緑の紐が結ばれていた。


 ティアナが結んだ紐だ。


 魔剣も、処刑台も炎に包まれているのに、それだけは焼けずに残っている。


『取れ』


「取らない」


『なぜだ』


「この剣で、みんなを斬るつもりはない」


『仲間を信じているからか』


「そうだ」


『違う』


 炎が、ゆっくりと揺れた。


『お前は仲間ではなく、自分を信じていない』


 鎖が張り、僕の腕が処刑台へ引き上げられる。


『怒った自分は、必ず誰かを傷つける。剣を取れば、必ず斬る。そう決めつけている』


「僕は、傷つけたくないだけだ」


『剣を取ることと、斬ることの間には選択がある。だが、お前は選択する自分を信じられない』


 言い返せなかった。


『ゆえに怒りも剣も手放した。その後で誰が斬られるかは、別の何かに決めてもらえばいい』


 澄んだ靴音が響いた。


 処刑台の奥から、一人の騎士が歩いてくる。


 淡い銀青の髪。


 白と深青の騎士装束。


 周囲を舞う、透き通った水の蝶。


 七大魔法騎士、水蝶騎士団長。


 レイシアだった。


「アルト・ロウェル」


 公務の時に使う、穏やかで丁寧な声だった。


 孤児院で一緒に育った僕を呼ぶ声ではない。


 それでも、聞き間違えるはずがなかった。


 僕が騎士を目指した原点。


 遠く離れていても、帰ると約束した相手。


 もう一度会えた時、胸の奥に隠していたものが、僕だけのものではないと知った相手。


 そのレイシアが、処刑台から僕を見下ろしている。


「七罪の魔剣に呑まれ、王国と民を害する危険がある者として、あなたの処刑を承認します」


 群衆の声が、一斉に消えた。


「王国と民を守ることが、私の責務です」


 レイシアは悲しそうに微笑んだ。


「あなた一人と、王国に生きる全ての方々を秤にはかけられません。どうか、理解してください」


「レイシア」


「せめて、苦しまないように終わらせます」


 偽物だ。


 本物のレイシアなら、王国を守るために僕を拘束する可能性はある。


 僕が危険なら、自分の手で剣を向けることだってあるだろう。


 けれど、調査も対話もせず、僕に何一つ選ばせないまま、優しい顔で終わらせたりはしない。


 本物のレイシアなら、僕の言葉を聞く。


 信じられないのなら、信じられるまで確かめようとする。


 その結果、僕を斬るしかないと決めたのなら――きっと、こんな穏やかな顔はしない。


 分かっている。


 目の前にいるのは、僕の記憶を使って作られた偽物だ。


 それでも、胸の炎は消えなかった。


 レイシアが王国を選んだことに怒ったのではない。


 最後まで僕を信じようとしなかったことが、苦しかった。


 どうして。


 何年も待ってくれたのに。


 帰ってきてほしいと言ってくれたのに。


 僕が僕でなくなる前に、どうして手を伸ばしてくれなかった。


『また怒った』


「黙れ」


『今度は、誰にだ』


 答える前に、群衆の後ろから声が上がった。


「アルト兄ちゃん!」


 人々の隙間を縫って、子どもたちが走ってくる。


 ロウェル孤児院の子どもたちだった。


 騎士たちが止めようとする。


 それでも、一番前を走っていた小さな女の子が腕の下を潜り抜け、処刑台の階段へしがみついた。


「アルト兄ちゃんは悪くないよ!」


「来ちゃ駄目だ!」


 僕が叫んでも、女の子は離れなかった。


「アルト兄ちゃん、私たちを助けてくれたもん! 怖い時も、ずっと一緒にいてくれたもん!」


 女の子がレイシアを見上げる。


「レイシアお姉ちゃんも知ってるでしょ!」


 レイシアの周囲を舞っていた水の蝶が、一頭だけ向きを変えた。


 透明な羽が、薄い刃のように光る。


「処刑を妨げてはいけません」


「やめろ!」


「下がってください」


 レイシアが手を下ろした。


 水の蝶が走る。


 女の子の肩が浅く裂け、白い服へ赤が散った。


 小さな身体が階段から転げ落ちる。


 その瞬間、僕の中で何かが切れた。


 これは幻だ。


 あの子も偽物だ。


 孤児院の子どもを傷つけるレイシアなど、本物であるはずがない。


 理解は残っていた。


 それでも、理解を選択へ変えるための理性が消えた。


『剣なら、そこにある』


 気づけば、《魔剣サタン》の柄へ手を伸ばしていた。


 自分の指で握った。


 自分の意思で引き抜いた。


 《憤怒》に身体を奪われたわけではない。


 ただ、怒りを認めることも、どう扱うかを選ぶことも放棄した僕の前へ、《憤怒》が斬るべき相手を並べていた。


 赤黒い炎が右腕を這い上がる。


 魔剣を鎖へ叩きつけると、枷が砕けた。


「その子から離れろ!」


 僕は女の子とレイシアの間へ踏み込んだ。


 水の蝶が行く手を塞ぐ。


 振り抜いた魔剣が蝶を裂き、そのままレイシアの身体を斜めに通った。


 血は出なかった。


 傷口から噴き出したのは、赤い炎だった。


 レイシアの顔が苦痛に歪む。


 偽物だ。


 そう分かっているのに、その顔は孤児院にいた頃のレイシアに見えた。


「アルト、止まって!」


 ティアナが駆け寄ってくる。


 僕は振り返った。


「来るな!」


「剣を離して! 今ならまだ――」


 足を止めるための力が伸びてくる。


 僕はそれごと魔剣を振り抜いた。


 刃がティアナを捉える。


 傷口から炎が噴き上がった。


「アルト」


 フィアが剣を構える。


 視線が合った。


 今度は偽物のはずの目が、真っ直ぐ僕だけを見ていた。


「置いて」


「偽物だ」


 剣を受け止め、押し返す。


「君たちは全員、偽物だ」


 肩口へ刃を入れる。


 フィアの身体から赤い炎が噴き出した。


「君をこのまま行かせるわけにはいかない」


 レグルスが立ちはだかった。


 誇り高く、最後まで僕を競争相手として見る顔。


 僕はその武器を断ち、返した刃で胴を薙いだ。


 セルフィナが攻撃を放つ。


 それを払い、彼女の身体ごと斬り伏せた。


 爽快さなどなかった。


 一人斬るたび、胸の奥が冷たくなった。


 全員、偽物だ。


 だから斬っていい。


 斬らなければ、あの子がまた傷つけられる。


 そう言い聞かせるたび、幻の顔が本物に近づいていった。


 ティアナの驚いた目。


 フィアの唇から漏れた息。


 レグルスの悔しそうな表情。


 セルフィナの静かな眼差し。


 偽物だと繰り返さなければ剣を振れないのに、繰り返すほど、本物を斬った感触だけが手に残った。


 僕は怒りを制御したのではない。


 怒りを見ないふりをした結果、《憤怒》が用意した相手へ剣を振るっただけだった。


 ティアナの身体が炎となって崩れる。


 その瞬間、《魔剣サタン》の柄に結ばれた緑の紐が、強く指へ食い込んだ。


「――アルト!」


 声がした。


 斬ったティアナからではない。


 もっと遠く。


 燃え上がる空の向こうから届く声。


 それでも、間違えようのない本物の声だった。


「アルト! 戻ってきて!」


 短く、強い。


 緑の紐だけが、炎の中でも燃えていない。


「アルト。戻って」


 フィアの声が重なった。


「君が眠っている間に勝負を終わらせるつもりはない。戻ってこい、アルト」


 レグルスの声。


「アルトさん。私たちの声が届いているなら、どうかご自分で選んでください」


 セルフィナの声が続く。


 四人の声は、僕の身体を引き上げてはくれなかった。


 炎も消えない。


 魔剣も手から離れない。


 ただ、僕が帰るべき場所の方向だけを示していた。


 赤い空へ亀裂が走る。


 ひび割れた鏡のように、広場の一部が砕けた。


 亀裂の向こうに、世界樹の広間が見える。


 寝台に横たわる僕自身。


 胸は規則正しく上下し、心臓も動いている。


 左腕には、既存の《暴食》の黒い紋章と、それを抑える封魔具が残っていた。


 それとは別のものが、僕の身体へ浮かんでいる。


 胸の中心から喉を通り、右肩へ伸びる赤黒い紋様。


 火傷にも、焼け焦げた枝にも見える。


 一拍ごとに明滅し、内側から皮膚を焼いているようだった。


 寝台の近くには、世界樹の根に封じられた赤黒い《魔剣サタン》がある。


 四本の太い根が寝台へ繋がり、そこから別々の方向へ伸びていた。


 根の先にいる四人が、何度も僕の名前を呼んでいる。


 オベイロンが寝台の傍らに立ち、僕の身体へ手をかざしていた。


「心臓、呼吸、魂と肉体の接続は保たれています」


 静かで、正確な声が亀裂を通って届く。


「分かるのはそこまでです。精神世界の内部で、彼が何を見ているかまでは確認できません」


「オベイロン、何とかできないの?」


 ティアナの声が、光る根を伝って響く。


「私が彼の精神世界へ直接入り、《憤怒》を強制的に切り離すことはできません」


「無理にやったら?」


「彼の意識と肉体の接続まで傷つける危険があります。戻れたとしても、今のアルトと同じ状態を保てる保証はありません」


 一瞬、誰の声も聞こえなくなった。


「じゃあ、私たちは何をすればいいの?」


「名前を呼び続けてください」


「それだけ?」


「それしかできません」


 オベイロンは、曖昧な希望を口にしなかった。


「名は、彼が現実のどこにいるかを示す錨になります。ただし、錨は道を示すだけです。戻ることを選べるのはアルトだけです」


 四本の根が強く光る。


 ティアナが僕を呼ぶ。


 フィアが呼ぶ。


 レグルスが呼ぶ。


 セルフィナが呼ぶ。


 誰も僕を見捨てていない。


 誰も、僕に全てを背負わせようとしていない。


 自分たちの場所で戦いながら、それでも僕へ声を伸ばしている。


「聞こえてる」


 僕は亀裂へ手を伸ばした。


「僕は、ここにいる」


 指先が現実の光へ触れかける。


 その直前、背後から赤い炎が巻きついた。


 胸の奥を掴まれる。


「待ってくれ!」


 身体が処刑広場へ引き戻された。


 伸ばした指先から光が遠ざかる。


 亀裂が閉じた。


 砕けた世界が、逆向きに組み上がっていく。


 セルフィナを包んだ炎が傷口へ吸い込まれ、僕の刃から彼女の身体が離れる。


 レグルスの武器が繋がる。


 フィアの傷が閉じる。


 ティアナの身体が炎から元の姿へ戻った。


 斬られたレイシアが一つになり、水の蝶が裂け目を遡ってその手元へ戻っていく。


 女の子の肩から血が消えた。


 服の裂け目が塞がり、小さな身体が階段を上って元の場所へ戻る。


 《魔剣サタン》が僕の手を離れ、処刑台へ突き立つ。


 砕けた枷が形を取り戻し、両手首を閉じた。


 鎖が王国騎士の手へ戻っていく。


 気づけば、僕は十三段の階段の下に立っていた。


 空は炎のように赤い。


 風は吹いていない。


 ティアナ、フィア、レグルス、セルフィナが僕の前へ並んでいた。


「ここからは、王国に任せるね」


 偽物のティアナが、最初と同じ声で言った。


 胸が痛んだ。


 偽物だと分かっている。


 同じ言葉を繰り返しているだけだとも分かっている。


 それでも、今度は何も感じていないふりができなかった。


『さあ、否定しろ』


 炎の奥から、静かな声が届く。


『これは偽物だ。ゆえに傷ついていない。仲間を疑っていない。何も腹立たしくはない。そう言えば、お前はまた善人のままでいられる』


 僕は拳を握った。


 怒りを認めれば、仲間を疑ったことになると思っていた。


 怒りを抱けば、その相手を傷つけると思っていた。


 だから見なかった。


 なかったことにして、正しい答えだけを選ぼうとした。


 けれど、消えたわけではなかった。


 僕が見ようとしなかった怒りを《憤怒》が拾った。


 僕が誰も傷つけないために選択を手放した隙へ入り込み、代わりに剣を振るう相手を決めた。


 怒りを感じることと、怒りに斬る相手を決めさせることは――もしかすると、同じではない。


「僕は……」


 怒っている。


 そう言おうとした。


 けれど、喉が内側から焼けるように痛んだ。


 息だけが漏れ、言葉にならない。


 偽物のティアナが僕へ背を向ける。


 処刑台へ続く鎖が、再び強く張った。


『怒ることすら恐れる者が、憤怒を制御できるものか』

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


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 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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 何卒よろしくお願いいたします。

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