↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/232

第20話 共通の敗北

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!

 


鎧蜥蜴の尾が、唸りを上げた。


「伏せて!」


ティアナが両手を振り下ろす。


僕たちの前で、何重にも編まれた蔦が壁になる。


直後、巨大な尾が激突した。


蔦が千切れ、衝撃だけが空洞を駆け抜ける。


身体を低くしていた僕たちの頭上を、砕けた石が飛んでいった。


「右へ動く!」


フィアが叫ぶ。


四人で壁際へ移動する。


鎧蜥蜴は追ってこなかった。


巨大な身体を反転させ、唯一の出口らしき整備通路へ尾を叩きつける。


轟音。


天井が崩れ、出口が大量の瓦礫に塞がれた。


「逃がす気がないのか……?」


「違う。本能で、自分の縄張りを閉じたんだ」


レグルスが風を送り、瓦礫の隙間を探る。


「風が通らない。あそこからは出られない」


鎧蜥蜴が身体を震わせた。


鱗の間を、黒い光が走る。


落下時に傷ついていたはずの脇腹が盛り上がり、砕けた鱗が下から押し出された。


新しい鱗が、傷を完全に覆う。


壁へ目を向ける。


安定魔石から伸びる黒い術式が脈打つたび、鎧蜥蜴へ魔力が流れ込んでいた。


「壁から補給を受けてる」


「なら、あの魔石を壊せばいい?」


ティアナの蔦が、最も近い安定魔石へ向く。


「駄目だ」


僕はすぐに止めた。


「安定魔石は迷宮の魔力濃度を支えてる。ここだけじゃなく、上の階層まで繋がってるかもしれない」


無理に破壊すれば、溜め込まれた魔力が一度に溢れる。


空洞の崩落だけでは済まない可能性があった。


「改竄された術式だけを消せる?」


フィアが尋ねる。


「今の僕には無理だ。下手に触れば、何が起きるか分からない」


鎧蜥蜴が四本の脚で床を掻いた。


石が削れ、巨体が沈む。


突進の構えだ。


「散らばらないで!」


ティアナが地面へ種を撒く。


僅かに溜まった土から蔦が伸び、僕たちの背後へ斜めの土壁が立ち上がった。


鎧蜥蜴が突進する。


正面から受けることはできない。


土壁の傾斜に沿うように、四人で側面へ逃れる。


巨体が壁へ衝突した。


空洞全体が震え、鎧蜥蜴が顔を上げて咆哮する。


その瞬間だけ、喉元の鱗が扇のように開いた。


内側に、柔らかな皮膚が見える。


「喉だ」


僕の言葉に、三人の視線が集まる。


詳しく話す時間はなかった。


「ティアナ、脚を。フィアは頭を上げさせて。僕が開く。レグルスが刺す」


「分かった」


誰も問い返さなかった。


鎧蜥蜴がこちらを向く。


ティアナが両手を握り込んだ。


土壁の陰から蔦が走り、鎧蜥蜴の両後脚へ巻きつく。


「今!」


フィアの細剣が、床を擦った。


刃から放たれた雷が石床を走り、鎧蜥蜴の左前脚へ届く。


巨体が痙攣し、フィアへ顔を向けた。


フィアは一人で飛び込まない。


雷を纏ったまま、蔦の届く範囲を保って横へ走る。


鎧蜥蜴が牙を剥き、彼女へ吠えた。


喉の鱗が開く。


僕は右脚だけへ身体強化を流した。


一歩。


強化を切る。


次に足裏へ魔力を集中し、短距離加速を使う。


二つを同時には繋がない。


《閃駆》ではなく、それぞれの第一階位魔法として使う。


鎧蜥蜴の顎下へ滑り込む。


開いた鱗の一枚へ、剣の鞘を差し込んだ。


「ぐっ……!」


鱗が閉じようとする。


両手で鞘を押し込み、隙間を広げる。


「レグルス!」


銀槍を構えたレグルスの周囲で、風が収束した。


身体ではなく、槍先だけを加速させる。


放たれた刺突が、僕の肩の横を通り過ぎた。


槍先が鱗の隙間へ吸い込まれる。


硬いものを貫く音。


喉元へ、僅かに血が滲んだ。


届いた。


四人の攻撃が、初めて一つの場所へ重なった。


だが次の瞬間、壁中の安定魔石が黒く光った。


大量の魔力が鎧蜥蜴へ流れ込む。


槍が刺さった傷口から新しい鱗が生え、レグルスの穂先を押し戻した。


僕の鞘も弾き出される。


「離れろ!」


鎧蜥蜴の体内から、魔力が溢れた。


衝撃波が空洞全体へ広がる。


身体が浮いた。


背中から石床へ落ち、肺の空気が押し出される。


ティアナの蔦が千切れた。


フィアの雷が消える。


レグルスの銀槍が床を跳ねた。


それでも鎧蜥蜴の喉元には、傷一つ残っていなかった。


「来る!」


フィアが叫ぶ。


鎧蜥蜴が暴れた。


誰か一人を狙っているのではない。


尾が壁を薙ぎ、前脚が床を砕き、巨体そのものが空洞を壊していく。


「下がって!」


ティアナが土壁を立ち上げる。


尾が直撃した。


壁も蔦も、一度に砕ける。


無数の岩が僕たちへ降り注いだ。


ティアナは避けるより先に、両腕を広げた。


彼女の正面に大きな花が咲き、花弁が僕とレグルスを覆う。


岩が花弁を突き破った。


鈍い音とともに、ティアナの肩が跳ねる。


「ティアナ!」


脇腹にも石が当たり、彼女は膝をついた。


フィアが雷を纏って駆ける。


攻撃のためではない。


「左へ二歩! 次は上!」


落石の隙間を読み、僕たちへ進路を示している。


その背後から、鎧蜥蜴の尾が振り抜かれた。


直接は触れていない。


それでも尾が生んだ風圧が、華奢な身体を持ち上げた。


フィアが壁へ叩きつけられる。


右手の包帯へ赤い染みが広がり、細剣が指から滑った。


レグルスが彼女の前へ入る。


「伏せろ!」


銀槍を横へ構えた直後、二度目の尾が激突した。


金属が軋む。


銀槍の柄へ、細い亀裂が走った。


レグルスの身体も槍ごと弾かれ、床へ転がる。


脇腹を押さえたまま起き上がろうとするが、右腕が震えていた。


同じ一撃で、僕たちの形が崩された。


ティアナの壁も。


フィアの速さも。


レグルスの槍も。


何一つ、鎧蜥蜴を止めていない。


巨体が迫る。


僕は剣を構え、倒れた三人の前へ出た。


身体強化を使う。


右脚に力を込める。


けれど鎧蜥蜴の前脚は、剣で受けられる大きさではなかった。


爪が刃へ食い込む。


金属が悲鳴を上げ、一部が欠けた。


「っ……!」


全体重を乗せられ、片膝が床につく。


腕が震える。


剣を押し返せない。


左腕の紋章が、焼けるように熱くなった。


『喰え』


ベルゼバスの声が、頭の中へ響く。


『壁も、獣も、すべて喰えば勝てる』


意識を魔力へ向けてしまう。


安定魔石から溢れる濃厚な魔力。


鎧蜥蜴の内側で膨れ上がる魔力。


どちらも、甘い匂いを放つ食べ物のように感じられた。


『守りたいなら、力を選べ』


その向こうに、三つの光があった。


ティアナの温かな土色。


フィアの鋭い雷光。


レグルスの澄んだ風。


傷つき、弱くなった三人の魔力まで、飢えた僕の中へ流れ込もうとしている。


暴食を開けば、鎧蜥蜴だけで止められない。


僕が二体目の怪物になる。


「使わない」


『ならば、そこで潰れろ』


爪の重さが増した。


僕は欠けた剣を握り直す。


暴食を使わなくても勝てると思ったわけじゃない。


もう、勝てないことは分かっていた。


それでも仲間を喰うより先に、剣を離したくなかった。


鎧蜥蜴が前脚を持ち上げる。


僕の右脚には、立ち上がる力が残っていない。


その爪が、今度こそ僕たちへ振り下ろされた。


崩れた天井の隙間から、半透明の小鳥が飛び込んだ。


風で形作られた、セルフィナの精霊。


小鳥は整備扉の前で弾け、淡い翡翠色の光を残した。


直後、扉が外側から吹き飛んだ。


「四人から離れろ!」


バルト先生が空洞へ飛び込む。


鎧蜥蜴へは向かわない。


先生の剣が、壁を走る黒い術式を正確に斬った。


一本。


二本。


三本。


安定魔石から鎧蜥蜴へ流れていた黒い魔力が途切れる。


「供給を切った! 拘束しろ!」


後方から入った教師たちが、僕たちの前へ防壁を展開した。


光の鎖が鎧蜥蜴の四肢と尾へ巻きつく。


巨体が暴れ、鎖を引き千切ろうとする。


しかし、砕けた鱗はもう再生しない。


バルト先生が床を踏み込んだ。


全身に流れていた魔力が、剣を握る両腕へ集まる。


剣の腹が、鎧蜥蜴の顎を下から打ち抜いた。


巨体が浮き、背中から地面へ沈む。


石床が陥没した。


教師たちは緩めることなく拘束術式を重ね、鎧蜥蜴の口と四肢を完全に封じた。


四人で何をしても止まらなかった魔物が、動かなくなる。


「生存者四名、確認! 負傷者から運べ!」


先生たちの声が遠く聞こえた。


そこで、僕の意識は途切れた。


次に目を開けると、白い天井があった。


学院の医務室。


胸には包帯が巻かれ、右脚は固定されている。


隣の寝台では、ティアナが肩と脇腹を治療されていた。


向かいには、右手へ新しい包帯を巻かれたフィア。


さらに奥に、腕と肋骨を固定されたレグルスがいる。


壁へ立てかけられた銀槍には、はっきりと亀裂が残っていた。


僕の欠けた剣も、寝台脇の台へ置かれている。


「鎧蜥蜴は拘束した」


医務室の壁際に、バルト先生が立っていた。


「調査中だが、戦闘能力は少なくともC級上位。供給量次第ではB級に届いていた可能性もある」


誰も声を出さない。


「お前たちの撤退判断は正しい。時間を稼ぐ判断も、喉を狙った作戦も間違っていない」


先生は、そこで言葉を切った。


「だが、正しい判断だけで生き残れるほど、実戦は甘くない」


否定する言葉はなかった。


「今回は、お前たちの力が足りなかった」


それだけを告げ、バルト先生は医務室を出ていった。


沈黙が残る。


誰か一人が失敗したのなら、その失敗を直せばよかった。


けれど今回は違う。


僕の判断も。


ティアナの魔法も。


フィアの速さも。


レグルスの槍も。


四人で合わせた攻撃さえ、何も残せなかった。


寝台の端で、何かが動いた。


ティアナが、動かせる方の手をこちらへ伸ばしていた。


僕も指先だけを伸ばす。


僅かに触れる。


「いる?」


小さな声だった。


「いるよ」


それ以上、言葉は続かなかった。


フィアは包帯を巻き直された右手を見つめている。


レグルスは、亀裂の入った銀槍から目を逸らさない。


僕も欠けた剣を見た。


誰も、次は勝つとは言わなかった。


しばらくして、レグルスが寝台から上体を起こした。


「その槍、修理できそう?」


僕が尋ねる。


レグルスはすぐには答えなかった。


亀裂へ指を沿わせ、銀槍を強く握る。


「アルト。明日、訓練場へ来てくれ」


「また勝負?」


「違う」


レグルスは、フィアとティアナにも視線を向けた。


「今度は、僕一人では足りない話だ」

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


 下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品の応援をお願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークといただけると本当に嬉しいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。