↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

199/229

第199話 アルトを呼ぶ五人

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!



ガイ団長の目配せを受けた五人は、返事をせず、僕を囲む別々の位置へ動いた。


正面では、召喚獣全身換装《両面宿儺》の灰黒色の鎧が《魔剣サタン》を受け続けている。


ガイ団長の本来の両腕が大剣を握り、追加された一本が剣の背を支え、残る一本が黒赤い刀身の腹を押していた。


換装固有技《四腕重圧》。


その背後には灰鬼騎士団の成人盾列が重なり、左右から伸びる鎖が僕の腕、胴、両脚を停止杭へ繋いでいる。


それでも僕の身体は前へ出ようとした。


右上腕の赤黒い契約紋様が脈打つたび、《魔剣サタン》へ押し込む力が増す。


「右列、肩を入れろ!」


ガイ団長の後ろで盾が鳴った。


停止杭が石床から指一本分浮き、鎖が軋む。


僕は踏み込みを浅くしようとした。


けれど、サタネグラス因子に奪われた脚は、逆に膝を伸ばした。


「止まって……ください」


自分の身体へ向けた言葉は、掠れた息にしかならなかった。


胸郭の内側を魔力変換の熱が焼く。周囲から流れ込む自由魔素は減っている。それでも黒銀色の外殻は、残された魔素まで集めて魔力へ変え続けていた。


演武場外縁から、ローディンが進み出た。


片手には、確認印の並んだ記録の写しがある。


「フィア、ティアナ、レグルス、セルフィナは生存している。お前が殺した記録は存在しない」


四つの名前が、一つずつ耳へ届いた。


同時に、存在しない感触が両手へ蘇る。


フィアの剣を折った重さ。


ティアナを追い詰めた足音。


レグルスの折れた槍。


セルフィナを弾き飛ばした衝撃。


違う。


あれは星門派に埋め込まれた記憶だ。


目の前には、全員が立っている。


ローディンは記録を成人担当者へ渡すと、僕の腰へ巻かれた中央の胴鎖を取った。


成人騎士二人と並び、全身で後方へ引く。


「中央杭、固定する」


鎖の輪が停止杭へ掛けられ、留め金が手動で閉じられた。


腰を引かれた僕の身体が一瞬傾く。


《魔剣サタン》が、その反動を利用して横薙ぎへ移ろうとした。


ガイ団長の二つの視界が動きを追い、追加腕が刀身を押し戻す。


左側から弓弦が鳴った。


一本目の索付き矢が、左肩を覆う黒銀色外殻の端へ掛かる。


二本目は腰の外殻、その継ぎ目だけを捉えた。


三本目が石床へ突き立ち、二本の索を停止杭へ繋ぐ。


「弓技《三点縫留》」


セルフィナが弓を下げず、淡い銀緑色の髪の隙間から僕を見た。


「確定記録では、四人とも救助後に本人確認を受けています。死亡を示しているのは改竄された記憶だけです。記録と記憶は両立しません」


声は静かだった。


けれど、その言葉には複数の根拠があった。


救助後の本人確認。


成人医療担当者による記録。


そして、今ここに立っている四人。


左肩を動かすと、三本の索が同時に張った。


矢は肉へ入っていない。黒銀色の外殻だけを引き、僕の上半身が右へ回ることを止めている。


それでも外殻は索を引き千切ろうと膨らんだ。


「アルト!」


ティアナが石床へ片手をつく。


蜂蜜色の髪が、僕から吹き出す魔力の風に煽られていた。


「危険を隠さないと決めたよね」


以前も僕は、異変を小さく伝えようとした。


心配させたくないと理由をつけて、危険を一人で抱えようとした。


ティアナはそれを許さなかった。


「今、何が痛いの。どこを取られてるの。言って!」


「右腕と……両脚。身体の半分くらい、命令が届きません。胸と、血管が……焼けています」


「なら、そこを止める!」


ティアナが大きく息を吸った。


「石床を媒体に、中心から四方へ根を走らせよ。右脚、左脚、腰、停止杭の順に絡み、外殻を砕かず動きの支点だけを縛れ。四つの根がそれぞれの杭へ結ばれた時、拘束を完成せよ――第四階位・土・植物複合魔法《四根停止陣》」


石床の亀裂から、太い根が四方向へ走った。


第一の根が右脚へ絡む。


第二の根が左脚を石床へ縫い止める。


第三の根が腰を囲み、ローディンの中央胴鎖と重なった。


最後の根が枝分かれし、四方の停止杭へ巻きつく。


外殻を砕かず、動きの支点だけを拘束する構造だった。


僕の両脚が動かなくなる。


ティアナの肩が大きく上下した。第四階位の魔法を維持する指先は震えている。


それでも手を石床から離さなかった。


右側から、銀槍の石突きが床を打つ。


「勝手に競争から降りるな」


レグルスの紫の瞳が、僕ではなく《魔剣サタン》の軌道を追っていた。


「君に勝たないまま終わられたら、僕は何のためにここまで来た」


黒赤い刀身が、ガイ団長の大剣から離れようと跳ねる。


レグルスは銀槍を正面へ向けた。


「我が銀槍を媒体に、正面三歩の風を螺旋へ束ねよ。刃の外縁、鍔、右腕の順に流れを掛け、振り下ろす力を石床の外側へ逃がせ。穂先と剣筋が交差した時、偏向を完成せよ――第四階位・風魔法《螺旋偏軌陣》」


銀槍の周囲へ風が集まった。


螺旋状の流れが《魔剣サタン》の刃の外縁へ絡み、鍔へ移り、最後に僕の右腕を包む。


剣は止まらない。


けれど、成人盾列へ向かおうとした軌道が、石床の外側へ押し流された。


レグルスが穂先を交差させる。


黒赤い刀身が銀槍を押し下げ、その両腕が震えた。踏み締めた足元の石が割れる。


それでもレグルスは槍を離さない。


風の螺旋が剣筋を限定し、ガイ団長の大剣が受けられる正面へ戻していく。


残る一人が、僕の右側へ入った。


フィアの細剣に紫電が走る。


狙っているのは僕の腕でも、契約紋様そのものでもない。


右上腕から《魔剣サタン》へ伸び、僕の意思より先に身体を動かしている赤黒い線だった。


「紫電よ、我が刃に沿い、偽りの脈だけを断て――第一階位・雷魔法《雷装・断脈》」


第一階位の紫電が、細い刃の輪郭だけをなぞる。


大きな力ではない。


だからこそ、僕を巻き込まず一本の線だけへ届く。


フィアが踏み込んだ。


「剣技《雷剣・断線》」


細剣が赤黒い身体命令の線を横切った。


肉体は斬られていない。


右上腕の契約紋様も残っている。


それでも、サタネグラス因子から右腕へ流れていた命令が一瞬だけ乱れた。


《魔剣サタン》の切っ先が下がる。


フィアの右腕も反動で跳ねた。指先が震え、細剣を取り落としかける。


彼女は左手で短い拘束鎖を掴み、僕の右肘へ回した。


成人盾列側へ鎖を渡し、自分も身体を後ろへ倒して引く。


そして僕を見た。


「次も、一緒に帰る」


音が戻った。


遠く聞こえていた鎖の軋みも、盾列の掛け声も、ティアナの荒い呼吸も、急に近くなる。


青灰色の視界が開いた。


僕はアルト・ロウェル。


十六歳。


フィアがいる。


ティアナがいる。


レグルスがいる。


セルフィナがいる。


四人とも生きている。


追撃して殺した記憶は偽物だ。


レイシアを殺した光景も幻だ。


人間と精霊は対象外。


誰も殺したくない。


僕は死にたくない。


レイシアとの次の面会へ帰りたい。


孤児院へ報告する言葉を決めて、指輪を一緒に選びたい。


「フィア……ティアナ、レグルス、セルフィナ」


四人の姿が、偽記憶の死体ではなく、今ここに立つ現実として見えた。


「生きてる」


《魔剣サタン》が止まった。


一呼吸だけ、右腕が僕のものになる。


けれど、左腕の黒い契約紋章が飢えを広げた。


声も記録も約束も、空白へ沈めようとする圧力。


周囲に残る自由魔素へ、黒銀色の外殻が手を伸ばす。


人間と精霊は対象外。


その境界だけは渡さない。


次に右上腕の赤黒い契約紋様が激しく脈打った。


痛み。


恐怖。


騙されていた衝撃。


それらを怒りへ変え、全員を敵として排除しろという命令が身体へ流れ込む。


違う。


これは僕の判断じゃない。


上胸部の暗紫色の契約紋様が締まる。


レイシアを失う。


仲間に捨てられる。


未来を奪われる。


だからレイシアだけを選び、他の全てを排除しろという偽の意味が、鎧の継ぎ目へ縫い込まれていく。


レイシアは誰かの所有物じゃない。


みんなを捨てる理由にもならない。


三つの紋様は別々の場所にあった。


融合していない。


それでも三方向から押しつけられた反応が重なり、僕の身体主導権を再び奪う。


「動く……また、動きます!」


《魔剣サタン》が持ち上がった。


レグルスの風が剣筋を引く。


フィアの鎖が右肘を止める。


セルフィナの三本の索が左肩と腰を引く。


ティアナの根が両脚を石床へ縛り、ローディンと成人騎士が中央胴鎖を停止杭へ固定する。


ガイ団長の四本の腕が大剣を押し当てた。


背後では成人盾列が重なる。


根が軋む。


索が伸びる。


停止杭が一本、石床から僅かに浮いた。


それでも全ては切れなかった。


《魔剣サタン》の動きが数呼吸だけ鈍る。


ガイ団長の後方を捉える面が、五人と盾列の位置を確かめた。


「左右へ退け!」


成人盾列が二つに分かれる。


五人も拘束を残したまま、振り下ろされる大剣の軌道から身体を外した。


ガイ団長が大剣を構え直す。


本来の両腕が柄を握った。


三本目の腕がその上へ重なり、四本目が大剣の背へ添えられる。


灰黒色の両脚が開き、踵が石床へ沈む。


僕は白い髪の隙間から、ガイ団長を見た。


灰黒色の兜、その前方の視界と目が合う。


「アルト」


「はい」


別れの返事じゃない。


僕はまだ、生きて帰ることを諦めていない。


ガイ団長の四本の腕へ、全身の重さが集まった。


「換装固有技《四腕重断》」


大剣が頭上から落ちてくる。


どこを狙っているのか、僕には分からなかった。


ガイ団長の四本の腕が最大の一撃を振り下ろし、演武場全体を揺らす衝撃が、僕の視界を白く塗り潰した。

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


 下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品の応援をお願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークといただけると本当に嬉しいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。