表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/177

第162話 奥へ進む六人

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!



救助した捕虜が後方へ運ばれていく横で、僕たちは、止めなければならない管と止めてはいけない管を見分けようとしていた。


石造りの壁から突き出した三本の金属管が、頭上の太い外装管へまとめられている。


細い二本には水滴が浮かび、中央の太い管だけが一定の間隔で低く震えていた。


「担架、通ります」


成人救護員の声に合わせ、衰弱した捕虜が主通路を後方へ運ばれていく。


保温布の下から見えた手首には、古い拘束痕が残っていた。


僕たちは壁際へ寄ったが、成人盾列は保守区画の入口を空けない。盾の向きを変え、担架の幅と入口の両方を守っている。


「細い管をまとめて止めることはできません」


成人医療員が、旧構造図の上へ指を置いた。


「この番号は収容区画の通気設備です。空気だけではありません。最低限の熱、水、排気、区画内の圧力まで同じ系統に依存しています」


「未確認区画に、まだ拘束者がいる可能性は?」


雷虎成人封印隊長が尋ねた。


「否定できません。流れが続いている以上、一括停止は生命に関わります」


答えを聞いた隊長は、すぐに記録官へ向いた。


「生命維持線の一括遮断を禁止。中枢側だけを切り離す」


「記録しました」


太い管には、欠けた星を内側へ向けた区分印が打たれていた。


深部へ熱材と魔力器材を送る、中枢設備側の供給線だ。


何を動かしているのかまでは分からない。


ただ、外縁の管が冷えていたのに対し、この管は今も金属の奥から重い振動を返している。


成人輸送記録官が圧力札を一枚ずつ見比べた。


「二系統は外装だけでなく、戻り弁まで共有しています。入口側の弁を閉じても、深部から生命維持線へ流れが戻る構造です」


「逆に太い管を壊せば?」


レグルスが尋ねる。


「戻り側の圧力が細管へ流れ込みます。収容区画の管を破裂させる可能性があります」


「つまり、ここからまとめて止めるのは論外か」


レグルスは紫の瞳を細めた。


「深部側の手動弁を分ける必要があります」


土亀の成人構造騎士が、壁脇の狭い入口を示した。


旧構造図では、輸送管分岐保守室と記されている場所だった。


成人封印騎士と構造騎士が先に入る。


床板、天井、点検板、管の裏側。灯具を動かしながら、見えない位置まで手鏡で確かめていく。


僕たちは成人盾列の後ろで待った。


数分後、二人が入口まで戻ってくる。


「内部に人影なし。露出した射出口、床の作動板もありません」


構造騎士は続けて、入口の真上を指した。


「ただし、旧図どおり圧力隔壁があります。管が破断した際、保守室を主通路から切り離す落下式です」


天井の溝には、分厚い鉄板の下端がわずかに見えていた。


「固定は?」


「外側の通行扉と違い、こちら側から完全には固定できません。深部側の解放機構が優先されます。停止杭を差し込める位置も、落下路の外側だけです」


見落とされていた危険ではない。


構造騎士は隔壁の位置と落下幅を記録板へ書き込み、赤い確認札を入口へ掛けた。


ここまで通ってきた隔壁には、今も鉄楔と停止杭、留め縄が残されている。


だが、目の前にあるのは通行扉ではなく、管の事故を一室へ閉じ込めるための別設備だった。


雷虎成人封印隊長は少し考え、命令を下した。


「成人盾列は入口を保持。封印、構造担当は敷居の外から監督。限定作業列は六人全員で入室し、確認済みの範囲だけを照合する」


僕たちが志願したわけではない。


成人騎士を追い越したわけでもない。


先に安全確認を終えた成人隊の命令で、僕たちはその内側へ入った。


保守室は狭かった。


六人が立てば、身体の向きを変えるにも声を掛け合う必要がある。


ローディンが最後に入り、僕と入口の間へ立った。


「アルト。見るのは印と番号だけだ。左腕は近づけるな」


「はい」


治療布に包まれた左腕を身体へ寄せる。


黒銀色の封魔具も、外側と内側の固定もそのままだ。


指先には鈍い震えが残り、壁へ近づけなくても管の振動と感覚が重なるような不快さがあった。


僕は右手で、細管の保守番号を示した。


「この番号は、中央器成院の器成派区分ではありません。欠けた星の向きも、第五環の帰還票と同じです」


成人記録官が入口の外から番号を書き取る。


セルフィナは管の下へしゃがみ、結露を受ける溝を見た。


「こちらの水滴だけ、一定ではありません。流れが弱くなったあと、また増えています」


特別な力を使ったわけではない。


翡翠色の瞳で水滴を追い、指を触れずに間隔を数えているだけだった。


フィアも金髪を耳へ掛け、管へ顔を近づける。


「奥から空気が戻る時だけ、薄い板が鳴っています。人の呼吸とは言えないけど、流れは止まっていません」


「支持枠は二本で共通です」


ティアナが床と壁の接合部を見比べる。


「ここを外すと、細い管まで荷重を失います。局所的に分けるなら、もう一つ奥の支点が必要です」


レグルスは点検板の留め具と、身体を退けられる幅を測っていた。


「開けるとしても上側だけだ。下を外したら支持枠に当たる。もっとも、成人破砕担当の許可が出るまでは触れないが」


誰も管を切らない。


点検板も開けない。


僕たちがしているのは、成人側が次の判断を下すための限定照合だけだった。


やがて、奥の壁に半分隠れた戻り弁が見つかった。


細管と太管から伸びた二本が、その先で一つへ合流している。


「入口側だけでは分離できない」


ローディンが記録板へ時刻を書き込んだ。


「深部側の手動弁まで確認が必要、と」


その時、主通路から声が届いた。


「第二担架列、通過します」


成人封印隊長が即座に命じる。


「限定作業列、手を止めろ。その場で待機」


僕たちは壁から離れた。


外では成人盾列が入口を保持したまま、担架を通すために身体と盾の角度を変えている。


捕虜を運ぶ成人救護員の足音が近づいた。


苦しそうな咳。


担架を支える木枠の軋み。


それでも列は乱れず、決められた間隔で後方へ進んでいく。


一台目が入口前を過ぎた。


二台目が続く。


その瞬間だった。


壁の奥で、硬い留め具が外れる音がした。


続いて、頭上を鎖が走る。


「隔壁!」


構造騎士の叫びと、成人盾役が停止杭を押し込む音が重なった。


僕が振り返った時には、天井の鉄板が落ち始めていた。


盾列は入口にいる。


誰も持ち場を離れていない。


差し込まれた停止杭が鉄板の外縁へ噛み、落下を一瞬だけ鈍らせる。


だが、それは管の破断さえ一室へ封じるための重量だった。


金属が悲鳴を上げる。


成人盾役が腕を引き戻した直後、隔壁が石床へ落ちた。


腹の底まで響く衝撃が走った。


灯具が揺れ、天井から細かな粉塵が落ちる。


爆発はなかった。


床も崩れない。


担架も、成人騎士も隔壁には巻き込まれていない。


ただ、さっきまで見えていた成人盾列が、灰色の鉄板に置き換わっていた。


「隔壁が落ちても命令系統は消えない。全員、停止。勝手に奥へ進むな」


ローディンの声が、衝撃の余韻を断ち切った。


「点呼。アルト」


「います。負傷はありません」


左腕は痛むが、治療布に裂け目はない。


黒銀色の封魔具にも破損はなく、二重固定も外れていなかった。


肩の手前で止まっている黒い紋章にも、変化はない。


「フィア」


「います。右腕も変わりません」


「ティアナ」


「異常ありません」


「レグルス」


「無事だ」


「セルフィナ」


「ここにいます」


最後にローディン自身が記録板へ印を入れる。


六人全員。


重傷者はいない。


ローディンは隔壁へ近づき、拳の骨で決まった回数を叩いた。


三回。


間を置いて二回。


しばらくして、向こう側から同じ数の音が返ってきた。


成人隊は健在だ。


僕たちが生きていることも伝わった。


けれど、隔壁の脇には捕虜区画へ続く細管が通っている。


外から強引に破砕すれば、その衝撃で生命維持線を潰しかねない。


成人側がすぐに壊そうとしないのは、僕たちを見捨てたからではない。


隔壁の向こうでも、救助するべき命を守りながら解除手順を探している。


「細管の流れは?」


ローディンが尋ねた。


セルフィナが溝へ視線を落とす。


「まだ続いています。水滴の間隔も、落ちる前と大きくは変わっていません」


「中枢側は?」


レグルスが太管へ耳を寄せず、床へ伝わる振動を確かめた。


「止まっていない。むしろ深部側へ引かれている」


来た道は閉ざされた。


それでも、保守室の奥にある細い通路だけは開いたままだ。


灯具の光は数歩先までしか届かず、その向こうは深部へ続く暗がりに沈んでいた。


「担架が通る瞬間を選んだんだ」


僕は落ちた隔壁を見た。


成人盾列がいなくなる瞬間ではない。


盾の向きと通路の幅が、救助のために変わる一瞬だ。


星門派は捕虜を置いただけではなかった。


王国側が見捨てず、正しい手順で後方へ運ぶことまで知ったうえで、この隔壁を使った。


新しい罠を見落としたのではない。


存在を確認していた五百年前の設備を、敵が最も効果的な時機で動かしたのだ。


「推測は記録する。だが、目的までは決めつけるな」


ローディンが言った。


「殺すためか、誘うためか、時間を稼ぐためかは分からん。命令が届くまで動かない」


僕たちは深部へ向き直らなかった。


フィアも剣へ手を伸ばさず、ティアナも隔壁を支えようとはしない。レグルスは点検板から離れ、セルフィナも暗い通路へ何かを送ろうとはしなかった。


隔壁の向こうから、再び金属を叩く音が届く。


こちらも応答する。


まだ、繋がっている。


それでも、成人盾列の姿は見えない。


捕虜の呼吸を守る細管だけが、落ちた隔壁を貫いて外側へ続いていた。


僕たち六人が勝手に奥へ進んだのではない――救助の列が通った一瞬に、星門派が戦場そのものを切り分け、僕たちのいる側だけを『奥』へ変えた。

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


 下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品の応援をお願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークといただけると本当に嬉しいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ