表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

160/175

第160話 第五環の門

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!



第五環へ続く最後の折れ階段の先に、旧構造図と同じ幅の門が待っていた。


地上の保守扉よりも厚く、荷車が一台通れるほどの幅がある。


五百年前の地下遺構へ組み込まれた灰色の重量扉には、星冠教団の名も、礼拝の言葉も刻まれていない。


あるのは保守区画番号と、端の欠けた星。


そして、三枚の金属板を重ねるための認証枠だけだった。


「隊列停止」


雷虎成人封印隊長の命令で、先頭の成人盾列が足を止める。


僕たち限定作業列も、前後を成人騎士に囲まれたまま停止した。


左腕を身体の近くへ寄せる。


治療布の上には、黒銀色の封魔具が二重に固定されている。長い階段を下りてきたせいか、指先の震えは地上にいた時より少し強くなっていた。


それでも、治療布に裂けはない。


封魔具にも加熱や変形は起きていなかった。


「位置を照合する」


土亀の構造騎士が、五百年前の旧構造図を硬い記録板の上へ広げた。


別の騎士が定規を門の両端へ当てる。


「南側正規帰還路の終端。第五環外縁、認証門。位置は一致」


「門幅、旧図と差異なし」


「厚みも記録範囲内。蝶番は内側右方向」


構造騎士の一人が床へ膝をつき、石の継ぎ目を目視していく。


「荷重線を確認。門の開閉による沈下痕なし。緊急隔壁までの距離も旧図と一致します」


成人封印騎士は門脇の物理弁へ確認札を付けた。


「導管圧の逃がし弁、戻り弁、外側認証枠を確認。内側操作部は門の向こうです。現時点では復路認証未確認」


一致する項目が増えるほど、門が本物だという事実だけが重くなっていく。


アーサー団長は認証枠から距離を取ったまま、旧構造図と実物を見比べた。


腰には聖剣エクスカリバーがあるが、その柄へ手をかけることはない。


「一致したのは、ここが本物の門だということだけです。安全だという意味ではありません」


誰も反論しなかった。


本物の道だからこそ、敵は構造も開閉手順も知っている。


それは、この門へ到達する前から全員が共有していた事実だった。


成人封印騎士が金属盆へ三枚の封印鍵を並べる。


「切り欠き番号、帰還票および旧認証記録と一致」


「方向印、第五環内側」


「重ね順、二、一、三」


三枚の鍵が、互いの切り欠きを噛み合わせるように重ねられた。


僕は確認線の外側から、門の脇にある区分印を見る。


欠けた星の向きは帰還票と同じだった。


その下に刻まれた短い線は、中央器成院で見たものとは逆方向を向いている。


「アルト。確認対象は区分印だけだ」


ローディンが念を押す。


「はい」


僕は認証枠へ近づかず、見える範囲だけを確かめた。


「中央器成院の器成派印ではありません。星門派の区分印です」


ローディンが僕の発言を記録板へ書き込む。


最終判断は成人封印担当のものだ。


僕の左腕も、封魔具も、この門を開くためには使われない。


「限定照合を記録。鍵を入れる」


成人封印騎士が三枚の鍵を認証枠へ差し込んだ。


一人が鍵を保持し、もう一人が門脇の物理弁を規定の位置まで回す。


金属同士が噛み合う、低い音が響いた。


扉の奥で重い留め具が外れる。


「鍵認証、正常。ただし安全未承認」


厚い門が、床の溝に沿ってゆっくりと動き始めた。


開いた隙間から冷たい空気が流れ出す。


その先に見えたのは、荷車用の溝が中央を走る石造りの認証廊だった。


左右には低い遮蔽物。


壁には人員を数えるための床板と、閉じた側面扉。


天井近くを細い導管が走り、奥には中央通路へ続く開口部がある。


人影は見えない。


だが、灯具には火が残っていた。


無人ではない。


「門を固定」


鉄楔が扉の下へ打ち込まれる。


停止部へ太い杭を差し、留め縄を門外の固定環へ結ぶ。


土亀の構造騎士が床と蝶番側の荷重を再確認する。


「門外に封印騎士二名、構造騎士一名を残す。内側操作部が確認できるまで後続全員は入れない」


「成人盾列、進入」


盾を構えた成人騎士たちが、間隔を保って門を越えた。


その後ろへ封印騎士と構造騎士が続く。


僕たちには、まだ移動命令が出ない。


静寂の中、金属靴が石床へ触れる音だけが遠ざかっていく。


その直後だった。


鋭い音が、認証廊の奥から三つ重なった。


鉄の矢が成人盾列へ飛ぶ。


一発目が盾の中央へ突き刺さり、二発目は上端で弾かれた。三発目が石壁へ当たり、乾いた音を響かせる。


「射出口、正面奥!」


成人盾役が盾を寄せ、隙間を閉じる。


さらに短い鉄弾が二発飛んできた。


盾列は崩れない。


先頭が一歩進めば、後列も同じ幅だけ進む。


敵の射撃は続いたが、その間隔は奇妙なほど長かった。


成人騎士を押し返す密度ではない。


かといって、単なる威嚇でもない。


こちらが立ち止まれば撃たず、進めば一度だけ撃ってくる。


「右の遮蔽物に二名。奥に三名以上」


成人盾役の報告が届く。


低い遮蔽物の向こうから、暗い外套を着た男たちが姿を現した。


胸元にあるのは、門と同じ星門派の区分印。


一人が物理式の弩を持ち、二人が短槍と盾を構えている。


本部の門を守る人数としては、あまりにも少ない。


「盾列、前進。隊形を崩すな」


成人騎士たちは走らない。


盾で射線を塞ぎながら、一定の速度で距離を詰めていく。


星門派の守備役は、弩をもう一度だけ放った。


矢が盾へ当たった瞬間、短槍を持つ二人が遮蔽物から出る。


槍先が盾の縁を狙う。


成人盾役が正面で受け、隣の騎士が敵の柄を押さえ込んだ。


もう一人の星門派守備役は、踏み込む直前に動きを止めた。


背後から短い笛の音がしたからだ。


三人は同時に後退へ移った。


弩を持つ男が先に奥の開口部へ走り、短槍の二人が数歩ごとに振り返る。


一人だけが成人騎士に槍を押さえられ、石床へ倒された。


「生存拘束!」


成人騎士が腕を背へ回し、普通の拘束具を掛ける。


倒れた男は抵抗を続けたが、何も話さなかった。


「この場では尋問しない。地上受領線へ送れ」


残る守備役は、中央通路の奥へ消えていった。


追えば追いつけそうな速度だった。


成人前衛の一人が踏み出しかける。


「追撃しない」


封印隊長の声が、認証廊を打った。


「隔壁、復路、地上連絡を先に取る」


成人騎士はただちに止まり、盾列を戻した。


敵が消えた中央通路へ、誰も飛び込まない。


先行確認が終わり、僕たち限定作業列にも門内への進入命令が出た。


フィアは右腕の簡易固定具を残したまま、剣へ手をかけずに歩く。


ティアナは成人構造騎士の後ろ。


レグルスも破砕役より前へ出ない。


セルフィナは周囲を観察しているが、閉じた側面扉へ近づこうとはしなかった。


ローディンは、僕のすぐ後ろにいる。


僕たちは六人だけで動いているのではない。


前後左右には、成人封印隊の隊列が維持されていた。


門を越えたところで、ローディンが僕の左手を見た。


「震えが増えている」


「階段を下りた時から少し。でも、感覚はあります」


僕が指を曲げる。


やはり反応はわずかに遅い。


「悪化すれば止める」


「はい」


門内の記録卓には、破られた紙の切れ端だけが残されていた。


重要な記録は持ち去られている。


壁際に寝具はなく、食料箱も空だった。


守備役がここで長く持ちこたえる準備をしていた形跡がない。


土亀の構造騎士が遮蔽物の根元へ触れずに目を凝らす。


「固定杭が浅い。これは恒久防衛用ではありません」


成人記録官が床を示した。


奥へ向かう足跡が、幾つも同じ方向へ重なっている。


慌てて散った跡ではない。


横道へ向かう足跡はなく、深部へ続く中央通路だけが開けられていた。


左右の側面扉は、どちらも内側から閉じられている。


「門を守る配置ではないな」


封印隊長が呟いた時、地上側から成人伝令が入ってきた。


手には折り畳まれた紙札がある。


「水蝶捕虜救助線より報告。外環側第一認証区画で星門派守備役と接触。短時間の抵抗後、収容区画方向へ後退。追撃せず、入口を確保しています」


別の伝令も、その直後に到着した。


「灰鬼核心進入線より報告。守備役は二度の接触でいずれも後退。中央側通路のみ開放。側道は閉鎖されています」


僕たちの経路だけではない。


水蝶の救助線でも。


灰鬼の核心進入線でも。


敵は同じように、少しだけ抵抗してから深部へ下がっている。


二人目の伝令が、ガイ団長からの言葉をそのまま伝えた。


「門を守ってるんじゃねえ。追わせるために、届きそうな背中だけ残してやがる」


僕は、敵が消えた中央通路を見る。


射撃の間隔。


浅く固定された遮蔽物。


持ち出された記録。


深部へ揃った足跡。


そして、複数の侵入線で繰り返される同じ後退。


「逃げているんじゃなくて、僕たちが追える速さで下がっているんですね」


ローディンが僕の言葉を記録する。


成人封印隊長は頷いたが、その先を断定しなかった。


「どこへ誘っているかは分からない。分断か、時間稼ぎか、別の区画への集結か。現時点で決めつけるな」


地上統括指揮所へ送る報告が作られる。


誘導の可能性。


三作戦線で同じ後退を確認。


追撃停止。


退路維持。


紙札は成人伝令の手で、来た道を地上へ戻される。


門の内側にも成人封印騎士が残った。


隔壁前には構造騎士が付き、鉄楔と停止杭が並べられる。


通過した認証廊へ番号札が置かれ、次の伝令位置が決められた。


さらに後方では、光龍騎士団が星冠塔の民間利用区画との境界を保持している。


地下から誰かが出てきても、敵と決めつけて斬ることはない。


投降者かもしれない。


収容者かもしれない。


地上職員へ紛れていた潜伏信徒かもしれない。


だからこそ、身元確認と受領線を残す必要があった。


やがて地上から、オルフェンの確認書が届いた。


追撃禁止。


救護線と核心進入線を重ねない。


退路担当を前線へ回さない。


一区画ずつ地上との接続を確認したうえで進む。


封印隊長が紙を折り、記録官へ戻す。


「次区画へ進む。先行は成人盾列。限定作業列は中央を維持」


敵の背中はもう見えない。


けれど、追えば届くように残された道だけが、深部へ口を開けていた。


僕たちはその誘いを知らずに踏むのではない。


知ったうえで、帰るための線を一つずつ残して前へ進む。


ローディンが僕の位置を確認し、フィアたちも成人隊の内側で足並みを揃えた。


追えば届きそうな背中を追わず、僕たちは退路を一本ずつ地上へ繋いだまま、誘われた深部へ進んだ。

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


 下にある⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品の応援をお願いいたします。


 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークといただけると本当に嬉しいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ