第145話 星冠支部突入
「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!
例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』
皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!
中央器成院の正門へ最初に触れたのは、僕たち新人の武器ではなく、炎獅子の成人騎士が押す破城槌だった。
北西出動庭を発ってから、およそ一刻。
合同ドラフトから四十七日、雪境から救出されて二十日目の午前中に、僕たちはラウゼン丘陵へ到達していた。
丘の中腹に建つ中央器成院は、魔王の城には見えなかった。
灰色の石で造られた個室棟。外周を囲う低い石壁。屋根から突き出す複数の煙突。荷車が通れる裏門。
元は病人を守るための旧王立第七施療院だった。
そこへ鉄帯を巻いた正門と窓を塞ぐ遮蔽板、外壁の見張り台が付け足されている。
人を治すための建物を、外から見えないように閉じた形だった。
丘陵へ来たのは七騎士団の全軍ではない。
各団が任務へ必要な成人選抜隊を出し、残留隊と十三の専門騎士団が王国各地の防衛を維持している。
それでも、正門前へ並んだ成人騎士たちの厚みは、学院の模擬戦とはまるで違った。
「屋根西端、弩二。二階中央窓、弓三」
風鷹騎士団の観測旗が、丘の上で鋭く振られた。
建物の中まで見えているわけではない。
屋根の縁から覗いた弩の先端と、遮蔽板の隙間で動いた影を、一つずつ数えた報告だ。
統合指揮所から返答の旗が上がる。
騎士団長統括オルフェン・レグナスは、丘陵後方の天幕から全体を動かしていた。前線へ声を張り上げる代わりに、色旗と伝令が各団長の命令線を繋いでいる。
炎獅子の成人盾列が一歩進んだ。
膝から肩までを覆う大盾が、隙間なく傾けられる。
次の瞬間、二階の遮蔽板が跳ね上がった。
弦音が重なった。
矢が盾へ突き立ち、乾いた音ではなく、厚い木板を内側まで震わせる鈍音を響かせる。
壁上から落とされた石が盾の上端を叩き、成人騎士の兜を掠めた。
それでも列は走らない。
盾の角度を変え、射線をずらし、破城槌を押す成人騎士たちと歩幅を合わせる。
太い丸太を鉄輪で締めた破城槌には、車輪も魔法もなかった。
左右の騎士が肩と腕で重さを押し、前方の八人が吊り縄を引く。
土を踏み締めた長靴が、柔らかい丘の地面へ深く沈んだ。
「一撃目、入れるぞ!」
成人隊長の声で、破城班が一斉に腰を落とした。
丸太が振り子のように後退する。
盾列が左右へ半歩だけ開いた。
ドォン――!
鉄の頭が正門を打ち、石壁まで震えた。
僕の右脚へ、地面を伝った衝撃が届く。
痺れとは違う、本物の振動だった。
正門の表面から古い塗料が剥がれ落ちる。
だが、門は開かない。
木扉の表には幾本もの鉄帯が渡され、蝶番は石枠の内側へ深く埋め込まれている。扉の向こうには太い横木まで通されているらしい。
「二撃目!」
破城槌が再び引かれた。
その途中で、盾列の一人が肩を揺らした。
盾の隙間を抜けた矢が、外套の下の上腕を掠めていた。血は少量だったが、本人が何も言う前に隣の成人騎士が盾を引き継ぐ。
負傷者は意地を張らず、列の後ろへ下がった。
水蝶の青い搬送旗が上がり、待機していた救護員が受け取る。
前列は一人減ったまま戦わない。
次の騎士が穴を塞いでから、破城槌が門を打った。
一撃目より深い音がした。
内側の横木が軋んだものの、右の蝶番と鉄帯がまだ衝撃を分散している。
炎獅子の成人隊長が槍を横へ倒した。
その合図で、第二列から白金の髪が進み出る。
レグルスは銀槍を両手で支え、成人盾列の内側へ入った。
「右蝶番から上へ二本目。鉄帯と石枠の継ぎ目だけだ」
成人隊長が指先で狙いを示す。
「承知しました。門全体へは広げません」
レグルスは短く答えた。
弩の弦が鳴る。
前方の盾が重なり、同時に別の成人騎士が側面へ盾を立てた。
矢の一本が盾の縁へ刺さり、レグルスの頬から指二本分ほど離れた場所で止まる。
彼は目を閉じなかった。
銀槍の穂先を、歪み始めた鉄帯の継ぎ目へ向ける。
「風よ、我が銀槍に沿って螺旋を結び、重なる守りの継ぎ目へ潜れ。貫く一点を押し広げ、閉ざされた標への道を開け――第二階位・風魔法《螺旋開甲》」
槍に巻き付いた風が、広がらずに細く絞られた。
穂先が触れたのは一点だけだった。
金属を引き裂く高い音と、石を内側から削る低い音が重なる。
鉄帯と蝶番の間へ風の螺旋が潜り込み、わずかな隙間を押し広げた。
石粉がレグルスの肩へ降る。
門はまだ立っていた。
レグルスが一人で吹き飛ばしたわけではない。
だが、衝撃を逃がしていた継ぎ目が、一か所だけ開いていた。
「破城班、三撃目!」
レグルスが盾列の後ろへ下がる。
肩が小さく上下し、銀槍を握る腕にも一度だけ震えが走った。それでも彼の紫の目は、門ではなく後続の位置を確かめていた。
破城槌が大きく引かれる。
成人騎士たちの踵が土を抉った。
「打て!」
鉄頭が開いた継ぎ目へ食い込んだ。
門全体が一度こちらへ膨らみ、次いで内側へ折れる。
蝶番が石枠から剥がれる音。横木が中央から割れる音。鉄帯が引き延ばされる音。
それらが一つの轟音になった。
正門が内側へ倒れ、舞い上がった埃の向こうから信徒たちが現れた。
炎獅子の成人騎士は、そのまま突撃しなかった。
最初に盾列が入る。
倒れた門板を越え、左右へ展開し、後続の射線と退路を作る。
「武器を捨てろ! 王国騎士団だ!」
返ってきたのは槍だった。
正面の信徒が盾の隙間を狙って突く。成人騎士は受け止めるのではなく、盾を斜めに滑らせて穂先を外した。
隣の騎士が槍の柄を脇へ挟み、強く捻る。
信徒の手から武器が落ちた。
剣は首へ向かわない。
石突が膝裏を払って床へ倒し、腕を背中へ回して普通の拘束具を掛ける。
右手から短剣を振り下ろした別の信徒には、炎獅子の剣の腹が手首へ打ち込まれた。
短剣が石床を滑る。
成人騎士は追撃せず、武器だけを蹴り離した。
「手を開け。両手だ」
信徒は歯を食いしばったまま、空になった両手を見せた。
抵抗を続ける者もいれば、壁際で棍棒を落とす者もいた。恐怖で動けなくなった若い信徒もいる。
全員が同じ顔で死ぬまで向かってくるわけではない。
「投降一。右手首に打撲。短剣一本」
裏門側から入った光龍騎士が、拘束された信徒のそばへ番号札を置く。
位置、所持品、負傷状態が紙へ記される。
「こちら三名。二名投降、一名抵抗後に拘束。全員生存」
別の記録が中央回廊へ送られた。
叫び声と金属音が続く中でも、誰をどこで拘束したのかが失われない。
北側外壁で銀色の旗が二度振られた。
光龍の第二侵入線と正門隊の間に、地上個室棟から逃げ出した信徒が流れ込んだらしい。
統合指揮所の旗が返る。
待機していたゼファルが動いた。
長身を屈めて北側へ走り、二人の銀鷲成人騎士と共に外壁の切れ目へ入る。
竜人の翼も炎も現れない。
彼は一人で逃走者を追わず、指定された線へ着くと盾役の位置を直し、光龍の隊長へ短く報告した。
空いた持ち場へ入り、塞いだら止まる。
それが遊撃だった。
正門が確保されると、僕たち灰鬼の進入札が上がった。
ガイ団長を先頭に、成人騎士が地上個室棟へ入っていく。
僕はその後方だった。
右腰には普通の片手剣がある。
左腕の治療布も、黒銀色の封魔具も外していない。二重固定は朝と同じ位置で締まり、黒い紋章も肩の手前から動いていなかった。
倒れた門を跨いだ時、右脚の痺れがわずかに強くなる。
僕が歩幅を狭めると、前を行くローディンさんも速度を一段落とした。
急げという声はなかった。
地上個室棟の廊下では、戦う列と運ぶ道が分けられていた。
赤札の側を制圧隊が進み、緑札の側は空けられている。
ティアナは土亀の成人構造班と一緒に、倒れた棚や扉の幅を測っていた。
「この角、担架だけなら通る。でも台車は曲がれないよ」
彼女は侵入方向ではなく、外へ戻る向きから廊下を見ていた。
成人構造騎士が壁際の長椅子を外し、普通の縄で搬出線を示す。
「負傷騎士は南廊下。捕縛者は中庭へ。収容者の搬出路とは重ねない」
「うん。地下出口が決まったら、緑札をそこまで繋ぐね」
ティアナは一枚目の札を出口側へ置いた。
まだ見つかっていない収容者が、ここを通って外へ出ることを先に決める札だった。
個室棟の奥で、セルフィナが立ち止まった。
淡い銀緑色の髪の先が、床から上がった風にわずかに揺れている。
彼女は精霊を床下へ入れなかった。
周囲に留まる風精霊たちが、廊下の一角だけを避けている様子と、自分の頬へ触れる空気を確かめる。
「この床板の下から、温かい空気が上がっています。ただし、地下室があるとまでは断定できません」
セルフィナは自分の記録板へそう書いた。
少し離れた場所では、ユノが低い姿勢で床を見ていた。
獣耳が物音の方角を追い、指は壁際の泥を掬う。
「こっちは荷車の泥。外の斜路と同じ粒だけど、廊下の途中で跡が消えてる」
ユノは鼻だけに頼らず、棚の脚と床の傷へ目を移した。
「擦れ跡が新しい。こいつ、何度も動かしてるな。けど、下へ続くかは未確認」
二人の記録板が、成人斥候隊長の前へ並べられた。
不自然な温風。
荷車の泥。
頻繁に動かされた棚。
別々の観測が同じ位置で重なり、ようやく地下階段の候補になる。
ガイ団長が棚へ手を掛ける前に、土亀の成人構造騎士が壁と床を叩いて確かめた。
成人封印担当が、枠へ刻まれた細い術式線を目で追う。
安全が確認されてから、灰鬼の成人騎士三人が棚を横へ滑らせた。
背後から、石造りの偽壁が現れた。
隠された取っ手を引くと、湿った熱気が廊下へ流れ出す。
階段は地下へ向かっていた。
「灰鬼、成人一番隊から入る」
ガイ団長が大剣の柄へ手を置いた。
抜くより先に、足元と天井を見ている。
「新人は三列目より前に出るな。地下出口はここだ。見つけた奴は、必ずここへ戻す」
短い命令の後、ガイ団長と灰鬼成人騎士が暗い階段へ降りた。
ガルドが続く。
飾りのない大盾が、階段の幅ぎりぎりだった。
彼は肩幅を斜めにし、盾を壁へ擦らせずに向きを変える。背後には成人封印担当、ローディンさん、フィア、僕の順で列が繋がった。
セシリアさんは地下へ深追いしない。
階段上へ第一救護点を置き、灰金色の髪を耳へ掛けながら、運び込まれた負傷者を止める位置に残った。
「動けても、私が止めたら交代です。地下から来る人も、地下へ行く人も同じです」
ガルドが一度だけ頷いた。
「了解した」
地下の空気は温かく、金属の匂いが濃かった。
古い施療院の石壁へ、新しい金属導管が何本も這っている。
床には細い溝が掘られ、赤黒い制御紐が留め具で固定されていた。
曲がり角の向こうから棍棒を持った信徒が飛び出した。
ガルドの盾が前へ出る。
衝突音が狭い地下通路を叩いた。
盾は相手を吹き飛ばさず、棍棒ごと壁際へ押し止める。
横から入った成人騎士が手首を外へ返し、武器を落とさせた。
もう一人が足を払う。
「抵抗停止を確認。拘束する」
三人の動きは短く、僕が剣へ触れる前に終わった。
信徒の呼吸を確かめた成人騎士が、その場へ拘束位置札を残す。
先頭はガイ団長へ戻り、列は再び進んだ。
地下隔離区画の最奥で、通路が急に広がった。
そこにいたのは、武装した信徒ではなかった。
寝台と拘束椅子へ固定された人たちだった。
見える範囲で八人。
成人騎士は壁へ振られた番号ではなく、一人ずつの胸が動いているかを数えた。
「八名確認。全員に呼吸あり。意識明瞭二、反応あり三、反応薄三」
赤黒い紐が手足の拘束具から伸び、床の金属板へ集まっている。
寝台の下には溝付きの導管が通され、その全てが部屋中央の大きな金属環へ繋がっていた。
捕虜の一人が、乾いた唇を動かした。
「止め……て……」
ガイ団長の視線が中央環から捕虜へ戻る。
「先に人だ。拘束具は勝手に外すな。繋がりを見ろ」
成人封印担当が最も近い寝台へ膝をついた。
金属具へ触れず、刻まれた線と紐の結び方を追う。
フィアも一歩だけ前へ出た。
その時、上方で金属の軋む音がした。
部屋を囲う観察廊の端に、司祭衣の信徒がいた。
成人騎士の警告より早く、その男は壁の操作輪へ両手を掛けた。
「手を離せ!」
灰鬼の投擲縄が男の腕へ絡む。
引かれた身体が床へ倒れ、操作輪から手が離れた。
だが、輪は一目盛りだけ回っていた。
止め金が落ちる。
床下で、幾つもの歯車が噛み合った。
ガン、ガン、ガン、と重い音が部屋を一周する。
赤黒い制御紐が一斉に張った。
捕虜たちの身体が寝台の上で強張る。
金属導管へ淡い光が走り、体外へ引き出された魔力が、血管を裏返したような線となって中央環へ流れ込んだ。
悲鳴にならない息が、八人分重なった。
中央環が受け取った魔力を床溝へ流す。
流れは一方通行ではなかった。
別の線が捕虜の拘束具へ戻り、再び身体の近くを通っている。
引き出して、集めて、戻す。
人の身体を端点にした循環だった。
「出力上昇。捕虜との接続が残っています!」
成人封印担当が叫ぶ。
部屋の外へ漏れた魔力が、地下出口へ続く通路へ流れ込んだ。
緑の搬出札が震える。
「土亀、分離線を入れる!」
成人構造隊が通路へ盾を立てた。
その内側へティアナが入る。
ガルドは中央環へ背を向け、大盾で彼女の正面を覆った。上の観察廊に残っていた信徒が投げた金属片が、盾へ当たって弾ける。
ティアナは床へ手を置いた。
「大地よ、根を束ね、守る命の道を囲み、侵す魔力の流れを分かて。味方の脈を内へ退け、敵より伸びる一筋だけを外へ残せ――第二階位・土・植物複合魔法《根界分離》」
石床が低く盛り上がった。
細い根が土の境界へ沿って走り、漏れ出した魔力の流れを搬出路から外側へ押し分ける。
巨大な壁ではない。
担架が通れる幅を残したまま、危険な流れだけを別の床溝へ逸らしていく。
緑札の置かれた道から震えが消えた。
だが、捕虜と中央環を繋ぐ導管は残っている。
ティアナはそれを壊さなかった。
詠唱を終えた肩が大きく上下し、土へ置いた指にも震えがあった。
「搬出路は分けたよ。でも、人と設備はまだ繋がってる」
「それでいい。そこまでだ」
土亀の成人騎士がティアナを境界の内側へ下げた。
フィアが剣を半ばまで抜いた。
雷は纏っていない。
澄んだ青い目が、捕虜から中央環へ伸びる線を追う。
一本ではなかった。
外へ引き出す接続線。中央へ送る制御線。身体へ戻る帰還線。
金属導管の同じ溝へ、三つの役割が重なっている。
フィアの手が止まった。
「指定できない」
成人封印担当が振り向く。
「何が見える」
「切れば止まる線と、切れば人へ返る線が重なっている。今は斬れない」
剣を止めたのは迷いではなかった。
見えないまま人へ繋がる線を切らないための判断だった。
フィアは刃を鞘へ戻さず、誰にも向けない角度で保持した。
成人封印担当が床の金属板を調べる。
雷虎騎士団の封印班も反対側から中央環へ近づいた。
その後ろに、長い金髪を高く束ねたアーサー団長が立つ。
青と白銀の甲冑。
腰には聖剣エクスカリバーがある。
けれど、その手は柄へ掛からなかった。
「中央環と八人の帰還線が同じ封印層へ入っています」
雷虎の成人騎士が報告する。
「中央だけを叩けば?」
「衝撃が帰還線へ流れます。焼却でも同じです。導管の熱と魔力が拘束部へ返る」
ガイ団長が大剣を抜かないまま言った。
「壊すな。いまは人間まで回路の一部だ」
強い一撃なら、中央環を割れるのかもしれない。
炎で溶かすことも、聖剣で断つこともできるのかもしれない。
だが、その力は捕虜の身体へ戻る。
地下ごと崩せば、八人は石の下だ。
力が足りないから使えないのではない。
救う相手がいるから、使ってはいけない。
僕は中央環へ流れる魔力を見た。
体外へ出ている。
一見すれば、第144話で決めた対象に近い。
左腕の奥で、冷たい圧迫感がわずかに強まった。
封魔具も黒い紋章も変化していない。
それでも、流れの向こうには八人分の呼吸があった。
淡い魔力は中央へ落ちた後も、細い帰還線を通じて捕虜へ続いている。
完全には分かれていない。
接続も切れていない。
「外へ出ている。でも、まだ人と繋がっている」
僕はローディンさんへ告げた。
左手の指が治療布の下で震える。
それでも、対象を変える理由にはならなかった。
「対象にできない」
「確認した。使用命令は出さない」
ローディンさんは即座に答えた。
成人封印担当も頷き、記録板の対象欄へ横線を引く。
僕が喰わないことで、作戦が止まったわけではない。
雷虎の封印班が接続順を調べる。
フィアが切断候補を見極める。
ティアナの分離線が搬出路を守る。
灰鬼成人隊は捕虜へ近づくための足場を確保し、アーサー団長は破壊ではなく解除の順序を待っていた。
中央環が、もう一度低く鳴った。
捕虜の一人が苦しげに息を吐く。
時間は残っている。
だが、無限ではない。
その時、制御廊の奥で扉が開いた。
白灰色の司祭衣を纏った痩身の男が、観察廊へ姿を現す。
胸元には、星の一角だけが欠けた承認印。
金属板へ刻まれた個人承認番号も、人員移送帳と封印材受領書に残されていたものと一致していた。
器成派の首領。
器成司祭長本人だった。
男は拘束された信徒も、苦しむ捕虜も見なかった。
視線は僕の左腕へ落ちた。
治療布。
黒銀色の封魔具。
その内側で肩の手前まで続く黒い紋章。
強制循環に繋がれた捕虜たちの向こうで、器成司祭長ヴァレク・サルディオは僕を見つけ、『完成前の器』と呼んだ。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
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