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『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


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第142話 七騎士団合同任務

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!



 七つの団旗が同じ作戦図を囲んだ時、学院長は教壇ではなく、騎士団長統括の席に立っていた。


 第百四十一話の翌日。


 合同ドラフトから四十五日、雪境での救出から十八日が過ぎた午前だった。


 王国選抜局の七騎合同作戦議場には、中央器成院の外観図と旧王立第七施療院時代の構造図が重ねて広げられている。


 図を囲むのは、水蝶、土亀、炎獅子、雷虎、風鷹、光龍、灰鬼。


 七騎士団の団旗だ。


 オルフェン学院長――騎士団長統括オルフェン・レグナスが中央に立つと、七人の団長が言葉もなく姿勢を正した。


 もう、学院長の正体に驚く者はいない。


 僕は作戦卓から少し離れた制限情報照合席に座っていた。


 左腕には治療布と黒銀色の封魔具。二重固定も維持され、黒い紋章は肩の手前で止まったままだ。


 指先の感覚は、まだ動きより半拍遅れる。


 右脚にも長く立った時の痺れが残っている。


 僕の席に作戦駒はなかった。


 ここへ参加しているのは、討伐隊員としてではない。


 器成派の資料にある「器」という語と、ベルゼバスから聞いた言葉の範囲を照合するためだった。


「始めよう」


 オルフェン統括の穏やかな声が議場へ通った。


 七人の団長が同時に頷く。


 大声ではない。


 それでも、誰も次の言葉を急がせなかった。


「最初に、投入規模を定める。七騎士団の全軍をラウゼン丘陵へ集めることはしない」


 作戦図の外側には王国全域の小さな地図が置かれていた。


 各地には、今も残る警戒区域と通常任務の札がある。


「各団は、今回の任務に必要な選抜部隊だけを出す。副団長、残留隊、十三の専門騎士団によって各地の防衛を維持する」


「炎獅子は突破班二隊と後続一隊を出せる」


 イグナシオ団長が即答した。


 大柄な身体を作戦卓へ寄せても、他の団長の図面を隠さない位置で止まる。


「だが、王都南部の即応隊は残す。そちらの防衛を薄くはせん」


「土亀も同様だ」


 ゴウセル団長が低く続けた。


「施工班を抜きすぎれば、既存の復旧任務が止まる。構造確認、撤退路施工、担架路維持に必要な数だけを選ぶ」


 他の団長も異論を出さなかった。


 七つの団旗が集まっていても、王国全体を空にする出陣ではない。


 オルフェン統括は中央器成院の図面へ手を置いた。


「作戦の第一目的は、施設内に収容されている人間の発見と救出だ」


 赤い印が置かれているのは、石造りの個室棟と地下隔離区画だった。


 人数も、生死も分からない。


 それでも、いないものとして攻撃することはできない。


「第二に、魔神顕現工程の停止。第三に、人員移送帳、命令書、封印記録、器材の保全。第四に、器成司祭長ヴァレク・サルディオの生存拘束」


 オルフェン統括の指が、首領推定位置の空欄で止まる。


「ヴァレクが抵抗を続け、収容者または作戦部隊の生命へ重大な危険を及ぼす場合に限り、成人指揮下で討伐を許可する」


「逃げた場合は?」


 シルフィ団長が問う。


 尊大な姿勢を崩してはいないが、視線は作戦範囲の外縁へ向いている。


「指定追跡線を越えない」


「風鷹が位置を捉えていても?」


「同じだ。収容者を残して首領を追うことは認めない」


 シルフィ団長は僅かに顎を引いた。


「承知したわ。見つけることと、どこまでも追うことは分けます」


「施設全体への焼却も禁止する」


 オルフェン統括の目がイグナシオ団長へ移った。


「当然だ!」


 議場へ豪快な声が響く。


「炎獅子は火を放って帰る騎士団ではない! 道を開き、後ろの者が通るまで保つ!」


「声量は作戦開始後に取っておけ」


 ガイ団長が面倒そうに言った。


「お前は少し声量を増やせ、ガイ!」


「地下で叫ぶと響いて邪魔だろ」


「あなたは声量より先に、その無精髭をどうにかしなさい」


 シルフィ団長の視線が、ガイ団長の顎へ一瞬だけ向く。


「作戦と関係あるか?」


「指揮官の身だしなみは部隊の士気に関係するわ」


「その議論は任務後にしてくれ」


 ギルバート団長が静かに止めた。


 慣れた仲裁だったが、そこで話を終わらせ、自分の視線を図面へ戻す。


 私的なやり取りは一往復だけだった。


「役割を置く」


 オルフェン統括が、土色の駒を施療院全体の基礎線へ置いた。


「土亀は構造維持。ゴウセル団長、旧台帳と現在の外観には差がある」


「内側に追加された遮蔽板と、地下からの温排水が確認されている」


 ゴウセル団長は、旧個室棟、搬入斜路、排水路の三か所へ細い札を置く。


「器成派が壁を増設していれば、荷重も変わる。外から見える支柱だけを信じることはできん」


「必要な撤退路は三本だ」


「正面門、裏の搬入斜路、東側排水路に沿う保守道。排水路そのものへ担架は通せない。隣接床を補強し、地上へ出る仮設路を作る」


 ゴウセル団長は大きな壁を一つ置くのではなく、床、排水、担架の旋回場所まで見ていた。


「一つ失われた場合は?」


「残る二本へ負荷を移す。二本を失った時点で地下進入班を縮小する」


 土色の三本線が、地下から丘陵外へ伸びた。


 次にオルフェン統括が、赤い駒を正門へ置く。


「炎獅子は正門突破と地上個室棟の制圧」


「敵を地下出口と救護線から引き離す」


 イグナシオ団長が、正門の先へ二つの小さな駒を分けた。


「一隊で正面を開く。もう一隊は個室棟の廊下を押さえる。後続は突破口を広げず、担架が通る幅だけを維持する」


「広域炎撃は禁止だ」


「分かっている! 中に誰がいるか分からん建物を、外から焼くつもりはない!」


 炎獅子の赤は、地下へ進まず地上で止まった。


 反対側の裏門へ、白金色の駒が置かれる。


「光龍は第二侵入路。裏門と搬入斜路から入り、中央回廊を確保する」


 ギルバート団長が、搬入斜路から記録室へ続く線を確認した。


「投降者の拘束と人数確認も光龍が受け持つ。指揮階級が高い者ほど先頭へ置く」


「物証保全は救助を妨げない範囲とする」


「無論だ。帳簿を守るために、人を帳簿の下敷きにはしない」


 静かな声だった。


 貴族の責任を語るギルバート団長らしい答えでもあった。


「中央回廊で炎獅子と合流するのか?」


 イグナシオ団長が尋ねる。


「合流を目的にはしない。正面の敵が裏門側へ流れた場合のみ、光龍が受け止める」


「逆も同じだな!」


「そうだ。互いに相手の戦線を追って持ち場を空けない」


 二つの侵入路は中央で重ならず、互いの隙間だけを埋める位置に置かれた。


 高所には、細い緑色の駒が並ぶ。


「風鷹は屋根、外壁、丘陵外周。器成派の逃走と外部増援を監視する」


 シルフィ団長が旧施療院の屋根図を引き寄せた。


「屋根裏の中までは確認できないわ。見えるのは煙、開口部、人影、外壁の変化までよ」


「それでいい。確認できないものを見えたことにするな」


「星門派の介入があった場合は?」


「接触前に統括所へ報告。規模が小さくても独断で交戦しない」


 オルフェン統括がそう告げた時、アーサー団長の青い瞳が、作戦図の端に置かれた制限資料へ向いた。


 表紙には、神界門関連物証と記されている。


 本当に見ていたのは一瞬だけだった。


 長い金髪を高く束ね、青と白銀の細身の甲冑をまとった姿からは、何も読み取れない。


 短い紺色のマントの下には聖剣エクスカリバー。


 半歩後ろには、槍を携えたサー・イーヴリンが立っている。


「星門派の人員が、儀式設備の保全を要求した場合は」


 アーサー団長が尋ねた。


「要求には応じない。設備へ触れず、拘束可能なら拘束する。大規模介入なら二正面作戦と判断する」


「承知した」


 それ以上、アーサー団長は問わなかった。


 星冠塔をどう見ているのか。


 神界への門という言葉に、何を思ったのか。


 僕には分からない。


 オルフェン統括も、その視線の理由を尋ねなかった。


「雷虎は地下中央の儀式区画だ」


 青白い駒が、施設図の中で最も情報の少ない空白へ置かれる。


「顕現工程の停止。顕現対象が確認された場合の封印と制圧を担当する」


「接続されている人間を確認するまで、儀式設備は破壊しない」


 アーサー団長の指先が、地下中央へ続く推定通路をなぞる。


「装置だけを斬れば、負荷が人間へ戻る可能性がある」


「その判断でよい。雷虎だけで対応不能と判断した場合は、即時に統括所へ戻せ」


「命を受ける」


 アーサー団長はエクスカリバーへ触れなかった。


 威厳ある立ち姿の奥に何があるのかは、最後まで見えなかった。


 残った灰色の駒が、地下隔離区画へ置かれる。


「灰鬼は地下隔離区画。未知の異能と封印異常への対応、収容者の搬出を担当する」


「ヴァレクが別方向へ逃げても、追うのは指定線までだな」


 ガイ団長が確認する。


「そうだ」


「なら、地下で見つけた人間を先に出す。ヴァレクは道が同じ時だけ取る」


 首領の首より、人命を先に選ぶ。


 ガイ団長は最初から順番を取り違えなかった。


 地下出口の外へ、水色の駒が並べられる。


「水蝶は救護線、搬送順、広域防護。灰鬼が地下出口まで運んだ収容者を引き継ぐ」


 レイシア団長の淡い銀青の長髪が、図面へ身を寄せた動きに合わせて肩から流れる。


 澄んだ水色の瞳は、僕ではなく灰鬼の搬出線を見ていた。


「地下出口から先の搬送指揮は、水蝶へ渡してください」


 レイシア団長がガイ団長へ言う。


「ああ。出口を越えたら、こっちは手を離す」


 ガイ団長は間を置かずに答えた。


「ただし、灰鬼が遅れても水蝶は迎えに潜るな」


 レイシア団長の長い耳が僅かに動く。


「連絡期限までは地下出口を維持します」


「期限を越えたら」


「土亀と連携し、別の救出路へ切り替えます。灰鬼だけを待って、収容者の搬送線を失うことはしません」


「それでいい」


 二人の間に争いはなかった。


 以前なら、僕の所属を挟んでぶつかっていた二人だ。


 けれど今、間にあるのは人員受け渡し地点だった。


「灰鬼が渡す時に、負傷分類まで終えている必要はありません」


 レイシア団長が続ける。


「呼吸、出血、歩行可能か。その三つが分かれば、水蝶側で搬送順を決めます」


「地下で診察始める気はねえよ。見える範囲だけ付けて渡す」


「はい。それで十分です」


 互いの仕事を奪わない。


 分からない分野へ、分かったふりで踏み込まない。


 オルフェン統括は二人のやり取りが終わるまで待ち、灰色と水色の駒の境へ小さな受領札を置いた。


「ここが今回の作戦で最も切れてはならない線だ」


 地下へ入る者が強くても、救出した人を外へ運べなければ意味がない。


 七騎士団の役割は、別々の戦果を得るためではなく、一つの搬送線を成立させるために繋がっていた。


「固定担当は以上だ」


 オルフェン統括が七色の駒を見渡す。


 けれど、作戦図にはまだ空白がある。


 炎獅子の正門線と光龍の裏門線の間。


 灰鬼と水蝶の受領地点。


 三本の撤退路。


 屋根から地下へ危険が抜けた時の封鎖線。


「どの団にも固定すれば、本来の担当を空けることになる区画がありますね」


 僕は発言を求める札へ右手を置いた。


 オルフェン統括が頷く。


「その通りだ、アルト。だが、お前に答えを求めているわけではない」


「はい」


「そこへ置く者は既に選んである」


 オルフェン統括が議場の扉へ顔を向ける。


「入れ」


 厚い扉が開いた。


 入ってきたのは、七人の団長ではない。


 アルトたちと近い年頃に見える、長身の若い騎士だった。


 額の左右には短い角。


 首元と手の甲の一部に、竜人特有の硬質な鱗が覗いている。


 鋭い瞳は七つの団旗を見回さず、最初から作戦図の空白へ向けられた。


 翼は見えない。


 武器や属性も、外見だけでは分からなかった。


 若い騎士は統括席の前で止まり、封をされた派遣状を差し出す。


 封蝋には銀鷲の印があった。


「ゼファル・ドラグニル。銀鷲騎士団だ」


 短い自己紹介だった。


 オルフェン統括が派遣状を成人記録官へ渡す。


「銀鷲騎士団は飛行船と空路を担当する十三専門騎士団の一つだ。ゼファルには、今回の作戦に限り、統括直属の遊撃を命じる」


 七人の団長と同じ席は与えられない。


 ゼファルの立つ位置は、団長席の外側に設けられた専門派遣者用の区画だった。


「開始時は北側の屋根と外壁付近で待機。炎獅子と光龍の侵入線に穴が生じた場合は、その隙間へ入る」


 オルフェン統括が空白へ銀色の細い駒を置く。


「灰鬼と水蝶の受け渡し線。土亀の撤退路。風鷹が発見した外部接近地点。雷虎の封鎖線。いずれかが破れた場合、統括所の命令によって移動する」


「持ち場がないんじゃない」


 ゼファルが作戦図を見たまま言う。


「破れた持ち場へ入る。それが遊撃だ」


 自由に戦うという意味ではなかった。


 どこへでも行ける代わりに、自分で目的を選べない役目だ。


「単独追跡は禁止」


「了解」


「作戦範囲外への進入も禁止」


「了解」


「ヴァレクを発見しても、一人で追うな」


 ゼファルの鋭い瞳が、首領推定位置の空欄へ動く。


「報告して、線を保つ」


「よろしい」


 彼は僕の封魔具へ興味を示さなかった。


 視線が一度こちらを通っても、作戦席にいない人間だと確認しただけで戻っていく。


 親しげな挨拶も、能力への問いもない。


 今は同じ任務の図を見ているだけだった。


「次に、撤退条件を定める」


 オルフェン統括が、作戦図の外周へ黒い枠を置いた。


「土亀が施設構造を維持不能と報告した場合、地下進入班を退かせる」


 ゴウセル団長が三本の撤退線へ目を向ける。


「搬送路が一本でも残る間は、全体撤退とはしない。ただし、全て失われる前に縮小する」


「二本目が落ちた時点で、三本目へ集める人数を制限する」


「その判断は土亀へ任せる」


 次の黒札が外周へ置かれた。


「星門派が大規模介入し、二正面作戦となった場合。統括所は任務継続か撤退かを即時判断する」


 アーサー団長は何も言わなかった。


 青い瞳も今度は作戦図から動かない。


「完全な魔神顕現が発生し、現有封印戦力で隔離不能と雷虎が判断した場合も同じだ」


「雷虎が判断を返せない状態なら?」


 ギルバート団長が問う。


「通信断を含め、統合指揮不能として撤退へ移る」


 オルフェン統括は続けた。


「収容者または民間人を巻き込む高階位魔法しか手段がなくなった場合も、攻撃ではなく撤退を選ぶ」


「あと一撃で首領へ届くとしてもか!」


 イグナシオ団長の問いは確認だった。


「届かせない」


 オルフェン統括は静かに答えた。


「一人を討つため、救うべき人間と七騎士団を地下へ残すことは認めない」


「分かった!」


 イグナシオ団長が大きく頷く。


 前進だけでなく、どこで退くかまで決められた。


 団長自身にも例外はない。


「アルト・ロウェルの扱いへ移ります」


 成人記録官が別の書類を出した。


 議場に並ぶ駒の中に、僕のものはまだない。


「参加可否は、この合同任務の承認と分けて審査する」


 オルフェン統括が言った。


「器成派に狙われる危険。器成派の語彙や術式異常を識別できる可能性。左腕と右脚の治療状態。封印と成人監督。普通の片手剣を使用できるか。それぞれを別に見る」


「僕が現地へ行けば、器成派が出てくる可能性はあります」


 自分から事実だけを口にする。


「あるだろう」


 オルフェン統括は否定しなかった。


「だからといって、餌にはしない」


「水蝶も同意します」


 レイシア団長がすぐに続けた。


 声は穏やかでも、言葉に揺らぎはない。


「アルト本人の同意があっても、儀式材料として求める相手へ意図的に差し出す作戦には反対します。捕獲された場合、本人だけでなく救出部隊全体が器成派の望む位置へ誘導されます」


「灰鬼もだ」


 ガイ団長が言う。


「こいつを置くなら、戦えるかどうかと役に立つかで決めろ。敵が欲しがってるから置くってのは、配置じゃなく供物だ」


 二人は僕を取り合わなかった。


 同じ結論へ、別の責任から到達していた。


「《暴食》の使用許可は出さない」


 オルフェン統括が確認する。


「《部分換装》も同様だ。再現一回、制御未確認の現象を、討伐作戦の切り札には数えない」


「はい」


 僕は右手を膝の上へ置いた。


 左腕の痛みも、右脚の痺れも、参加したいという意思だけでは消えない。


「お前を前線、後方、本部待機のどこへ置くかは、医療、封印、監督、作戦側の審査後に決める」


「分かりました」


「任務が承認されることと、お前の参加が承認されることは別だ」


 拒絶ではない。


 特別な力があるから当然参加できる、という扱いでもなかった。


 僕は制限情報照合者として、その言葉を受け取った。


 成人記録官が七枚の担当書を作戦卓へ並べる。


 最初にゴウセル団長が、構造維持と撤退路の欄へ署名した。


 続いてイグナシオ団長が正門突破欄へ。


 ギルバート団長は第二侵入路と物証保全。


 シルフィ団長は外周観測。


 アーサー団長は儀式停止と高危険対象封鎖。


 名前が並んでも、それぞれの責任は重ならない。


 最後に、人員受け渡し欄が中央へ置かれた。


 左側は地下搬出。


 右側は救護搬送。


 ガイ団長が左へ署名する。


 レイシア団長は内容をもう一度確認してから、右へ自分の名を書いた。


 二人の署名の間には、地下出口を示す細い線が一本だけ引かれていた。


 握手はない。


 長い和解の言葉もない。


 けれど、その線をどちらも自分だけのものにしなかった。


 ゼファルには別の紙が渡された。


 専門騎士団派遣・遊撃欄。


 彼は銀鷲騎士団からの派遣条件と撤退命令の項目を読み、迷いなく署名した。


 七つの担当書と、一枚の遊撃書がオルフェン統括の前へ集められる。


 まだ開始時刻は空欄だ。


 全参加者も、細かな侵入順も決まっていない。


 それでも、誰が何を守り、どこで別の騎士団へ命を渡すのかは決まった。


 オルフェン統括が、王国の紋と七つの環を刻んだ統括印を手に取る。


 印面を確認する。


 成人記録官が時刻を書き留める。


 七人の団長が、一斉に姿勢を正した。


 ゼファルも専門派遣者の位置で背筋を伸ばす。


 統括印が、合同任務書の中央へ下ろされた。


 硬い音が一つ、議場へ響いた。


「器成派主要拠点《中央器成院》に対する救出・顕現阻止・首領拘束任務を承認する」


 オルフェン統括が告げる。


「各団、準備へ移れ」


「承知しました」


 七人の団長の声が重なった。


 オルフェン・レグナスの統括印が七つの団旗と一人の遊撃騎士を束ね、器成派討伐は七騎士団合同任務として動き始めた。

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