第128話 飢えを隠さない
「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!
例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』
皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!
旧換気塔へ向かう枝道で、最初に異常を告げたのは封魔具ではなく、僕自身の空腹だった。
雪崩による孤立から三日目の午前。
僕たちは破壊した中継器を離れ、古い経路板が示していた旧換気塔を目指していた。
そこに地表非常信号索が残っているのなら、切れた通信線とは別に、地上へ僕たちの存在を伝えられるかもしれない。
まだ使えるかは分からない。
換気塔まで道が続いている保証さえない。
それでも、孤立してから初めて見つけた、外へ意思を届けられる可能性だった。
僕の右脚には痺れが残っていた。
一晩の休息で少し軽くなったはずなのに、中継器を倒した負荷で、また細い針を散らしたような感覚が戻っている。
フィアの右腕には簡易固定具が巻かれたままだ。
指先の痺れも消えていない。左手にも、遮断レバーと補助縄を扱った疲労が残っている。
だから僕たちは急がなかった。
後方に追跡者がいる可能性を抱えたまま、それでも同じ歩幅で進んでいた。
保存食は二食分。
水筒は二本とも空ではないけれど、持ち上げた重さは出発時より明らかに軽い。
残りが少ないことは分かっていた。
けれど、最初に腹の底を掴んだ感覚は、三日目の空腹だけでは説明できなかった。
一歩進んだところで、胃の奥が急に縮んだ。
食事を一度抜いた程度の空腹ではない。
身体の内側に空洞を穿たれ、その向こうから何かが口を開けたような飢えだった。
僕は足を止めかけた。
その拍子に右脚の痺れが膝下まで走ったが、それよりも左腕の奥へ生じた冷たい圧迫感の方がはっきりしていた。
痛みではない。
脈打ってもいない。
それでも、治療布と黒銀色の封魔具の下で、何かが外を向いた。
「アルト?」
半歩先でフィアが振り返った。
手提げ灯の光が、腰を越える長い金髪の表面を滑った。細い黒のカチューシャの下で、青い瞳が僕を捉える。
フィアの顔は、いつものフィアのままだった。
凛とした目。
整った前髪。
固定した右腕を庇いながらも、崩れていない姿勢。
何一つ変わっていない。
なのに、その存在へ、別の意味が重なった。
喰える。
呼吸していることも、身体に熱があることも、そこに立っていることさえも、飢えを満たせる対象だと知覚してしまう。
フィアの名は分かる。
仲間だということも分かる。
昨日までの言葉も、一つの寝台で越えた夜も忘れていない。
それでも、その認識の上へ《暴食》の飢えが覆い被さった。
僕はフィアから目を逸らした。
右手を開き、何も掴んでいないことを確かめる。
それから、壁の古い保守番号だけを見た。
隠してはいけない。
もう少し様子を見ようと考えた時点で、遅くなる。
僕は一度だけ息を整え、はっきり言った。
「フィア。止まって。今、フィアが食べ物に見え始めた」
衣擦れの音が止まった。
驚いて息を呑む気配がした。
それは当然だった。
僕だって、逆の立場なら怖い。
けれどフィアは悲鳴を上げなかった。
剣にも触れなかった。
「分かった。距離を取る」
短い返答の直後、足音が斜めへ離れていく。
一歩。
二歩。
フィアは僕の正面を避け、枝道の壁際へ移った。僕から六歩を越えたところで止まる。
姿と声は届く。
だが、僕が急に腕を伸ばしても、決して届かない。
それを確認してから、フィアは手提げ灯を少し持ち上げた。
「上」
言われた方向を、僕はフィアを視界へ入れない角度で見た。
枝道の天井近くに細い導線が這っていた。
陶製の覆いには古い亀裂がある。縁は汚れ、破断面にも新しさがない。さっき壊した中継器から伝わった破損ではなさそうだった。
亀裂の周囲では、灯りに照らされた淡い粒が、冷たい空気へ滲むように流れている。
手提げ灯の火も、そこを通るたびに僅かに揺れた。
「魔力が漏れてる」
フィアが言った。
「たぶん。でも、量も属性も分からない。近づかない方がいい」
「触らない」
「うん。僕も喰わない」
言葉にしただけで、腹の奥が強く縮んだ。
漏れているものは、人の魂でも生命でもない。
儀式設備の導線を通っていた外部魔力の一部に見える。
それでも、安全に《暴食》の対象にできると確かめたものではなかった。
何より、今の僕が自分の判断を信用してはいけない。
漏出魔力を喰えば飢えが治まる。
そんな都合のいい考えこそ、飢えが選ばせる答えかもしれない。
「アルト。報告」
フィアの声が飛んでくる。
「空腹は、零から十なら六。普通の空腹とは違う。フィアの姿は分かる。でも、喰える対象だって意味が重なって見える」
言葉にするたび、喉が乾いた。
けれど、止めなかった。
「左腕には冷たい圧迫感がある。強い痛みはない。脈動もない。紋章が広がる感覚もない。封魔具と二重固定は維持してる。味覚は変わってない。匂いの変化もない。意識ははっきりしてる」
「右脚」
「痺れは残ってる。歩けるけど、急げない」
フィアは一拍だけ黙った。
離れた位置にいる彼女の表情を、僕は見ないようにした。
「ごめん」
口から出たのは、それだけだった。
「謝るより、報告」
少し鋭い、いつもの声だった。
「見え方。空腹。左腕」
「うん」
拒絶されなかったことに安堵してはいけない。
近づかないという判断こそ、フィアが僕の報告を正しく受け取った証拠だった。
信じることと、危険を無視することは違う。
「このまま先へ進めない」
僕が言うと、フィアは枝道の先ではなく、横の壁へ灯りを向けた。
主要路から僅かに引っ込んだ点検窪みがあった。
低い天井と石床だけの場所で、避難室と呼べるほど広くはない。壁には王国土木局の安全環が一つ残っている。
漏出している魔力の流れからは数歩外れていた。
「そこへ入る」
「フィアが先に。僕は六歩空けて続く。視線は壁に置く」
「分かった」
フィアが点検窪みへ移動する。
右腕を固定したまま、左手の灯りで床と天井を確認していく。
彼女が奥の端まで下がってから、僕も歩き始めた。
右脚はすぐに反応しなかった。
壁の継ぎ目を見つめ、一歩ずつ進む。
フィアの足音だけで位置を測った。
「あと二歩」
「うん」
「右に窪み」
「見えた」
僕が点検窪みへ入ると、フィアは反対側から外へ回った。
僕たちの間には安全環と六歩以上の距離が残った。
たった数歩の移動だったのに、背中へ冷たい汗が浮いている。
空腹は六。
まだ六だ。
そう数で捉えなければ、底のないものに思えた。
「補助縄を使う」
僕は自分の荷物を右手だけで開いた。
中から短い補助縄を引き出す。
第125話で裂け目を渡り、第127話で中継器を倒した、同じ物理的な縄だ。擦れはあるが、芯まで傷んではいない。
「新しい拘束具はない。これを装具帯の固定環と、壁の安全環に通す」
「首と腕には巻かない」
「右脚にも巻かない。封魔具にも触れさせない」
フィアは離れたまま、僕の手元を見ていた。
正式な拘束具ではない。
《暴食》を止める力があるわけでもない。
それでも、もし僕がフィアへ向かって動いたとき、彼女が退くための数呼吸を作れる。
今は、その数呼吸が必要だった。
僕は普通の片手剣を右手で剣帯から外した。
鞘へ収めたまま、石床を滑らせる。
剣は点検窪みの入口を越え、補助縄をいっぱいに伸ばしても届かない場所で止まった。
「剣、僕の可動範囲外」
「確認した」
フィアの通常剣も鞘に収まっている。
彼女は右腕を使えない。
それでも、僕を斬るために左手で剣を構えるとは言わなかった。
言わせたくもなかった。
僕は補助縄を壁の安全環へ通し、装具帯の固定環へ回した。
左腕は身体の脇へ置いたまま、右手だけで結び目を作る。
一度締め、呼吸を妨げていないことを確かめる。
座れる。
立てる。
一歩だけ前へ動ける。
そこから先は縄が張った。
「結び目、見える?」
「見える。固定環を通ってる。封魔具には触れてない」
「締まりすぎてもいない」
「一度、立って」
僕はゆっくり立ち上がった。
装具帯へ縄の重さが掛かったが、息は止まらない。右脚にも巻きついていない。
一歩進むと、縄が張る。
フィアまでは届かない。
「これを緊急拘束帯として記録する」
「完全には止められない」
「うん。数呼吸を作るだけ」
フィアは僅かに頷いた。
僕たちは二人とも、今ここにいるのは正式な成人監督者ではない。
フィアが僕の監督者になったわけでも、安全を保証する装置になったわけでもない。
孤立した新人騎士が、使える物で生き残るための手順を作っているだけだ。
だからこそ、一方だけの判断にしてはいけなかった。
「停止合図を決めよう」
「私が言う」
フィアは少し考え、余計な言葉を削るように告げた。
「アルト、止まって」
「僕は二呼吸以内に、『止まった。僕はアルトだ』と返す」
「返さなければ、笛。一度。長く」
フィアは左手で、自分の停止笛がある位置を確認した。
「笛の後も僕が動いたら、近づかないで。縄も引かない。曲がり角の向こうまで退いて」
「右腕も剣も使わない」
「うん」
「十呼吸ごと」
「空腹、見え方、左腕、声の有無を報告する」
フィアは僕の言葉を一つずつ確かめるように頷いた。
「試す」
青い瞳が、六歩以上の距離を隔てて僕へ向く。
「アルト、止まって」
僕は動かしていた右手を止め、壁へ視線を戻した。
「止まった。僕はアルトだ」
「返答、確認」
笛は鳴らなかった。
追跡者に聞かれる危険はある。
それでも、必要になれば使う。
音を恐れて安全手順を捨てれば、もっと近くにいるフィアを危険へ晒す。
「次。私の名前」
問いは短かった。
僕は答えを知っている。
今も、はっきり分かる。
「フィア・ヴァルティエ。仲間。食べ物じゃない」
腹の奥で、飢えが否定した。
けれど僕は同じ言葉を頭の中でも繰り返した。
フィア。
仲間。
食べ物ではない。
「僕はアルト。雪崩による孤立から三日目。ここは旧北側保守路から分かれた、旧換気塔へ向かう枝道の点検窪み。目的は地表非常信号索を使って、救援信号を送ること」
「なら、続けて」
名前を答えても、異常は消えなかった。
フィアの姿へ重なる意味も残っている。
それでも、人としての認識が失われていないことは確認できた。
フィアは距離を保ったまま記録札を取り出した。
左手には疲労がある。
それでも筆記具を持つ指は、急がず正確に動いた。
「孤立三日目」
彼女が書いた内容を、声に出して確認する。
「アルトに異常な空腹。知覚変化あり。封魔具と二重固定、維持」
「第一覚醒なし。《暴食》未使用。《部分換装》未使用」
「私の右腕、固定継続」
「旧換気塔への移動を一時停止。短い補助縄を緊急拘束帯として使用中」
「保存食、二食分。水筒、二本」
推測は書かなかった。
導線の行き先も、儀式の中心も分からない。
ただ、成人側がこの位置札を見つけたとき、何が起きているか判断できる事実だけを残す。
フィアは札を僕から離れた壁面へ固定した。
救助側へ向けた記録は、追跡者にも見つかる可能性がある。
それでも消すことはできない。
僕たちの現在地を残すことは、生きて戻るための道を後ろへ繋ぐことだった。
「十呼吸」
フィアが告げる。
僕は呼吸を数えた。
冷たい空気が肺へ入り、ゆっくり出ていく。
一。
腹の奥は空いたまま。
二。
左腕の圧迫感は変わらない。
三。
フィアを見ない。
四。
壁の傷を数える。
五。
封魔具の外側に緩みはない。
六。
僕はアルトだ。
七。
ここは旧換気塔へ向かう途中だ。
八。
フィアは仲間だ。
九。
食べ物ではない。
十。
「空腹、六。見え方、変化なし。左腕、冷たい圧迫だけ。強い痛みなし。声なし」
「確認」
フィアの声が返る。
それだけで、僕は次の十呼吸へ進めた。
沈黙の向こうで、陶製部材の亀裂から漏れる淡い粒が流れている。
それを見れば、喉の奥が反応する。
喰える。
漏れた魔力なら喰える。
飢えが答えを急かす。
僕は視線を床へ落とした。
「漏出魔力が気になる。喰える対象に見える。でも、安全とは判断できない。使わない」
「そのまま報告」
「うん」
フィアは僕を励ますために近づかなかった。
大丈夫だとも言わなかった。
今の僕は、大丈夫ではない。
それを否定しないことが、何より助かった。
遠くで、一度だけ金属が石へ触れる音がした。
追跡者の足音かもしれない。
別の設備が軋んだだけかもしれない。
距離も方角も断定できなかった。
フィアは音のした方へ顔を向け、それから僕へ視線を戻した。
「動かない」
「うん。安全手順を優先する」
追跡者が近くにいるかもしれない。
旧換気塔へ早く着かなければならない。
それでも、この状態で移動を再開する方が危険だった。
焦りもまた、飢えと同じように判断を歪める。
次の十呼吸を数えた。
途中で、フィアの右腕の固定具が目の端へ入った。
彼女も完全な状態ではない。
右腕と指先には痺れが残っている。左手にも疲労がある。
僕を一人で制圧することなどできない。
そもそも、させてはいけない。
「フィアも報告して」
「右腕、痺れは同じ。固定具、ずれなし。左手、疲労あり。笛と灯りは使える」
「分かった」
僕たちは互いの状態を出した。
一方が監督し、もう一方が従うためではない。
次に取れる行動を、二人分の事実から決めるためだ。
「怖い?」
問いかけてから、聞くべきではなかったかもしれないと思った。
けれどフィアは、少しも誤魔化さなかった。
「怖い」
短い答えだった。
胸の奥が沈む。
それでも、フィアは続けた。
「隠される方が、もっと危ない」
「うん」
「報告がある。だから距離を決められる」
声は鋭さを失っていなかった。
優しい嘘でも、無条件の信頼でもない。
危険だと知った上で、僕の言葉を判断材料にしている。
それが今の僕たちに必要な信頼だった。
「空腹、六。見え方、変化なし。左腕、圧迫あり。声なし」
「確認」
もう一度、十呼吸。
僕は右手を膝へ置いた。
拘束帯には触れない。
剣は手の届かない場所にある。
フィアまでは六歩以上。
停止笛は彼女の左手で扱える。
決めたものを一つずつ確かめる。
そのとき、腹の底の空洞が急に深くなった。
耳から聞こえたのではない。
石壁の向こうからでもない。
僕の内側。
黒い紋章のさらに奥で、獣が身を起こした。
飢えが声の形を取る。
『すべて喰え、器』
低く、濁った声だった。
命令というより、当然の事実を突きつける響き。
漏れた魔力も。
目の前の仲間も。
進路を塞ぐものも。
区別せず、すべてを喰えと迫る声。
僕は答えなかった。
問い返さない。
拒絶の言葉すら、ベルゼバスへ向けては口にしない。
代わりに、決めた相手へ報告した。
「今、ベルゼバスが『すべて喰え、器』と言った」
フィアの姿勢が僅かに硬くなる。
だが、距離は変わらなかった。
「私には聞こえない」
「分かってる。僕だけに聞こえた」
「分かった。次も言って」
「うん」
声を伝えても、ベルゼバスは消えない。
飢えも治まらない。
それでも、声は僕一人だけが抱える秘密ではなくなった。
「空腹は六から変わらない。でも、圧が強く感じる。フィアへの見え方も残ってる。左腕、強い痛みなし。紋章が広がる感覚なし」
「意識」
「清明。僕はアルト。君はフィア。旧換気塔へ向かう途中で緊急停止してる」
「確認」
僕は息を吐いた。
封魔具は壊れていない。
二重固定も緩んでいない。
黒い紋章は肩の手前で止まったまま。
爪も、鱗も、外殻も現れていない。
第一覚醒は起きていない。
《暴食》も、《部分換装》も使っていない。
使えるかどうかさえ確かめない。
今は何かを得る場面ではなかった。
何も失わないために、止まる場面だった。
「アルト、止まって」
フィアの合図が飛んだ。
僕は無意識に強く握りかけていた右手を開いた。
「止まった。僕はアルトだ」
「右手」
「開いてる。何も持ってない」
「空腹」
「六」
「見え方」
「残ってる。君はフィアだと分かる。その上に、喰えるって意味が重なる」
「左腕」
「冷たい圧迫。痛みなし。固定維持」
「声」
「今はない」
一つずつ答える。
フィアは一つずつ受け取る。
僕が危険ではないふりをする余地も、フィアが全部分かっているふりをする余地もなかった。
それでよかった。
「旧換気塔は逃げない」
フィアが言った。
「設備が残っていれば、だけどね」
「今は行かない」
「うん。今は止まる」
追跡者が戻るかもしれない。
漏出魔力がいつまで流れるかも分からない。
この拘束帯が、悪化した僕を本当に止められるかも分からない。
確認できないことばかりだった。
それでも、確認できることもある。
僕はまだ自分の名前を言える。
フィアを仲間だと認識できる。
右手を伸ばしていない。
禁止された力を使っていない。
飢えを隠していない。
ベルゼバスの声も隠していない。
点検窪みの外で、手提げ灯の光が僅かに揺れた。
その光はフィアの長い金髪を照らしていたが、僕は顔を上げず、床へ落ちた明るさだけを見た。
「十呼吸、続ける」
「うん」
「アルト」
「何?」
「言って」
何を、とは聞かなかった。
十呼吸ごとに、全部だ。
空腹も。
見え方も。
左腕も。
声も。
一人で抱えれば、飢えは秘密の中で形を変える。
報告すれば消えるわけではない。
けれど少なくとも、僕たちは同じ事実を見た上で、次の一手を決められる。
「空腹、六。見え方は残ってる。左腕は圧迫だけ。声は、今はない」
「確認」
フィアは六歩以上離れたまま、そこにいた。
近づかない。
逃げない。
剣を抜かない。
僕も拘束帯の内側で、決めた位置から動かなかった。
旧換気塔への道は、まだ先へ続いている。
地表非常信号索へも届いていない。
救援の鐘も鳴っていない。
僕たちは孤立したまま、追跡者の気配が残る坑道で足を止めている。
それでも、以前とは違う。
危険を小さく言い換えなかった。
声を聞かなかったことにしなかった。
最も知られたくない異常を、最も近くで生き残ろうとしている相手へ渡した。
「次の十呼吸」
フィアが告げる。
僕は頷き、また一から数え始めた。
ベルゼバスが『すべて喰え』と迫る中、僕はその飢えも声も、一つ残らずフィアへ報告した。
「面白かった!」
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