第116話 空白の戦団
「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!
例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』
皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!
前回の合同基礎訓練から十二日後、監督台へ立つレイシア団長の脇には、僕一人分とは思えない量の食料と治療用品が積まれていた。
合同ドラフトから十九日目。
王国選抜局の合同訓練区画には、七騎士団の新人たちが再び集まっている。
淡い銀青の長髪を朝風になびかせたレイシア団長は、水蝶騎士団の団長外套をまとっていた。澄んだ水色の瞳と穏やかな微笑みは、王都で聖女と称される若き英雄そのものだ。
その隣に並ぶ荷物の量だけが、明らかにおかしい。
「これは、何日分?」
ティアナが一番上の箱を見上げた。
箱には一つずつ札が結ばれている。
訓練前。
訓練後。
帰路。
保存用。
さらに隣の保管箱には、交換用の治療布、冷却布、清潔な布、飲料水、身体状態を書き込む記録札が、用途別に封じられていた。
「訓練前、訓練後、帰り道、それから予備です」
レイシア団長は、当然のように答えた。
「予備が一番多くない?」
「備えとは、使わずに済めば一番よいものですから」
セルフィナが保存食の札を順に読む。
「通常の一人分として換算するなら、六日分に近い量です」
「アルトの空腹が、いつも通常の範囲に収まるとは限りません」
レイシア団長の笑顔は崩れなかった。
けれど、その言葉は冗談ではない。
一番大きな保存箱には、赤い文字で注意書きがあった。
――普段と異なる空腹を感じた場合、開封前に成人監督者へ報告すること。
「ただし、普段と違う空腹なら、食べる前に報告してください。食べて隠してはいけませんよ」
「分かっています、レイシア団長」
公の場なので、僕も正式な呼称で答える。
レイシア団長は満足そうに頷いた。
フィアが箱と僕を交互に見る。
「持ち帰れる量じゃない」
「灰鬼騎士団本部への搬送分は、水蝶騎士団から正式に申請してあります。個人で用意した食料と、成人治療職員の確認を受けた用品も分けてありますよ」
どうやら、量が多いこと以外に問題はないらしい。
僕のことになると過剰になるのは昔からだ。
孤児院にいた頃も、僕が一度食事を抜いただけで、レイシアは翌日のパンを半分寄こそうとした。
あの頃と違うのは、今の彼女が七騎士団の一つを率いていること。
そして、過剰な心配さえ、正式な安全手順の中へ組み込めるようになったことだ。
「荷物の確認は以上です」
レイシア団長は成人記録官から記録板を受け取った。
僕へ向いていた柔らかな眼差しが、訓練区画全体へ広がる。
「本日は、七騎士団新人合同戦術基礎訓練を行います」
その声は穏やかだが、訓練区画の端まで明瞭に届いた。
別区画には、ユリウスやミナ、メルナ、風鷹の双子、北部地方学院出身の新人たちもいる。それぞれ異なる仮編成へ入り、同じ説明を聞いていた。
「使用するのは訓練武器と物理的な仕掛けだけです。魔法の使用、新人同士への攻撃、指定外の設備破壊は禁止します」
レイシア団長の視線が、救護所と成人封印担当の待機場所を順に確かめる。
「評価するのは、救出、経路確認、停止、撤退、役割の引き継ぎです。所属や戦団名ではありません」
一呼吸置き、声が少しだけ低くなった。
「身体上の制限は、各騎士団の正式記録を優先します。軽微な異変でも、その場で報告してください。隠したまま続けることは、勇敢さではありません」
僕の後方では、主監督騎士として参加しているローディンが、出口、救護通路、成人封印担当までの距離を確認していた。
僕だけに向けた規則ではない。
けれど、最後の一言へレイシア団長が込めた重さを、僕はよく知っていた。
説明後、成人記録官が仮編成を読み上げる。
「合同訓練第三仮編成。灰鬼騎士団、アルト。土亀騎士団、ティアナ。灰鬼騎士団、フィア。炎獅子騎士団、レグルス」
学院時代に何度も並んだ四人だった。
着ている制服は、もう同じではない。
灰黒の僕とフィア。
土色と黄褐色のティアナ。
深紅と黒のレグルス。
それでも名前が続けて呼ばれると、身体の奥に懐かしいものが戻ってきた。
成人記録官が用紙の途中で筆を止める。
「戦団名は」
僕たちは互いの顔を見た。
「まだ決めてないんだよね」
ティアナが少し困ったように笑う。
「必要ない。空欄で」
フィアは短い。
「名称が連携を作るわけではない。現時点では不要だろう」
レグルスも同意した。
僕は記録用紙を見た。
四人の所属欄は全て埋まっている。
その下にある戦団名の欄だけが白い。
「空欄でお願いします」
「確認しました。第三仮編成として登録します」
成人記録官は、それ以上の名前を求めなかった。
「灰鬼騎士団、セルフィナ。第三仮編成の索敵担当として別枠参加。個人評価記録あり」
セルフィナの名は、四人の戦団欄には加えられない。
代わりに、索敵担当者の欄へ正式に記された。
「確認しました」
セルフィナは静かに頷く。
四人の付属でも、僕の付き添いでもない。
灰鬼騎士団の新人として、自分の役割を持って参加する。
レイシア団長が記録用紙へ目を通した。
「戦団名が空白でも、安全手順と役割が決まっていれば訓練はできます。名称は評価対象に含めません」
そこで、ほんの少しだけ微笑む。
「皆さんが何を守り、どこで止まれるかを見せてください」
訓練区画には、木製の遮蔽板で複数の通路が作られていた。
中央には訓練用人形。
通路の途中には、赤い制御紐で吊られた振り子状の障害物と、塗料で模擬術式線を描いた板がある。
僕は片手剣型の木剣。
ティアナは幅広い訓練盾。
フィアは刃を潰した訓練剣。
レグルスは穂先を保護した訓練槍。
セルフィナは索敵記録札と短い確認棒を持つ。
「第三仮編成、準備」
成人指導騎士の声が響く。
僕たちは開始線へ並んだ。
以前なら、僕が最初に道を決め、ティアナが守り、フィアとレグルスが切り開いていた。
けれど、今は違う。
レグルスは前へ出る前に後方を見る。
ティアナは正面だけでなく退路を確かめる。
フィアは剣を抜く前に、切ってよい対象を探す。
僕も、自分の判断だけで足を出してはいけないと灰鬼で教わっている。
開始旗が上がった。
セルフィナが先行する。
地面の擦れを確認し、遮蔽板の陰へ確認棒を差し入れる。紐の張りと音の反響を確かめ、十二歩先で止まった。
「東側は十二歩先まで安全を確認しました。その先は死角であり、未確認です」
僕は東へ足を出しかけた。
だが、セルフィナの報告はまだ終わっていない。
「北側には仕掛けがある可能性があります。ただし、現時点では推測です。西側は経路札を確認できません」
踏み出しかけた足を戻す。
セルフィナが振り返った。
「報告は以上です」
「東側から進む。十二歩先で再確認しよう」
誰からも異論は出ない。
レグルスが訓練槍を構え、前方へ立つ。
「進行。ティアナは中央。フィアは右。アルトはティアナの後方。セルフィナは確認距離を保て」
命令ではない。
一時的な前方判断役として、全員へ聞こえるよう位置を共有している。
十二歩先へ着く直前、遮蔽板の間から振り子状の障害物が落ちてきた。
「受けるよ!」
ティアナが一歩前へ出る。
幅広い盾が、厚い布を巻かれた木製の振り子を正面から受け止めた。
鈍い衝撃が響く。
ティアナの足は動かない。
それでも、正面だけを見続けなかった。
「背後四名、全員いる! 東の退路は使用可能!」
盾を押し返そうとせず、障害物の位置を固定する。
「フィア、右上の赤紐!」
僕が言うより早く、フィアの視線は制御紐を捉えていた。
訓練剣が一度だけ走る。
切ったのは赤く指定された一本だけ。
周囲の紐と、模擬術式線の板は残っている。仕掛け全体を崩さず、振り子の動きだけを止めた。
「前方、通行可能。進行する」
レグルスが告げる。
僕たちは中央区画へ入った。
訓練用人形は、床へ固定された留め具に繋がれている。
僕は木剣を鞘代わりの輪へ戻し、右手で留め具へ触れた。
複雑ではない。
けれど、左側から手を入れれば封魔具を障害物へ近づけることになる。
右足を半歩。
腰を僅かに落とし、右手だけで留め具の裏へ指を入れる。
一度目で外れた。
「解除した」
「搬出へ移るよ。背後四名、東側退路――」
ティアナが報告する途中、区画外で木札の打ち合う音が鳴った。
成人職員が東側の札を閉鎖へ裏返す。
同時に、西側の通路へ新しい経路札が立てられた。
「東側閉鎖。西へ――」
レグルスが言いかける。
「待ってください」
セルフィナが西側の札へ近づいた。
札そのものには触れない。
根元の土と、支柱の向きを見る。
「この札は置き直されています。土の沈み方が浅く、支柱の古い向きとも一致しません。西側が安全だという表示には疑いがあります」
レグルスの判断は早かった。
「停止! 全員、その場を維持!」
以前なら、前方へ道が見えた瞬間に進もうとしたかもしれない。
今のレグルスは、味方と人形の位置を確認してから槍の向きを変えた。
「北側は推測上の危険。西側は偽札の可能性。第二退路を探す」
「南側の遮蔽板に模擬術式線がある」
フィアが言った。
板には複数の赤い線が描かれている。
全てを切れば、遮蔽板そのものが倒れて搬送路を塞ぐ仕組みだ。
「下から二本目だけ色が濃い」
セルフィナが確認棒で示す。
「接続先は右側の留め具です。そこまでは確認できます」
「フィア、切れる?」
ティアナが盾を南へ向け直しながら尋ねる。
「切る」
フィアの訓練剣が、指定された一本だけを断った。
遮蔽板の一部が横へ開き、第二退路が現れる。
「南側、退路確認!」
ティアナが声を上げる。
「僕が先頭を確認する。ティアナとレグルスは人形を。フィアは右。セルフィナは後方確認」
僕は全員の位置を目で追った。
五人いる。
訓練用人形もある。
「移動する」
レグルスとティアナが人形の重量を受ける。
僕は先頭で足元の仕掛けを確認し、フィアは開いた遮蔽板が戻らない位置を保った。
セルフィナが後方から声を届ける。
「東側の仕掛けに変化なし。追従する障害物は確認できません」
昔のままではない。
けれど、僕が次の一歩を置く場所にはティアナの盾が届く。
フィアが切った線の先へ、レグルスが迷わず進む。
誰か一人が全てを決めなくても、呼吸が繋がっていく。
安全区画へ人形を運び込んだ瞬間、成人指導騎士の停止旗が上がった。
「第三仮編成、停止」
僕たちは即座に足を止めた。
訓練終了後、レイシア団長が記録板を持って五人の前へ立つ。
「合同訓練の基準達成を確認しました。ただし、改善点があります」
柔らかな声なのに、僕は自然と背筋を伸ばした。
「アルト。留め具までの動作は最小限でした。ですが、最初にセルフィナの報告が終わる前に足を出しかけましたね」
「はい」
「早いことと、見切り発車は違います。灰鬼で学んでいることを、次は最初の一歩から使ってください」
言い逃れできない。
僕は確かに、東側が安全だと聞いた瞬間に動きかけた。
「ティアナ。正面の障害物を受けながら、背後の人数と退路を報告できていました。土亀の防衛基準が連携へ加わっています」
「はい!」
「ただし、盾を南へ変える際に足が一度交差しました。実際の圧力下では転倒へ繋がります」
「次は直します」
「フィア。切断対象を限定し、仕掛け全体を崩さなかった判断は適切です。ただし二本目は、セルフィナの確認がなければ選べませんでした。報告を待ったことも評価します」
フィアが短く頷く。
「レグルス。停止と後退の判断は、以前の記録より早くなっています。前進だけを選ばなかったことも適切です。ただ、セルフィナの再確認を待つ間、全員の位置報告が一呼吸遅れました」
「次は先に位置を取る」
「セルフィナ。確定事項と推測を分け、偽札の根拠を示した報告は明確でした。ですが、東側の確認へ集中した際、南側の死角が増えています。一人で全方向を確認しようとしないでください」
「承知しました。次回は確認範囲そのものを先に共有します」
レイシア団長は、五人全員の記録へ個別の印をつけた。
「本日の結果は、第三仮編成による合同訓練基準達成です。正式な戦団結成、所属変更、戦団名登録を認めるものではありません」
成人記録官が戦団名欄を確認する。
そこは、訓練前と同じく空白だった。
僕たちは別々の騎士団員だ。
セルフィナも、四人の欄へ加わったわけではない。
それでも、五人で一つの人形を安全区画へ運べた。
今は、それで十分だった。
正式な訓練終了が宣言され、僕は装具帯を外し始めた。
右手で留め具を外した、その時だった。
左腕の内側を、冷たい何かが一度だけ通った。
水でも風でもない。
肘から封魔具へ向かって、内側だけを細い脈が走ったような感覚。
痛みはほとんどない。
空腹も変わらない。
それでも、今までとは違う。
僕は装具から手を離し、すぐ右手を上げた。
「報告します。左腕に、今までと違う冷たい脈動が一度ありました」
レイシア団長の水色の瞳が、真っ直ぐ僕へ向く。
表情は崩れなかった。
「全員、その場で移動停止。ローディン騎士、監督対応を。成人治療職員と成人封印担当はアルトの確認をお願いします」
「了解した」
ローディンが僕の右側へ立つ。
「追加症状は」
「強い痛みはありません。空腹、味覚、嗅覚、視覚にも変化はありません。契約境界の自覚も普段と同じです」
「自分で触るな」
「はい」
成人治療職員が僕の同意を確認し、治療布の必要な部分だけを緩める。
成人封印担当は黒銀色の封魔具へ直接触れず、留め具と固定位置を順に確認した。
二重固定は維持されている。
黒い紋章も肩の手前で止まったままだ。
ただ、そのうちの一本だけが、一呼吸ほど濃く見えたという。
確認を続ける間に、色は元へ戻った。
「封魔具に破損なし。二重固定も正常です」
「魔力状態に急変なし。異常な空腹、知覚変化、意識変容も認めません」
成人治療職員が記録する。
「第一覚醒および《暴食》の発生なし。本人が申告した冷感と紋章の一時的変色を、微細な変動として記録します。原因は現時点で未確定です」
「本日の追加訓練は禁止。再発した場合は、強弱に関係なく即時報告を」
「分かりました」
レイシア団長は、成人側の確認が終わるまで一歩も近づかなかった。
治療判断も封印判断も奪わない。
けれど、記録板を持つ指先には、僅かに力が入っていた。
その後、レイシア団長は監督記録を成人指導騎士へ正式に引き渡した。
僕はローディンの監督下で、訓練区画脇の休憩場所へ移る。
フィアたちは別の場所で装具返却と個人記録の確認へ進んだ。誰も僕たちの会話へ割り込もうとはしなかった。
ローディンと成人治療職員は、こちらを見られる距離にいる。
それでも、石造りの低い壁に囲まれた休憩席には、僕とレイシアの二人だけだった。
レイシアは僕の隣へ腰を下ろす。
公の監督役として浮かべていた微笑みが、少しだけ柔らかくなった。
「灰鬼の制服、似合っています」
僕の灰黒色の袖を見て、穏やかに続ける。
「……似合ってしまうのは、少しだけ悔しいですけど」
「悔しいの?」
「だって、本当なら水蝶の制服を着たアルトを、私が一番近くで見たかったですから」
言葉は重いのに、声は明るい。
「でも、灰鬼で剣を学ぼうと決めたアルトも、私は応援しています。制服が違っても、アルトが私の大切な幼なじみであることは変わりません」
レイシアは訓練後と書かれた包みを開いた。
中には、柔らかいパンと薄く切った肉、煮た根菜が整然と入っている。
「全部食べなくてもいいですよ。残りは帰り道の分と一緒に持って帰ってください」
「それでも多いと思う」
「少ないより安心です」
昔から変わらない答えだった。
僕は右手でパンを取る。
「空腹は普段どおり?」
「うん。訓練した後の普通の空腹だよ」
「では食べてください。普段と違ったら、食べる前に報告です」
「約束する」
僕が一口食べると、レイシアの肩から僅かに力が抜けた。
「小さいからと黙らずに、ちゃんと教えてくれましたね」
「レイシアと約束したから」
「約束したからだけですか?」
水色の瞳が、少しだけ近づく。
僕は左腕へ目を落とした。
封魔具も治療布も、成人側が確認した状態で固定されている。
「灰鬼でも、異変は隠すなって何度も言われてる。それに、自分でも……」
言葉が一度止まった。
レイシアは急かさなかった。
ただ、僕が続きを言うまで待っていた。
「少しだけ、怖かった」
口にすると、左腕を走った冷たさが、遅れて胸の奥へ戻ってきた。
痛くはなかった。
何かが起きたわけでもない。
だからこそ、次に何が起きるか分からないことが怖かった。
レイシアの右手が伸びる。
封魔具のある左腕ではなく、僕の右袖の端をそっと掴んだ。
「怖かったと、私に言ってくれてありがとうございます」
「変じゃない?」
「嬉しいという意味なら、少し変かもしれません」
レイシアは寂しそうに笑った。
「でも、アルトは昔から、痛いことも苦しいことも、私に心配をかけないように隠しますから」
「もう隠さない。痛みも、空腹も、変だと思ったことも報告する」
「はい。灰鬼の監督騎士にも、成人治療職員にも、成人封印担当にも。そして、私にも教えてください」
誰より先に自分へ言えとは求めない。
正式な監督系統を無視させようともしない。
それでも、自分だけ知らない場所へ置いていかれることを、レイシアは恐れている。
「私は待つことができます」
袖を掴む指が、ほんの少し強くなる。
「ずっと待ってきましたから。でも、何も知らされないまま待つのは嫌です」
「レイシア……」
「痛い時も、怖い時も、私へ来る道まで閉じないでください」
「閉じないよ」
僕は迷わず答えた。
「水蝶騎士団本部への面会申請も、昨日出したから」
レイシアが目を丸くする。
すぐに、その顔が嬉しそうにほどけた。
「受け取っています。次の休養日の午後を空けました」
「早いね」
「アルトが会いに来てくれるのに、ほかの予定を入れる理由がありません」
団長としては、きっと簡単な調整ではない。
それでもレイシアは、まるで当たり前のことのように言う。
「僕から会いに行くって約束したから」
「はい。楽しみに待っています」
レイシアは僕の右袖を掴んだまま、少しだけ肩を寄せた。
「あと少しだけ、団長ではなくレイシアでいさせて。」
「もちろん」
公の場では、七大魔法騎士として誰より冷静に僕たちを見ていた。
異変が起きれば手順を乱さず、専門の成人職員へ判断を委ねた。
それでも二人になれば、孤児院にいた頃と同じように、僕の袖を離したくないと願ってくれる。
過去を知っている。
今の僕を見ている。
そして、僕がいつか辿り着きたい場所で待っている。
戦団名の欄は空白のままでも、レイシアの隣へ立ちたいという僕の願いだけは、一度も空白になったことがなかった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!!」
と思ったら
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