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『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


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第103話 最初の指名

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!



開会式から半刻後、七つの団長席の前へ、最初の指名札が並べられた。


一騎士団につき二枚。


候補者席の左右には、七つの団旗ごとに暫定配属席が用意されている。


まだ、どの席にも人はいない。


僕の胸元にある赤縁の候補札も、指名を受けた証ではなかった。


特殊候補枠。


黒銀色の封魔具、二重固定、第一覚醒の無断使用禁止、単独任務禁止。


その全てを七人の団長へ開示された候補だという印だ。


「一巡目の指名規則を確認します」


成人選抜官が中央へ進み出た。


「各騎士団は最大二名まで指名できます。指名を見送ることも可能です。指名候補が重複した場合、配属は確定せず、後の調整へ移ります」


団長席の前では、成人事務職員が指名札を整えている。


「候補者の受諾確認は、七騎士団全ての指名提出後に行います。単独指名を受諾した者のみ、本日付で暫定配属成立となります」


つまり、最初に名前を呼ばれても、その場で配属が決まるとは限らない。


全ての指名が出揃うまで、誰と誰が重なるかは分からない。


僕は無意識に、赤い縁を指で押さえていた。


「アルト」


隣のフィアが呼ぶ。


「何?」


「札、握りすぎ」


手元を見ると、候補札の端が僅かに曲がっていた。


「……そうかな」


「折れる」


フィアはそれだけ言い、七つの団長席へ視線を戻した。


自分の希望騎士団を空白にした彼女も、結果を待っている。


それでも不安を長い言葉にせず、真っすぐ前を見ていた。


「一巡目、第一指名。土亀騎士団」


ゴウセル団長が立ち上がった。


二枚の札へ、それぞれ候補者の名を書く。


成人事務職員が一枚目を受け取り、成人選抜官へ渡した。


「土亀騎士団、第一指名。ティアナ」


観覧席に小さなどよめきが広がった。


ティアナは立ち上がらない。


受諾確認は、全団の指名が終わった後だ。


それでも背筋を伸ばし、正面からゴウセル団長を見返している。


ゴウセル団長はティアナの父親だ。


僕たちにとっては既知の事実でも、王国全体が注目する選抜で実の娘を指名すれば、縁故を疑う声が出るのは避けられない。


「確認します」


成人選抜官が公式記録を読み上げた。


「ゴウセル団長と候補者ティアナは実の親子です。候補記録は土亀騎士団外の成人記録官三名による独立査定を受けています。査定結果に異議はありません」


ゴウセル団長はざわめきが収まるまで待った。


やがて、低く重い声を響かせる。


「私の娘だから選ぶのではない」


ティアナの指先が、膝の上で僅かに動いた。


「同時に、私の娘だから選ばぬというのも公正ではない」


ゴウセル団長が手にしたのは、父親の記憶ではなく、学院侵攻時の正式記録だった。


「ティアナは崩れた床、残った根、避難路、成人保守職員の位置を把握した。自分一人で防衛線を支えようとせず、守る対象と敵の魔力を分け、他者が役割を果たせる足場を作った」


ティアナは目を逸らさない。


けれど、普段よりほんの少しだけ呼吸が深かった。


「土亀が求めるのは、壁を高くする者だけではない。壁の内側へ誰を守り、どこへ退路を残すかを決められる者だ」


父親から娘へ向けた言葉でありながら、そこに甘さはなかった。


候補者を選ぶ団長の評価だった。


「第二指名。メルト」


続いて二枚目の札が掲げられた。


メルトが驚いて目を見開く。


ゴウセル団長の視線はティアナではなく、今度はメルトだけへ向けられた。


「物資の残数、補給順、運搬経路。戦闘の外側にある仕事を、最後まで軽視しなかった」


メルトの表情から、驚きが少しずつ消えていく。


「ティアナの付き添いとしてではない。拠点を動かし続ける一人の候補者として指名する」


メルトは胸元の候補札を握り、深く頷いた。


まだ返答の時ではない。


それでも、その目には既に自分の答えがあった。


「第二指名、炎獅子騎士団」


イグナシオ団長は二枚のうち、一枚だけを手に取った。


「炎獅子騎士団、第一指名。レグルス」


レグルスの名が大演武場へ響く。


彼は僅かに顎を引いただけで、驚きも気負いも表へ出さなかった。


イグナシオ団長が豪快に笑う。


「風属性で銀槍か。だからどうした!」


観覧席のどよめきを、大声が吹き飛ばす。


「炎獅子の炎は、属性の名ではない! 危険の前へ出る覚悟と、後ろの者へ退路を残す意志だ!」


イグナシオ団長は記録紙を掲げた。


「成人盾列から勝手に突出せず、与えられた間合いで装甲を開いた。退けという命令にも従った。勇敢さと無謀を取り違えなかった」


レグルスの口元が、僅かに上がる。


炎属性ではないことを気にした様子はない。


炎獅子という名の意味を、真正面から受け止めていた。


「第二枠は使用しない」


イグナシオ団長は残った札を成人事務職員へ返した。


「今は、この一人で十分だ」


「第三指名、光龍騎士団」


ギルバート団長は迷わず一枚目へ名を書いた。


「光龍騎士団、第一指名。ユリウス」


ユリウスが静かに背筋を正す。


「学院侵攻時、正門を守り、正式な配置変更を受けるまで持ち場を離れなかった」


ギルバート団長の声は大きくない。


それでも一語ずつ、会場の端まで明瞭に届いた。


「増援を案内した後も、人数札と物資札を成人警備隊長へ渡し、指揮系統を乱さなかった。目立つ場所へ急ぐより、命じられた責任を果たすことを選んだ」


光龍騎士団では、責任を持つ者ほど隊列の前へ立つ。


同時に、責任を持つ場所から勝手に離れることも許されない。


ユリウスの正門での判断は、その原則に合っていた。


「第二枠は留保する」


ギルバート団長も、一名だけで指名を終えた。


そして、次の騎士団名が呼ばれる。


「第四指名、水蝶騎士団」


レイシア団長が立ち上がった。


彼女は二枚の指名札を見比べなかった。


一枚目を迷いなく取り、最初から決めていた名を書き込む。


成人事務職員が札を受け取った時、レイシア団長は記録紙ではなく、僕を見ていた。


「水蝶騎士団、第一指名――アルト」


一瞬、音が消えた。


次の瞬間、大演武場全体が大きくざわめく。


視線が僕の赤い候補札へ集中した。


魔力量は学年下位。


属性適性はなし。


封魔具を装着し、《暴食》の第一覚醒は完全制御と認められていない。


普通の候補者とは違う条件が、あまりに多い。


「特殊候補であることを確認します」


成人選抜官が黒い封印帯の付いた資料を開いた。


「黒銀色の封魔具を継続装着。二重固定を維持。第一覚醒の無断使用を禁止。単独任務を認めず、正式な監督騎士を必要とします」


レイシア団長は一度も僕から目を逸らさなかった。


「承知しています」


「契約境界、知覚、空腹、左腕に異常が生じた場合、即時の任務中断が必要です。危険性が認められれば、騎士団任務より検査と隔離判断が優先されます」


「その全てを承知しています」


声に迷いはなかった。


彼女は候補資料を読む以前から僕を知っている。


姿も、声も、封魔具の下に抱えた危険も。


そして、僕へ向ける感情が決して軽いものではないことを、僕も知っていた。


「レイシア団長。条件を承知した上で、第一指名を維持しますか」


「維持します」


間を置くことさえなかった。


「アルトの危険性も、その危険を誰へ向けないと選んだのかも、私は知っています」


レイシア団長の声は静かだった。


それでも、他の誰かへ譲る余地を一つも残していない。


「彼は災厄級の再生魔力を流し込まれても、人間も、精霊も、学院結界も喰わなかった。異変を隠さず、成人指揮へ従い、自分一人の勝利だとも主張しなかった」


公的な評価を述べている。


けれど、それだけではない。


「監督条件が必要なら、水蝶騎士団が引き受けます」


レイシア団長の目が、真っすぐ僕を捉える。


「危険性まで含めて知っています。だからこそ、彼を他の誰かへ委ねるつもりはありません」


観覧席が再びざわめいた。


団長としての責任。


そして、それだけでは説明しきれないほど深く重い執着。


僕を知らない者には、厳格な監督意思に聞こえたかもしれない。


けれど僕には、その言葉の奥にあるものまで届いていた。


「……強い言い方ね」


フィアが小さく言った。


「うん」


「でも、迷ってない」


それ以上、フィアは何も言わなかった。


レイシア団長はようやく僕から視線を外し、二枚目の札を取った。


「水蝶騎士団、第二指名。メルナ」


今度はメルナが肩を跳ねさせた。


「避難者が混乱した場所では、攻撃力より先に進む方向が必要になります。情報を正しく渡し、戦えない者を安全な場所へ導く。その役割を低く扱わなかった判断を評価します」


メルナは一度息をのみ、真剣な顔でレイシア団長を見返した。


水蝶の二枚の指名札が、成人記録官の前へ置かれる。


僕の札には重複確認前を示す留め具が付けられ、まだ受諾欄は開かれなかった。


「第五指名、風鷹騎士団」


シルフィ団長は二枚の札へ、別々の候補番号を書いた。


呼ばれたのは双子だった。


一人ずつ、別の候補番号で読み上げられる。


「二人で一つだから選んだのではないわ」


シルフィ団長は二人を順番に見る。


「それぞれの記録を読み、それぞれを必要だと判断しました」


互いを支えながら、片方の判断へ頼り切らない。


故郷を守るという同じ希望を持っていても、二人は別々の人間だ。


双子も返事を重ねず、一人ずつ頷いた。


「第六指名、雷虎騎士団」


アーサー団長がサー・イーヴリンへ一枚の札を渡した。


呼ばれたのは、僕たちの同期ではない。


北部地方学院出身の候補者だった。


実地試験では、負傷者を救うために任務目標から撤退している。


結果は敗北。


命令未達も、本人の報告書へそのまま残されていた。


「あなたは敗北を隠しませんでした」


アーサー団長の澄んだ声が響く。


「はい。任務を達成できなかったことは事実です」


「負傷者を置いて進めば、試験には勝てたかもしれない」


候補者は僅かに俯き、それでも答えた。


「それでも、置いてはいけませんでした」


アーサー団長が静かに頷く。


「雷虎騎士団は、その選択と、結果を偽らなかった誠実さを指名します」


なぜ多数の有力候補ではなく、その一人を選んだのか。


語られた理由だけが全てなのか。


僕には分からなかった。


セルフィナもアーサー団長を見つめていたが、答えを知った顔はしていない。


「第七指名、灰鬼騎士団」


ガイ団長は椅子へ深く座ったまま、二枚の札を眺めた。


一枚を取り上げ、名前を書く。


成人事務職員へ渡す直前、僕の赤い候補札を見て低く笑った。


「灰鬼騎士団、第一指名――アルト」


会場が今日一番の騒ぎに包まれた。


水蝶騎士団と灰鬼騎士団。


二枚の第一指名札に、同じ僕の名が記されている。


レイシア団長の表情が変わった。


微笑んでいたわけではない。


それでも、ガイ団長を見る目から、僅かに残っていた柔らかさが完全に消えた。


「ガイ団長」


「なんだ」


「その指名を、取り下げる意思はありますか」


「ないな」


即答だった。


ガイ団長は僕だけでなく、隣のフィア、その先のセルフィナへも視線を動かした。


「条件が多い。魔力は少ない。属性もない。なのに、災厄の魔力だけ選んで喰って、最後は第一階位を心臓へ届かせた」


無精髭を撫で、面白そうに笑う。


「これを取らずに、何を取るんだよ」


「アルトは物ではありません」


レイシア団長の声が一段低くなる。


「知ってる。だから本人にも聞くんだろ」


二人の視線が、団長席の間でぶつかった。


まだ立ち上がってはいない。


武器へ触れてもいない。


それでも、周囲の空気だけが張り詰める。


「重複指名を確認しました」


成人選抜官がすぐに割って入った。


「候補者アルトの受諾確認は保留。後の調整手続きへ移します。両騎士団長は、規定に従ってください」


レイシア団長は僕を一度見た。


深く、強く、簡単には諦めない目だった。


「従います」


ガイ団長も肩をすくめる。


「統括に怒られるのは面倒だからな」


灰鬼騎士団の二枚目は白紙で返された。


七騎士団の指名が出揃い、単独指名者の受諾確認が始まる。


ティアナは候補者席から立ち、ゴウセル団長を正面から見た。


「候補者として、指名をお受けします」


娘として甘える言葉ではなかった。


父親へ反発する言葉でもない。


ゴウセル団長も、団長として頷いた。


その一瞬だけ、威厳ある目元に父親の安堵が浮かんだ。


メルトも自分の言葉で土亀騎士団の指名を受ける。


レグルスは炎獅子騎士団。


ユリウスは光龍騎士団。


メルナは水蝶騎士団。


双子は一人ずつ風鷹騎士団。


北部地方学院の候補者は雷虎騎士団。


それぞれの暫定配属が成立した。


ミナやフィア、セルフィナを含め、まだ指名を待つ候補者も残っている。


僕は水蝶と灰鬼の重複指名によって、元の席から動けない。


ティアナが土亀の暫定配属席へ向かう途中、僕の前で足を止めた。


「アルト」


「おめでとう、ティアナ」


「ありがとう」


彼女は水蝶と灰鬼の指名札を見比べる。


「大変そうね」


「まだ何も始まってないはずなんだけどね」


「もう始まってる顔をしているわ、二人とも」


団長席を見ると、レイシア団長は候補資料を確認しながらも、時折ガイ団長へ冷たい視線を向けていた。


ガイ団長は全く気にしていない。


ティアナは小さく息を吐いた。


「どこに決まっても、王都にはいるんでしょう?」


「うん」


「なら、終わりじゃない」


そう言って、ティアナは父親の待つ土亀の団旗へ歩いていった。


レグルスも炎獅子の席へ移る前に立ち止まる。


「先に行く」


「うん」


「だが、競争から降りたわけではない。お前が水蝶へ行こうと、灰鬼へ行こうと変わらん」


「僕も変えるつもりはないよ」


レグルスは満足そうに頷き、赤金の団旗へ進んだ。


フィアは隣に残っている。


セルフィナも、外部協力候補の札を膝へ置いたまま動かない。


「二つから呼ばれた感想は?」


フィアが尋ねる。


「まだ、うまく考えられない」


「そう」


「フィアは?」


「まだ一巡目よ」


短く答え、彼女は正面を向いた。


「勝手に終わった顔をしないで」


「うん」


セルフィナも七つの暫定配属席を見渡した。


「全騎士団の本部と主要詰所は王都にあります。所属が分かれることと、関係が切れることは別です」


学院で隣にいた仲間たちは、別々の団旗の下へ移り始めた。


けれど、誰も王都から消えるわけではない。


僕自身も、水蝶と灰鬼の二枚の指名札の間に立っている。


行き先はまだ決まっていない。


それでも、離れた席へ向かう背中を、別れだとは思わなかった。


七つの団旗が僕たちの立つ場所を分けても、その全てが集まる王都なら、これは別れではなかった。

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


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 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


 ブックマークといただけると本当に嬉しいです。


 何卒よろしくお願いいたします。

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