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『属性適性なしの学院最下位、迷宮で見捨てられた僕は七罪の魔神と契約する ~最強英雄になった幼なじみに追いつくまで~  作者: ドキツトム


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第102話 七つの団旗

「この場面を挿絵で見たい!」と思った箇所がありましたら、挿絵希望度を★1〜5で評価し、場面と一緒に感想欄で教えてください!


例:『〇〇と△△が対峙する場面/★★★★★』


皆さまの声を、今後の挿絵制作の参考にさせていただきます!

登録翌日の正午、王都中央ドラフト会場に設けられた七つの門が、七度の号鐘に合わせて開き始めた。


一度目の鐘が鳴る。


分厚い門の錠が外された。


二度目、三度目と鐘が続くたび、別の門からも金具の擦れる重い音が響く。


僕たち候補者は、大演武場の中央に設けられた席へ並んでいた。


胸元には一人ずつ候補札がある。


白い候補札の中で、僕のものだけは赤縁だ。


昨日、特殊候補として正式に登録された証だった。


騎士団へ指名された証ではない。


むしろ、監視条件や単独任務禁止まで含めた全記録を、七人の団長へ見せる候補だと示している。


左腕には治療布と黒銀色の封魔具。


二重固定もそのままだ。


大演武場まで歩いてきたことで、右脚には薄い痺れが戻っていた。けれど、座って待つ分には問題ない。


「候補者は指定席から動かないでください」


中央通路に立つ成人選抜官が告げた。


「各騎士団の随行隊は、定められた進行区画のみを使用します。成人警備員の指示なく、互いの区画へ入ることを禁じます」


七つの門から団長たちが入ってくるとはいえ、全軍が集まるわけではない。


団旗手、副官、護衛、そして選抜された少数の随行隊だけだ。


それでも、大演武場を取り囲む一般観覧席は、開会前から人で埋まっていた。


貴族席には色の異なる家紋旗が並び、その下には王国の成人職員や地方警備隊の代表が座っている。


候補者席の正面には、七つの団長席。


その中央奥には、さらに一段高い席が一つだけ設けられていた。


騎士団長統括席。


今は空いている。


名前を示す札も、持ち主を推測できる品も置かれていなかった。


「アルト」


隣からフィアの声が届く。


「足、動かしておいた方がいいわ」


「分かる?」


「座ってから右脚の位置を三回変えているもの」


数えていたらしい。


僕は周囲の邪魔にならない範囲で、右足首をゆっくり動かした。


「これなら大丈夫」


「無理なら申告して」


「うん」


フィアはそれ以上言わず、正面の門へ視線を戻した。


その目は、旗だけを見ているわけではない。


各門の成人警備員。


団長席までの距離。


随行隊が武器を携える位置。


開いた後の門が作る死角。


学院の実技訓練を見ていた時より、観察する箇所が増えている。


四度目の鐘が鳴り終わり、最初の門が完全に開いた。


赤金の団旗が、先頭に現れる。


炎を背負う獅子の刺繍。


「王国七騎士団――炎獅子騎士団、入場!」


成人選抜官の声と同時に、揃った足音が大演武場を震わせた。


派手な団旗とは対照的に、隊列は乱れていない。


重装の団員が外側を固め、その内側を軽装の団員が進む。勢いはあるが、前後左右の間隔は一定だ。


その先頭を歩く男は、周囲の団員よりも一回り大きく見えた。


大柄な身体。


肩へ掛けた赤金の外套。


露出した腕や頬には、古い傷がいくつも残っている。


イグナシオ・ボルケーノ団長。


イグナシオ団長は進行区画の中央で足を止め、候補者席を見渡した。


それだけで、空気が熱を持ったように感じる。


「候補者ども!」


声が大演武場の端まで届いた。


何人かが驚いて肩を揺らす。


イグナシオ団長は、その反応を見て豪快に笑った。


「胸を張れ! 今日ここに立った覚悟から、選抜は始まっている! 俯いた顔を見せたい奴など、一人もおらんだろう!」


候補者たちの背筋が、次々に伸びていく。


ただ大声を出したのではない。


団長たちを前に萎縮し始めた僕たちを見て、わざと最初に緊張を吹き飛ばしたのだ。


「そういうことか」


少し離れた席で、レグルスが呟いた。


その視線はイグナシオ団長だけでなく、炎獅子騎士団の隊列全体を追っている。


「声で前を向かせ、その間にも外周を固めている。勢いだけの騎士団ではないな」


炎獅子を第一希望にしたレグルスの顔には、迷いよりも確信が増していた。


イグナシオ団長が団長席へ進む。


炎獅子騎士団の随行隊は、指定区画へ入ると同時に向きを変え、候補者席と観覧席の双方を守れる位置で停止した。


次の門が開く。


姿を現したのは、亀甲を思わせる厚い団旗だった。


「土亀騎士団、入場!」


先ほどとは違う足音が響く。


一歩ごとに重い。


だが、不快なほど床を叩く者はいなかった。


厚い盾。


補修用の工具。


折り畳まれた担架。


後列には物資袋を分担して持つ団員までいる。


式典用に見栄えだけを整えた隊列ではない。


このまま壁が崩れても、避難路を作りながら進めそうだった。


中央を歩くゴウセル・テラフォード団長は、重厚な装備の中でもひときわ威厳があった。


ゴウセル団長は候補者を見る前に、開いた門と左右の観覧席、成人警備員の配置へ視線を走らせた。


自分が座る椅子より、会場全体の安全を先に確かめたのだ。


やがて候補者席を見渡す。


ざわめいていた観覧席が、それだけで静かになった。


「大声も飾りも要らぬ」


低い声が、静まった会場へ届く。


「諸君が積み上げた記録を見せよ。土亀は、結果だけでなく、そこへ至るまでの足場を見る」


短い言葉だった。


ゴウセル団長は礼を一つ返し、団長席へ向かう。


「後列が一度も詰まらなかったわ」


ティアナが小さく言った。


「先頭が止まる前に、運搬役が次の立ち位置へ動いてる」


隣のメルトも頷く。


「盾だけじゃないね。あの荷物、一部は簡易天幕と飲み水。式典なのに、避難者が出る場合まで想定してる」


二人が土亀騎士団を第一希望にした理由が、同じ名前を書いたからではないと分かる。


ティアナは築城と避難路。


メルトは補給と拠点運営。


見ている場所は違うが、二人ともゴウセル団長の背後にある仕組みを見ていた。


三番目の門が開く。


水蝶の団旗が、団旗手の歩みに合わせて滑らかに進んできた。


「水蝶騎士団、入場!」


随行隊は二列で門をくぐった。


中央区画へ入った瞬間、声を掛け合うことなく配置を変える。二列が一列へ重なり、また左右へ分かれ、観覧席の視界を遮らない位置に収まった。


水が障害物を避けて流れるような動きだった。


先頭に立つのは、レイシア


三番目の門が開いた瞬間、僕は僅かに息を止めた。


水蝶の団旗の下を歩いてきたのは、見間違えるはずもないレイシアだった。


彼女を初めて見るわけではない。


けれど、水蝶騎士団長として整然とした隊列の先頭を歩く姿は、僕の知る彼女と同じでありながら、ひどく遠く見えた。


レイシア団長が入場完了を告げる。


その声で、昨日、閉じた審査室の向こうから聞こえた女性の声が彼女だったのだと確信した。


やがてレイシア団長の視線が、僕の赤い候補札で止まる。


驚きはなかった。


ただ、僕の知っている眼差しの奥に、候補者を選ぶ団長としての厳しさが重なっていた。


水蝶騎士団が定位置へ着く。


四番目の門が開いた時、それまでとは違う沈黙が会場へ落ちた。


青と白銀の団旗。


雷を背負う虎の紋章。


その下には、別の時代から受け継がれたような白百合の意匠が残っている。


「雷虎騎士団、入場!」


長い金髪を高く束ねた女性が、先頭を歩いてきた。


青と白銀を基調とする細身の甲冑。


肩には短い紺色のマント。


腰には、華美な装飾を必要としないほど存在感のある聖剣エクスカリバー。


アーサー・ペンドラゴン団長。


若々しい姿なのに、候補者や観覧客と同じ時間を生きているとは思えないほどの威厳がある。


その半歩後ろには、槍を携えたサー・イーヴリン。


さらに後方を、白百合の意匠を甲冑へ残す古参騎士たちが進んでいる。


全員が新しい雷虎の団旗へ従っている。


それでも隊列の組み方は、新設された騎士団のものには見えなかった。


長い年月を同じ指揮官の下で進んできたような、呼吸の揃い方だった。


アーサー団長は進行区画の中央で止まり、候補者席へ一礼した。


「雷虎騎士団、招集に応じ参上した。候補者諸君の記録は、公平に見届けよう」


澄んだ声だった。


冷たくはない。


かといって、甘さで緊張を解く声でもない。


短い言葉だけで、自分がここにいる責任を示していた。


「古いですね」


セルフィナが呟く。


「甲冑が?」


僕が尋ねると、彼女は首を横へ振った。


「隊列です。装備は現在の王国規格ですが、互いの間隔や副官の位置が、他の騎士団と違います」


「何の隊列か分かる?」


「いいえ。ただ、昨日や今日だけで身についたものではありません」


セルフィナにも、それ以上は分からないらしい。


アーサー団長は団長席へ着くと、エクスカリバーが椅子へ触れない位置を確かめて腰を下ろした。


青い瞳が、静かに前を向く。


僕たち候補者を見ているようにも見えた。


空いた騎士団長統括席を見ているようにも見えた。


けれど、そのどちらとも断定できない。


五番目の門から現れた団旗は、灰色だった。


余計な縁飾りは少ない。


鬼の紋章も、遠くから判別するための太い線だけで刺繍されている。


「灰鬼騎士団、入場!」


隊列は、これまでで最も緩く見えた。


団員ごとの装備も完全には揃っていない。


剣を持つ者。


盾を持つ者。


工具や縄を持つ者。


一見すると統一感がない。


けれど、誰一人として通路を塞いでいなかった。


成人警備員の配置を避けながら、退路と団長席への経路を確保している。


武具にも傷はあるが、刃や留め具の手入れは行き届いていた。


その中央を、巨大な大剣を背負った男が歩いてくる。


整えきっていない髪。


雑に羽織った団長外套。


そして、式典へ出る前に手を加えた形跡のない無精髭。


ガイ・ゴルテイト団長。


ガイ団長は観覧席にも候補者席にも大した興味がないように歩いていた。


途中で一度だけ足を止める。


視線の先にあったのは、僕の赤い候補札だった。


「へえ」


低い笑い声。


昨日、団長審査室から聞こえた男の声だ。


ガイ団長は僕の顔、左腕の封魔具、もう一度候補札を見た。


面白いものを見つけた時の目だった。


すぐ隣にいるフィアと、少し離れたセルフィナへも視線が動く。


けれど、何も言わない。


ガイ団長はそのまま団長席へ進み、大剣を椅子の横へ立てかけた。


「雑に見えて、死角がない」


フィアが灰鬼騎士団の随行隊を見ながら言った。


「装備が揃っていないんじゃない。役割ごとに違う。退路も最初から残してる」


「団長席へ着くまでに、会場の構造を確認してたってこと?」


「団員たちはね。ガイ団長がどこまで見ていたかは分からないけど」


ガイ団長本人は、椅子へ深く座り、早くも退屈そうにしている。


それでも僕の候補札を見た時だけ、確かに表情が変わった。


六番目の門が開く。


白地に光龍を描いた団旗が掲げられた。


「光龍騎士団、入場!」


一分の隙もない礼装。


磨かれた甲冑。


揃った歩幅。


先頭には、ギルバート・レイツェル団長がいた。


ギルバート団長の後ろには、明らかに高い身分を示す紋章を付けた騎士たちが並んでいる。


けれど、彼らは護衛される後列にはいない。


団長に近い前列を固めていた。


地位を持つ者ほど、危険に近い場所へ立つ。


それが光龍騎士団の配置らしい。


貴族席の何人もの代表が立ち上がり、ギルバート団長へ礼を送る。


ギルバート団長はすぐには応じなかった。


先に一般観覧席へ。


続いて僕たち候補者へ。


最後に貴族席へ礼を返す。


「責任を持つ者から前へ立つ」


ギルバート団長の声が、静かに広がった。


「光龍騎士団は、その原則を自らにも候補者にも求める」


長い演説はなかった。


けれど、先頭を歩いた本人の姿が、言葉の意味を証明していた。


「王都防衛でも、前後の身分は関係ない」


ユリウスが光龍の配置を見ながら呟く。


「責任の重い者から危険へ出る。徹底できるなら、強い組織だ」


ギルバート団長は団長席へ向かう途中、ガイ団長を見た。


無精髭。


乱れた外套。


椅子へ深く座った姿。


それでも驚かなかった。


ただ、学院の頃から変わらないものを見たように、僅かに息を吐いただけだった。


最後の鐘が鳴る。


七番目の門が開いた。


風鷹の団旗が、乱れのない歩調で進んでくる。


「風鷹騎士団、入場!」


先頭に立つのは、シルフィ・レイカード団長。


礼装にも姿勢にも、一分の乱れもない。


顎を僅かに上げた立ち姿には、自分が七騎士団長の一人であるという強い誇りが表れている。


随行する風鷹騎士団も、団長と同じように隙がない。


シルフィ団長は候補者席を鋭く見渡し、そのまま進行区画の中央を歩く。


成人選抜官へ礼を返し、団長席へ顔を向けた。


そして、ガイ団長を見た。


正確には、その無精髭を見た。


「ガイ」


澄んでいた声が、一段低くなった。


ガイ団長が億劫そうに顔を上げる。


「なんだ」


「あなた、王国合同ドラフトへ、その無精髭で出るつもりなの?」


会場が静まり返った。


候補者も観覧客も、どう反応すればいいのか分からない。


ガイ団長は自分の顎へ手を当てた。


「髭ぐらい生えるだろ」


「生えることを責めているんじゃないわ。剃りなさいと言っているの!」


「朝は忙しかった」


「登録資料を見る以外、何をしていたのよ!」


「寝てた」


「それを忙しいとは言わないわ!」


シルフィ団長が団長席へ向かうはずの進路を変えかける。


その間へ、ギルバート団長が自然に入った。


動きに迷いがない。


初めて止めるわけではないらしい。


「二人とも、学院時代の続きは後にしてくれ」


ギルバート団長が静かに告げる。


「候補者が見ている」


「見せればいいだろ。昔と大して変わらん」


ガイ団長は悪びれない。


ギルバート団長が眉間を押さえた。


「変わっていないことが問題なのだ、ガイ」


「ギルバート、あなたも甘やかさないで」


「私は仲裁している。学院の頃からずっとな」


その言葉に、候補者席がざわめいた。


ガイ団長。


シルフィ団長。


ギルバート団長。


今は別々の騎士団を率いる三人が、学院時代からの同期だった。


「三人とも団長になってるのに、あの距離なんだ」


メルナが声を抑えて笑う。


「ギルバート団長だけ、止める動きが慣れすぎてるよ」


シルフィ団長は候補者席からの視線に気づき、咳払いを一つした。


すぐに団長としての表情を取り戻す。


「失礼したわ。風鷹騎士団、入場を完了します」


何事もなかったように団長席へ進む。


ただし、席へ着く直前にもう一度だけ、ガイ団長の顎へ厳しい視線を向けた。


ガイ団長は気にした様子もなく、口元だけで笑っている。


ギルバート団長は二人を見比べ、小さく首を振って自分の席へ戻った。


七つの団旗が揃った。


炎獅子。


土亀。


水蝶。


雷虎。


灰鬼。


光龍。


風鷹。


布に描かれた名前でしかなかった騎士団が、今は団長と部下を伴い、僕たちの前にいる。


僕たちは彼らに選ばれるかもしれない。


誰からも選ばれないかもしれない。


レグルスはイグナシオ団長と炎獅子の隊列を見ている。


ティアナとメルトは、ゴウセル団長の背後に並ぶ補給担当まで観察していた。


フィアは七騎士団全体の配置を見比べている。


セルフィナの視線は、雷虎騎士団に残る白百合の意匠とサー・イーヴリンの立ち位置を行き来していた。


「何か分かった?」


僕が尋ねる。


「古い関係が現在まで続いている。それだけです」


セルフィナは静かに答えた。


「なぜ続いているのか、アーサー団長が現在何を求めているのかまでは分かりません」


正面では、レイシア団長が候補資料を受け取っていた。


その視線が、もう一度僕の赤い候補札へ向く。


反対側では、ガイ団長も同じ候補札を見ている。


二人の声が昨日ぶつかった理由は、やはり僕の資料にあったらしい。


けれど、成人選抜官はまだ指名開始を告げていない。


期待するには早い。


「七騎士団、入場完了を確認しました」


成人選抜官の声が響く。


「本日の開会手続きは以上です。次の段階より、候補記録の公開審査へ移行します。候補者は指定時刻まで、この場で待機してください」


成人警備員が団長席と候補者席の間へ立ち、進行区画を閉じる。


中央奥の騎士団長統括席は、最後まで空いたままだった。


七人の団長は、それぞれの基準で候補者を見ている。


イグナシオ団長は、立ち姿と目の強さを。


ゴウセル団長は、候補札だけでなく周囲への気配りを。


レイシア団長とガイ団長は、僕の赤い候補札を。


ギルバート団長とシルフィ団長も、並ぶ候補者の中から何かを探している。


アーサー団長の青い瞳も、静かに正面へ向いていた。


けれど、それが僕を見ているのか、空席を見ているのか、そのどちらでもないのか、どうしても判別できない。


七人の団長が候補者を見渡す中、アーサー・ペンドラゴン団長だけは、どこを見ているのか最後まで分からなかった。

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


 と思ったら


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 面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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