瑶季に異変……?
1月某日、週末の泊まりパーティー。
場所はまたしても悠真の1Kアパート。
今回は「新年最初の全員集合!」という名目で、瑶季が張り切って企画したものだった。
昼間からみんなで鍋を囲み、ゲームをし、笑い転げ、夜遅くまで騒いで……
ようやく、午前2時を回った頃。
理央はこたつに突っ伏して寝息を立て、すみれはクッションを抱きしめて小さく丸まり、海月はソファの端で静かに目を閉じていた。
部屋はようやく静かになった。
悠真は片付けを済ませて布団を敷き直そうとしていたが、ふと気づく。
瑶季が、ベランダの小さな窓辺に座って、外の夜景をぼんやり見つめている。
いつもなら一番騒がしい瑶季が、こんな時間に一人でいるなんて珍しい。
悠真「……瑶季? どうした?」
瑶季は少しびっくりしたように振り返って、無理に笑顔を作ろうとしたけど、すぐに崩れてしまった。「……ごめん。起こしちゃった?」
悠真は首を振って、瑶季の隣に腰を下ろす。
ベランダは狭くて、肩が触れ合う距離。
外は冷たい風が吹いているのに、瑶季の声はもっと冷たく感じた。
瑶季「……私さ。ずっと、みんなを巻き込んでるんじゃないかって思ってて」
悠真「巻き込んでる?」
瑶季「うん。最初はただ、私が悠真くんのこと諦めきれなくて……
それで理央に喧嘩売っちゃって、すみれも巻き込んで、海月さんまで……
みんな、私のせいで、こんな変な関係に……迷惑、かけてないかなって」
声が少し震えていた。
いつも明るく、感情を全部表に出す瑶季が、こんなに小さく縮こまっているのを見るのは初めてだった。悠真は少し考えてから、静かに言った。
「……迷惑なんて思ったこと、一度も無いよ」
瑶季「……嘘」
「本当。確かに最初はパニックだった。でも今は……違う。
みんながいるから、毎日がこんなに賑やかで、こんなに温かくて……
俺、こんなに幸せでいいのかなって思うくらいだよ」
瑶季は目を伏せて、膝を抱えた。
「……でも、私がいなかったら。みんな、普通に幸せになれてたんじゃないかな。
理央ちゃんと悠真くんは、もっと穏やかに付き合えてたかも。
すみれちゃんは、もっと素直に甘えられてたかも。海月先輩だって……」
悠真は瑶季の肩に、そっと手を置いた。
「瑶季がいなかったら、俺は今みたいに笑ってなかったと思う。中学高校の6年間、毎日瑶季の笑顔見て、『この子のこと、ずっと守りたい』って思ってた。
それが、全部無駄じゃなかったって証明してくれてるのが、今のこの関係だよ」
瑶季の目が、じわじわと潤み始める。
「……悠真くん」
「だからさ。巻き込んだ、なんて思わないで。俺たちはみんな、瑶季のせいでここにいるんじゃない。
瑶季が好きだから、ここにいるんだよ」
静かな夜に、瑶季の小さな嗚咽が漏れた。
「……ずるい。そんなこと言われたら、泣いちゃうじゃん……」
悠真は苦笑して、瑶季の頭を自分の肩に引き寄せた。
「泣けよ。俺、ずっとここにいるから」
瑶季は、悠真の胸に顔を埋めて、小さく、でも確実に涙を零した。
どれくらい時間が経っただろう。
瑶季の肩の震えが止まって静かになった頃、彼女は少し照れくさそうに顔を上げた。
「……ありがと。なんか、ちょっと……救われた」
悠真「よかった」
瑶季「……ねえ、悠真くん。私、まだ諦めないからね。みんなと一緒に、悠真くんのこと、もっと幸せにするから」
悠真は小さく笑って、
「……うん。俺も、みんなのこと……幸せにしたい」
二人はそのまま、肩を寄せ合って夜空を見上げた。
部屋の中では、他の三人が穏やかな寝息を立てている。
誰も傷ついていない。
誰も、置き去りにされていない。
この奇妙で甘い五角関係は、こんな夜更けの静かな時間も含めて、きっと、ずっと続いていくのだろう。瑶季が、ぽつりと呟いた。
「……来年も、再来年も、みんなでこうやって、年越しして、初詣して、泊まり会して……いいよね?」
悠真「……ああ。いいよ。ずっと、な」
外の風が少し冷たくなったけど、二人の間は温かかった。




