海月師匠の修行・4回目…
海月師匠による4回目の訓練。
「大人の余裕あるおもてなし(お茶の出し方・会話の間合い)」という、これまでで最も落ち着きと優雅さが試される内容だった。
リビングの中央に小さなローテーブルを置き、海月が用意した急須と湯呑み、小さな菓子皿が並ぶ。
みんながソファや布団に座って見守る中、海月は眼鏡をクイッと上げ、静かに葉留花に説明を始めた。
海月「4回目の訓練は……『お茶を優雅に出す』ことよ。葉留花ちゃん、いつも『えへへ〜!』って急いでお茶を注いでこぼすけど……大人の女性は、相手の目を見て、ゆっくり湯を注ぎ、『どうぞ』と静かに差し出すの。
そして……お茶を出すときに、『お口に合いますように』と一言添える。
まずは……私が手本を見せるわ。そのあと、やってみて」
海月は急須を手に取り、背筋を伸ばし、視線を客役の悠真に合わせて優雅に湯を注ぐ。
湯気が静かに立ち上り、湯呑みに音もなく注がれる。
注ぎ終えたら、ゆっくり湯呑みを悠真の前に置き、穏やかな声で。
海月「……どうぞ、お口に合いますように」
完璧だった。
みんなが「さすが海月さん……」と息を飲む。
海月「……これが、大人のおもてなしよ。
葉留花ちゃん、やってみて。
まずは……悠真くんに淹れてあげて」
葉留花「わ、わかった!えへへ……あっ! また……
ごめん、海月師匠!今度こそ……!」
葉留花は急須を手に取り、筋を伸ばし、視線を悠真に合わせようとして……
少し目を逸らしながら、ゆっくり湯を注ぎ始める。
……最初はなんとか優雅に見えた。
湯気が立ち上り、湯呑みに静かに注がれていく。
しかし——
注ぎ終わり、湯呑みを悠真の前に置こうとした瞬間、葉留花の指がわずかに震え、湯呑みがカタンとテーブルに当たる。
少しお茶がこぼれ、葉留花は慌てて。
葉留花「……あっ! ご、ごめんなさい!悠真くん……お口に……合いますように……ですわ……」
最後の「ですわ」がまたしても「ですわ〜♡」になってしまい、甘え声に変わってしまった。
みんな「……ぷっ……」海月「……ふふ……葉留花ちゃん。
湯呑みを置くときはもっとゆっくり、手首を返して……
『ですわ』は……『ですわ』で締めるのよ」
葉留花「……うぅ……あたし、やっぱり……ダメだ……
海月師匠……ごめんなさい……」
海月は静かに微笑み、葉留花の肩に手を置いて、
「焦らなくていいわ。あなたは……少しずつ、確実に進歩してる。
湯呑みを倒すかと思ってたけど、ちゃんと注ぎきった。
こぼれたのも……ほんの少し。
それに……『お口に合いますように……ですわ』って、
ちゃんと一言添えられた。素晴らしいわ、葉留花ちゃん」
葉留花「……ほんと……?あたし……少しだけ……海月師匠に近づけた……?」
海月「……ええ。着実に、よ。
次は……もっと視線を合わせて、
間を意識して……もう一回、やってみて」
葉留花は目を輝かせ、
「うん!海月師匠!あたし、がんばる!」
再挑戦。
葉留花は急須を手に取り、背筋を伸ばし、視線を悠真に合わせ、ゆっくり湯を注ぐ。
今度はこぼさず、湯呑みを丁寧に置く。
そして、少し震えながらも、穏やかな声で。
葉留花「……どうぞ……お口に合いますように……ですわ」完璧とは言えないが、
「ですわ」がちゃんと「ですわ」で締まり、視線も少しだけ悠真を捉え、間も取れていた。
海月は静かに頷き、優しく微笑んだ。
海月「……ふふ。とても良くなったわ。
葉留花ちゃん……あなた、ちゃんと成長してる。これからも……一緒に、ゆっくり進みましょう」
葉留花の目が潤み、
「……海月師匠……ありがとう……あたし……がんばるね……
えへへ……あっ!また……言っちゃった……
でも……これも、あたしの魅力ってことで……いいよね?」
海月「……ふふ。もちろんよ。
『えへへ』も……あなたの大事な一部だもの」
みんなが拍手し、
瑶季「葉留花さん、めっちゃ上手くなったじゃん!
海月先輩の教え、効いてる〜!」
理央「ふふ……葉留花さん、本当にがんばってるわね。可愛い……」
すみれ「えへへ……葉留花先輩、かっこいい……すみれも……がんばろ……♡」
夏菜実「……あたしも……なんか、応援したくなってきた……葉留花、もっとがんばれよ」
悠真「……葉留花さん、すごいよ。少しずつ……本当に変わってる」
葉留花はみんなの言葉に涙を浮かべ、
「……みんな……ありがとう……
あたし……海月師匠の教えを……ちゃんと受け止めて……
もっとみんなの支えになれるようにがんばるね……」
海月は葉留花の頭を優しく撫で、
「ふふ……焦らなくていいわ。あなたは……そのままのあなたで、みんなを笑顔にできる子よ。
それが……あなたの『余裕』なんだから。
これからも……一緒に、ゆっくり進みましょう」
葉留花「うん!海月師匠!あたし、がんばる!えへへ……あっ!また……言っちゃった……」
海月「……ふふ。それでいいのよ」
部屋は温かい笑顔で満たされた。
葉留花の「海月師匠」修行はこうして着実に、少しずつ進んでいく。
葉留花の「えへへ」は、これからもずっとみんなの心を温かくする。
七角関係は、葉留花の「えへへ」と海月の「ふふ」でさらに深く、温かく続いていく。
ポンコツも余裕も、全部がみんなの宝物だ。




