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第6話 怪人の女王とはぐれ怪人

 2ヶ月前。



(必要な準備も終えたし、そろそろアウレーシアのとこに行くか。上手いこと信用されるか、最初の関門だな)



 ゲーム知識から、アウレーシアの居城がある場所は分かっていた悠希人。

 黒の外套に黒の仮面(マスク)を着け、音もなく城内へと潜入する。


 最も、配下である怪人たちは基本、任務のために世界中へ散っている。

 遭遇することは無いだろうと、悠希人も半ば確信していた。


 

 そうして辿り着いた最奥、城主の間。

 悠希人は至って普通に扉を開け、堂々と室内へと足を踏み入れた。




「侵入者にしては、随分と大胆だな。何者だ?」

 

「グレイと、そう名乗っている。お初に御目に掛かる、怪人の女王」



 誰何するアウレーシアに、あくまでも余裕を持って受け応える悠希人。

 アウレーシアの性格上、問答無用で攻撃などはしないだろうと予想していた。



「グレイ………知らん名だな」


「当然だろう。俺自身こうして人目に触れるのは、随分と久々だ」


「ならば素性を明かせ。その為に問うたのだがな、何者かと」


 

 全身を黒衣で覆った謎の侵入者を前にしても、落ち着きを乱さないアウレーシア。

 それは、自身の圧倒的な戦闘力に裏打ちされている。

 だが、目の前の男から加害の意図を全く感じないという要因もあった。



(敵意は無い。我をどうこうしに来た訳ではないのか?読めん男だ)



 そんな思考をするアウレーシアを他所に、悠希人はふと小さく笑みを刻む。

 そして、試すように問い掛ける。



「俺が何者か、か。答えは得られずとも、気付くこともあるんじゃないか?他ならない貴方なら」


「なに?何が言いた…………いや、待て」



 悠希人の言わんとすることが理解できず、そのまま聞き返そうとするアウレーシア。


 

 しかし、寸前で違和感を抱く。

 その紫水晶(アメジスト)の瞳を大きく見開き、驚愕に表情を染める。




「其方まさか、怪人か?…………だが、有り得ん。我が生み出した者以外に怪人がいるなど」





 アウレーシアの言葉。

 それはこの世界における、怪人という存在の生態を表していた。



 『終末の大怪獣』の影響によって産まれる怪獣は、あくまで自然発生するもの。


 

 しかし、怪人は異なる。

 この世界に存在する怪人は、全てアウレーシアの手によって生み出された存在だった。




(純粋な怪人など、もう我を除いて存在する訳がない。まさか生き残りが…………いや、有り得ん。それは絶対にない…………この男、一体なんだ?)




 アウレーシアの内心を、悠希人は悟っていた。

 ゲーム知識から、彼女が何を苦悩しているかは理解できる。

 けれど、深く踏み入ることはまだ出来ない。




「怪人は全て、貴方が生み出した存在。ならば、俺という怪人は貴方の目にはどう映る?」


「…………答えろ。其方は一体なんだ?その魔力は紛れもなく怪人のものだ」


「…………ふっ。申し訳ないが、今はまだその問いに答えを返すことは出来ない」




 意味深に言葉を濁す悠希人。

 その様は、如何にもやむに止まれぬ事情で教えることが出来ないようだ。



 しかし、実際には………。




(俺ってやっぱり怪人なのかー)




 答えなど、初めから無かった。

 むしろ、悠希人も自身が怪人なのだと初めて確信をもった。

 といっても、悠希人もふざけている訳ではない。


 


 悠希人が転生してから、まず行った戦闘訓練。

 魔力を扱って戦闘態勢になろうとしたら、いきなり自らの姿が変わったのだ。


 

(黒髪黒目だったのに、いきなり灰色髪に瞳の色も灰色になるんだもんな。ほんと驚いた)



 戦う為に、魔力を練り上げている状態。

 どうやら槻宮悠希人は、その戦闘態勢時に姿が変わるようにキャラ付けされていたようだ。



 『グレイ』という名も、つまりはこの髪と瞳の色の変化が理由だった。




 そして、悠希人はなんとなく気付いた。

 この状態では、自身が怪人となったことに。




(まあ、そういう風な設定だったんだろうな。人間の筈が自在に怪人にもなれる強キャラとか。ほんとそれっぽいもんな)

 


 

 言ってしまえば、意味など無いのだろう。

 ただロマンがあるという話だ。




 しかし、悠希人にとっては都合がいい。

 光聖姫たちと敵対しなければならない関係上、自身が怪人であるならば話が早いからだ。



(人間のままじゃ、スムーズに敵だと思ってもらえなさそうだしな)



 それが功を奏し、主人公にしつこく追いかけ回されるのはまた少し先の話だ。




 と、それはともかく。

 先のアウレーシアとの問答で、悠希人も自身が本当に怪人なのだと確信が持てた。



 だからこそ散々勿体ぶって申し訳ないが、何故怪人なのかという事は悠希人にも説明できない。

 その辺りは煙に巻くしかなかった。




「俺の素性を明かすことは出来ない。だが、此処を訪れた目的は話そう」

 

「……………言ってみろ」


「配下に加えて頂きたい」


「なに………?」



 悠希人が端的に告げると、アウレーシアは怪訝そうな表情を見せる。

 侵入者である謎の男が、自身の配下になりたいなどと口にするとは思わなかった。




「随分と意外なことを口にする。我の下につきたいと?」


「正確には、中々に特殊な立場を望んでいるがな。形としては貴方を主と仰ごう」


「配下になる目的は?」


「他の怪人はみな貴方の配下なのだろう?今のままでは、俺ははぐれ者だからな。寂しいのだよ」


「次に巫山戯たことを吐かせば、即座にこの城から叩き出そう」



 鋭い眼光を向けるアウレーシアに、悠希人は無言で肩をすくめる。

 最も、悠希人としてはあながち全てが冗談という訳でもないのだが。



(初めから怪人側に付くつもりだったけど。闘おうとすると怪人になるとか………どの道、一択だったからな)



 結果的に問題はないが、戦闘態勢になると怪人になってしまうとは完全に予想外だった。

 ならばこそ、アウレーシアの元に身を寄せるしか選択肢がないのだ。




「失礼した。冗談は止そう」


「ふん、全く。さっさと言え」



 アウレーシアに促され、悠希人は彼女へと向き直る。

 そして、真剣な声色で告げる。




「貴方の配下となる理由は単純(シンプル)。貴方の怪人としての目的が叶えば、俺の目的が叶ったも同然だからだ」


「其方の目的だと?…………いや、その前に。まるで我の目的を知っているような口振りだな」


「知っているさ。全てな」


「なに?…………まさか、そんな筈は」



 アウレーシアは自身の目的を、配下にすら打ち明けたことはない。

 だからこそ悠希人の言葉を信じられなかった。



 しかし、これまで幾度も自身を驚愕させた悠希人ならば或いはと。

 アウレーシアも寒気を覚えた。




 そして、そんな予感を肯定するように。

 悠希人がゆっくりと告げる。





「怪人の女王アウレーシア。貴方の目的は『終末の大怪獣』の復活…………そうだろう?」

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