第2話 成るしかない
魔法少女たちの敵。
それは怪人だけではない。
この世界では『怪獣』という異形の存在が、日々発生し人々を襲っている。
魔法少女が日常的に闘うのはこの怪獣である。
(たしか世界観は………………)
悠希人はゲームの舞台設定をなぞる。
この世界にはその昔、世界を滅ぼしかけない一体の強大な怪獣が存在した。
現在の世界では『終末の大怪獣』と呼ばれる。
『終末の大怪獣』は人々によって倒されたが、現在でも世界の何処かに亡骸は存在している。
死してなお、大怪獣は瘴気を放ち世界を蝕んでいる。
いずれ世界には瘴気の影響によって、怪獣が産まれるようになった。
(そして怪獣に対抗するように、いつしか特別な力を持つ人間が次々に現れるようになった。それが現在の魔法少女である…………世界観はざっとこんな感じだったかな)
力を持つ人間は女性が多かった為、魔法少女という括りになった訳だ。
まあその辺りは男性向けゲームだったので、ご愛嬌というものなのだろう。
そして、ここからが核心。
怪人側の本懐は世界の滅亡な訳だが、それに『終末の大怪獣』を利用しようとしている。
とある手段を用いて、大怪獣を復活させようというのだ。
ゲームの主目的としては、大怪獣を復活させない為に魔法少女として闘うというものだ。
けれど、ここに問題がある。
(ほんと、初見殺しにも程がある………)
プレイしていた当時を想起し、悠希人は心中でため息を吐く。
(分かる訳ないんだよ。復活を阻止した時点でゲームオーバーだなんて………)
怪人を全員倒し大怪獣の復活を阻止すると、魔法少女たちの勝利という雰囲気になる。
しかし、実際は違う。
大怪獣の放つ瘴気は年月を重ねる程に濃くなっており、いずれ行き場を失う。
怪獣が産まれるだけでは限界がくるのだ。
結果として、負担に耐えきれず世界は滅ぶ。
つまり、大怪獣は復活させた上で倒さなければならなかったのである。
(あのルートは物議を醸したなー)
思わず苦笑する悠希人。
とはいえゲームとしてプレイする分には、そういうギミックもネタとしてアリなのだろう。
あくまで、ゲームであれば………。
(どういう風に魔法少女と怪人の闘いが進んでいくか分からないけど。万が一、大怪獣の復活を阻止して魔法少女側が勝ってしまったら…………)
その時点で、世界滅亡が確定する。
ただし、一応抜け道も存在することに悠希人も気付いていた。
(ゲームの知識で大怪獣復活の為の手段を知ってはいるんだよな………)
仮に復活を阻止して魔法少女が勝った場合。
悠希人が個人で大怪獣を復活させるという手もなくはない。
(まあ、無理だろうけど………)
手段を知ってはいるが、実際に行使できるのは怪人側のボスだけだろう。
よしんば復活させたとしても、一人で勝てると悠希人は思えなかった。
魔法少女たちに大怪獣と戦えるまでに強くなってもらう必要もあるということだ。
(まあ、つまり。ある程度は怪人側にも優勢のままいてもらわないといけないってことだな)
魔法少女達に完勝などされては困る。
万が一のために、怪人側のサポートもしなければならない。
そこまで考えて、悠希人の出した結論は一つ。
(怪人側に付いて、戦況をコントロールする)
大怪獣復活の為に、怪人側の計画は最終的に成就させなければならない。
しかし、人々に危害を加えるのを黙って見過ごすことは論外。
敵対しつつも魔法少女たちを傷つけず、大怪獣を倒す為に強くなって貰う必要もある。
(……………キッツいな)
すべき事の果てしなさに、思わず意識が遠くなる悠希人。
けれど、やらなければ世界が滅ぶだけだ。
(魔法少女側に事情を分かってもらえれば楽だけど、絶対無理だしな………)
洗いざらい説明するという手も浮かんだ。
けれど証明のしようがない。
それに一旦大怪獣を復活させようなど、正気とは思われないだろう。
悠希人が異常者として扱われかねない。
怪人側として魔法少女とは敵対しつつ、双方の盤面を整える。
これが悠希人が考え得る、最良策だった。
(…………まあ、それに。怪人側にも、ただ殺されて欲しくはないしな)
彼らにも背景がある。
悠希人はそれを知ってしまっている。
どうせ目指すなら、本当の意味でのハッピーエンドが良いと悠希人は思う。
(なんにせよ、成るしかないか………)
世界のため。
魔法少女たちのため。
怪人たちのため。
彼女らを陰から支える正体不明の怪人に。




