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狐巫女の嫁入り  作者: なんてん
6章

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58話.対策

 結局、その日は雨が止む事はなかった。しかしありがたい事に、代わりに妙な電話や客の連絡は途絶えてくれた。耀あきらも常に気を張っていたのか、社務所の締め作業が終わると同時に盛大なため息を吐いていた。


 泰然たいぜんが戻ったのは、遡ることおよそ1,2時間。神社の門を閉めようと社務所を出た時だった。遅くなってすまないと、びしょ濡れの身体に傘をさしながら謝っていた。

「急に雲行きが怪しくなったものだから、急いで切り上げたのだがね。結局道中で降られてしまった」

 そう言いながら笑う父に適当な相槌を打ちながら、耀がタオルを手渡す。歳を考えろという小言が聞こえ、それに泰然は苦笑をしていた。

 普段から穏やかな表情を崩さない父ゆえに感情が読みにくいのだが、果たして実りある相談だったのだろうか。


「で、どうだったの」

 耀が締め作業をする傍ら、茶を啜る泰然の話を樹希は聞いていた。耀も聞くべきだろうに、「運営とかややこしい事は兄ちゃんが聞いててよ」などと他の従業員に混じっていってしまった。

 泰然も泰然で、「最低限、お前が知っていればひとまず良い」とたしなめることもしなかったので、内心ため息をついてしまった。とはいえ、急ぎ本格的な対策に打って出るという話でもないので、今はそれでいいのだという。

「それほど大仰な話ではなくて、アドバイスをもらう程度の話に留まったよ。本筋は地域の運営に関する話題だったからな」

 今日の出来事を泰然は知らないが、何も今日始まったわけではあるまい。そんな悠長に構えていて良いものかというのが樹希の心情であった。


「でも、例えば監視カメラを導入するとかは今からでもした方がいいんじゃ…」

「一台ならともかく、予算は考えているのか?それに、参拝される皆さんの心象は良くないだろう」

 樹希の提案に泰然は冷静な反論をした。それに思わず口をつぐんでしまう。

 いくら継寂乃杜つぐなきのもりが小規模とはいえ、確かに監視カメラでセキュリティを固めるには台数がいる。樹希も神社の財政に関わっている以上、強くは出られなかった。

「ひとまずは注意喚起で様子を見ようと思う。これで騒ぎが収まれば良し、難しければ監視カメラなども考えるとしようじゃないか」


 簡潔に話を切り上げて、泰然は席を立った。というよりも、雨に降られた身体が心配だった樹希と耀が、半ば無理やりに泰然を帰宅させようと促したのだった。

「あ。今日の事話してない」

 社務所の施錠をした耀がハッとした顔で言った。樹希もすっかり忘れており、二人で顔を見合わせる。

「忘れてたな。耀、悪いけど家で話しといてくれるか?」

「わかった」

「というか、忘れてたでもうひとつ思い出したんだけど。俺の母さんのツテでセキュリティの予算とか何とかならないかな」

 樹希の母である榊原杏奈さかきばら あんな。彼女の両親が資産家で、神社の経営を支援してもらっている事を、今更ながら思い出した。

 泰然としては、既に融資してもらっている手前頼みにくさもあろうが、正直今日の事があってはそうも言っていられない気もしている。


「近く母さんに顔を出しに行こうかな。その時に相談してみるよ」

 耀にそう伝えて、樹希も帰路についた。その道すがら、樹希は実母の家庭環境はおろか、旧姓なども知らないなどと考えていた。

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