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狐巫女の嫁入り  作者: なんてん
6章

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57話.面倒事

「…ですので、ウチではそういった取材などは承っておりません…」

 社務所へ戻ると、耀あきらが困り顔で電話対応をしていた。取材、という単語を聞く限り、先ほどの樹希いつきと同じような内容なのかもしれない。

「とにかく、私の一存では決めかねますので。申し訳ありませんが今すぐのお返事はご容赦ください」

 失礼します、と受話器を置いた耀がため息をつく。直後、樹希が戻った事に気付いたようで顔を上げた。

「おかえり兄ちゃん」

「ただいま。なんの電話だった?」

「よく分からない記者から取材させてくれって。兄ちゃんが刺された事件から宵華さん関連の噂まで、こんな辺鄙な場所の神社なのにどこから聞きつけたのか…」

 同じような電話は何度も来ているらしい。

 先ほどの配信者の件も相まって樹希はげんなりとしてしまった。今の耀に話すのは憚られるが、共に神社の運営をあずかる身として共有しないわけにもいかない。事の顛末を聞いた耀はあからさまに顔を顰めた。自分も同じような顔をしていることだろう。


「何か対策を考えないといけないな。父さんは?」

「会合で、知り合いの神社に顔を出してくるって。ついでにこの件についても相談してくるって言ってた。兄ちゃんの休憩と同時くらいだったけど、帰るにはもう少しかかるんじゃないかな」

「ああ、そうだったっけ。忘れてたな」

 頭を掻きつつ、泰然たいぜんも動いている事に樹希は少し安心した。無論、事態がすぐに進展するとは思ってはいないが、この状況下でただ手をこまねいているよりもはるかにマシというものである。

「しかし妙だよな。ちょっと有名になったからって、こんなに急に色んな事が起こるもんなのかな」

 耀が小さく洩らした。その点に関しては樹希も同じ事を考えていた。同時に、脳裏には須々木の言葉とSNSのタイムラインがチラつく。

 何者かが裏で手を引いている?そんなフィクションが現実に起こっているなど、考えが飛躍しているにも程があるというものだ。

「予想外の事が起きて神経質になってるんだろ。きっと一時的なものだよ」

 樹希は半ば自分に言い聞かせるように返事をした。


 社務所のデスクに座り、置かれている書類に目を通していく。電気が点いているというのに、やけに薄暗い。

「そういや、午後からは雨が降るんだっけ」

 窓越しに空を眺める耀の言葉が耳に入った。気が滅入るなあ、などと愚痴をこぼす弟を横目に、樹希も窓の外を見やった。今朝は目も眩むほどの快晴だったというのに、今やその面影もなく厚い雲に覆われている。その曇天を見て、確かにその通りだと呟いた。

「早く上がるといいけどなあ…」

 そうして目を通す書類の中には、苦情に関する報告も紛れていた。

『配信動画に無許可で顔が載った』

『取り締まりを厳しく』

『しつこいインタビュー』

 同じような話を体験したばかりの樹希は、文字の羅列から目を背け、薄汚れた天井をあおいだ。

「なんとかしなきゃな…」

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