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砂漠の織り手  作者: 葉月秋子


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2-21

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 ぱん、と老婆は手を叩いた。


「さて。何がおこったんじゃ」


 その場で一番格上の、「磐座の老師」の言葉に、全員が動きを止める。


 大きくすすり上げたミアリスも、泣き止んだ。



 じろり、とにらまれた大柄な戦士は、さすがに鼻血は出なかったものの、痛む鼻をおさえながら答える。


「俺が見たのは、キーヤがこの子の袋を取りあげて振り回していたところからです」


 

 あ、とミーアは気付いた。

 ゴチンとしてしまった相手は、「よんなんぼう」のせんしのひとだったんだ。

 悪いことしたな。



 そして全員の眼がキーヤと呼ばれた少年に向く。


「オレはっ!

 こいつを追い払おうと思ってっ!」


「追い払うじゃと?」


 袖で鼻血をぬぐって、少年は立ち上がった。


「外れに住む混ざりものが、巫女様たちの集会所(ロングハウス)に近づいたんだ。

 追い払ってとうぜんだろ?

 こいつは一族じゃないんだから!」


「そう教えたのは誰かのう」


「みんな言ってるさ!

 こいつは恥さらしの混ざりものだって!

 これの母親は、なんで生む前に自害しなかったんだって!

 よそ者に穢されておめおめ生きてる女たちはみんな部族の恥さらしだって!」


「キーヤっ!!」


「なんだよおっ!母ちゃんが言ったんじゃないかっ!」


 母親があわてて口を塞ごうとするが、もう遅い。



「「子は親の鏡」というのう。

 皆の話をよく聞いて居ることよ」


 じろり、とばば様は、居並ぶ巫女たちをねめつける。



「子供は正直よの。

 巫女たちの考えが良く分かったわい。

 染め師の弟子どころか、巫女たちの教育をしなおさんといかんのう」



 それまで弟子を取る話はお預けじゃ。

 養い子をいじめられては叶わん。

 と「磐座の老師」はにたりと嗤った。

 

 

 

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