ミッション4—3 いざダンジョン攻略!
プレイヤーたちは今すぐにでもダンジョンに飛び込んでいきそうな勢い。
ただし、彼らはまだ武器を持たない。
そこでファルは、ティニーを呼びプレイヤーたちに呼びかけた。
「ある情報筋によると、ダンジョンにはモンスターが出現するそうです。ということは、武器が必要ということです。そこで、本日はこの陰陽師に、武器を召喚してもらいます。どんな武器でも用意してくれますよ」
「おお! 陰陽師! 頼りにしてるぞ!」
「装備は一番いいのを頼む」
「ファンタジーっぽく、剣士とかも楽しそう」
各々勝手に盛り上がるプレイヤーたち。
一方でティニーは、表情筋を動かすことなく、ファルに話しかけた。
「どんな武器でも用意するとは言ってない」
「え? もしかして、チートじゃ出せない武器とかあるのか?」
「ない」
「は? じゃあ、どんな武器でも用意できるんじゃないのか?」
「使って良い武器とダメな武器がある。使うべき武器もある」
「ああ……ティニーのこだわりか。使うべき武器は、どうせSMARLだろ」
「うん」
「だろうな。で、使っちゃダメな武器ってなんだよ」
「ショットガン。あれは卑怯者の武器」
「おい、ちょっと待て。ダンジョンみたいな狭い場所で、モンスターみたいな防御力の高い敵には、ショットガンって有効な――」
「ダメ。どんな理由でも、ショットガンは使わせない」
「だけど、ショットガンは――」
「ダメ。絶対にダメ」
「そ……そうか。他に使っちゃダメな武器はあるのか?」
「他にはない。絶対悪のショットガンだけ」
「ショットガンに対する恨みが凄いな……。ま、なんでもいい。ともかくプレイヤーたちに武器を配ってやれ。ただし、SMARLはなしだからな」
「トウヤ、ひどい」
「仕方ないだろ。ダンジョン内部でロケランをバカスカ撃たれちゃすぐに全滅するぞ」
「むうぅ……分かった」
口を尖がらせ不満そうなティニー。
とはいえ、ティニーが珍しく表情を作ったのを見て、その可愛さにファルはティニーの強すぎるこだわりを許した。
十数分後。
ファルたちとデスグローを除く全プレイヤーに、ティニーがチートで出した武器が配られた。
「BAR85か。ブルパップ式のARってかっこいいよな」
「かっこいいけど、ジャム率が高くて、鈍器とか呼ばれてるやつだよね、この銃」
「俺のKA47が火を吹くぜ!」
「61式機関銃……なんでMG240じゃなくて、欠陥品の61式……無い方がマシンガン」
「ショットガンはくれないんだね」
「弾丸は陰陽師ちゃんが召喚してくれる! これなら勝てる!」
やはり、各々勝手に盛り上がるプレイヤーたち。
ティニーのこだわりに困惑しているプレイヤーも多いが、みんなダンジョン攻略を前に胸を躍らせているようだ。
それはラムダも同じ。
「ダンジョン攻略です! ワクワクします! モンスターを倒して、経験値稼いで、強くなって、ボスを倒すんです! 楽しみです!」
ジャンプしながらはしゃぐラムダ。
プレイヤー男性陣は、そんな彼女の胸の縦揺れを楽しむ。
「クーノはァ、ここで待ってるよォ。ヤサちゃん、ダンジョン攻略楽しんできてねェ」
「うん。クーノも見張り、お願い」
「なんかあったらァ、すぐ伝えるよォ」
「……クーノ、寝ちゃダメだからね」
「分かって――フワァ……すやすやァ」
「もう寝そうになってるよ!」
ダンジョン入り口に置かれたワゴン車の運転席では、クーノが見張りをしている。
ファルたちは、ただ目の前にあるダンジョンに突撃するだけだ。
準備は整った。
いよいよファルたちは、ダンジョン入り口、明るい外と暗い坑道の狭間に立つ。
すると、突如としてデスグローが叫んだ。
「みんな! 行くぞ! 無敵の俺様についてこい! 俺様たちがこのダンジョンの覇者だ! 俺様たちがこのダンジョンのボスを潰すんだ! うおおおおお!!!」
自前のライフルを掲げ、闇の中に走り去っていくデスグロー。
無敵チートの彼に怖いものなど無いのだろう。
対してプレイヤーたちは、イミリア初のダンジョンに恐怖を隠せない。
彼らはライトを片手に、おそるおそる暗闇の坑道に足を踏み入れる。
後ろから脅かせば、おそらく銃を乱射しだすぐらいには緊張している様子だ。
「おいレオパルト。頼みがある」
「なんだ? どうした?」
「お前、なかなかにステータス高いだろ」
「まあな。何でも屋稼業で色々やったからな」
「それに『体力回復』スキルまで持ってる」
「ああ。NPC相手に使うと支持率が上がるんだ。便利だ」
「へえ、体力回復ってそんな使い方もあるのか。って、そうじゃなくて、レオパルト、お前プレイヤーたちを支援してやってくれ」
「別に良いが、ファルたちは支援しないのか? ファルたちは何をするんだ?」
「俺たちは後ろからお前らを見守ってるよ」
「そうか、分かった。プレイヤーたちの支援は任せてくれ」
快くファルの願いを聞き入れてくれたレオパルト。
ファルはレオパルトに感謝しながらも、同時に思う。レオパルトは、これほど素直な人物だったかと。
なんにせよ、レオパルトはプレイヤーたちを追ってダンジョンに足を踏み入れた。
ファルもクイックモードを発動し、ダンジョンに入ろうと一歩踏み出す。
その時であった。背後からヤサカが話しかけてくる。
「ねえファルくん、スキルのクールタイム短縮ができるドリンク、持ってる?」
「ああ、持ってないな」
「だったら、これ使って良いよ」
そう言ってヤサカは、ファルにペットボトル差し出す。
ファルは喜んでペットボトルを受け取った。
種類によって時間の長さは違うが、すべてのスキルは1度使用するとクールタイムが必要になる。
ヤサカがファルに手渡したドリンクは、このクールタイムを半分まで減らす優れものだ。
ただし、ファルが喜ぶ理由はクールタイム半減のためではない。
ヤサカが渡したペットボトルは、ヤサカの飲みかけのドリンクであったのだ。
つまりこのペットボトルに口をつけるということは、ヤサカと間接キスするということである。
――思わぬ幸運! クールタイム半減どころかやる気アップだ!
そんなことを思いながら、おそるおそるペットボトルのふたを開け、飲み口と自分の口を近づけるファル。
幸福の瞬間まで、あと数センチ。
「うん? あ、ごめん! それ飲みかけだったね。はい、新品のあげるね」
「いやいや! これで良い! 俺のために新しいのを開けるなんてもったいないだろ!」
「でも、古いのは嫌だよね?」
「古いものはダメなんて誰が決めた!? 俺はこれが良いんだ!」
「遠慮しないで。新しいのあげるよ。はい」
「ああ……俺の幸福の瞬間……」
飲みかけのペットボドルを取り上げられ、新品のペットボトルを片手に呆然とするファル。
ラムダは可笑しそうにしながら、ファルの耳元で囁いた。
「ファルさんよ、残念でしたね」
「うるせえ」
「もう少しで間接キス――」
「うるせえ!」
ヤケになったファルは、新品のペットボトルのふたを開ける。
そしてクールタイム半減ドリンクを一気に飲み干した。
幸福の瞬間を取り逃がした鬱憤は、モンスターを倒すことで晴らそう。
ファルは拳銃を握り、坑道の闇の先を睨みつけた。
彼の側では、ヤサカがPDW――MP70を持ち、ティニーがSMARLを抱える。
「ファルさん、ヤーサ、ティニー、先に行っててください! わたしはまだ準備が終わっていないので!」
「分かったラムダ。ただ、1人で大丈夫か?」
「準備が終われば大丈夫です!」
「そうか。じゃあヤサカ、ティニー、行くぞ」
「うん。モンスターは意外と強いらしいから、気をつけてね」
「私の霊感が疼く」
「よし! ダンジョン攻略開始だ! 金銀財宝が俺たちを待ってる!」
プレイヤー救出作戦も兼ねたダンジョン攻略が、今はじまった。




