第17話:女難は続くよどこまでも
言っておいてよかった。
雷志が自身の行動が吉と出たことに安心する一方で、酷く取り乱した楓から猛抗議が飛んできた。
「常に守っておかないと雷志きゅんが危険じゃないのォ!」
「外を歩いている時ならともかく、家の中だったら施錠もしっかりしますし無理矢理入ってこようとしてきたらすぐにわかりますよ……。俺にだってプライベートはあるんですから、そこを考慮してくれないと困ります」
あの手この手を使って彼を説得しようと楓が試みるも、頑として雷志は己の意見を曲げようとはしなかった。
知られて困るようなものはないことにはない、がプライベートを赤の他人……いや、空腹に苛まれている猛獣と共有する気など雷志には更々なかった。
そうこうしていると、チャイムが鳴り響く――楽しみにしていた歴史の授業が終わってしまった。
恨みがましい視線を送る雷志に便乗するように、可梨菜達が一斉に声を上げた。
「身辺警護だけでも納得できないけど、ボクを差し置いて雷志のプライベートに入り込むなんて言語道断だよ!」
「いくら多重婚が許されているとは言えども、例え警察が相手であろうとも妻となるこの私が許しません」
「雷志くんを……じゃなくて、生徒を守るのは教師の役目だもん。学校だったらワタシが守るから平気だよ雷志くん」
「俺は誰の物でもないんだけどな……」
「ダ、ダメダメ絶対にダメェ! 雷志きゅんはお姉さんと一緒にすごしてそのまま結婚して幸せな家庭コースになるんだからァ!」
「身辺警護って言いながら結局自分の欲を優先したよこのケモノビト」
尚も食い下がる楓を見かねて、同僚達が仲裁に入った。
彼女達も楓の暴走は目を見張るものがあったらしく、一人勝ち抜けを目論んだ彼女への風当たりはとても冷たい。
結局楓は最後まで納得せず強制的に同僚に連行される形で応接室から出ていった。
彼女が不在の中、身辺警護は行われるがプライベートには一切侵害しないと約束してくれた一人の女警察官に雷志は深い感謝を込めて頭を下げた。
あれだけ騒がしかった応接室に静寂が戻りつつある中を、二つの相反する感情が生ずる。
「まったく……雷志に変な女が近付かなくてよかったよ。やっぱりボクが雷志を守ってあげなきゃね!」
「未来の夫を守るべく私も精進しなければ……」
「大人の魅力で早いとこわからせた方がいいよね……雷志くんのアヘ顔ダブルピース……にへへ」
約一名に関しては実に危険極まりない発言をしているが、嬉々とした感情を隠すことなく表情に示している――その一方で雷志はというと、深い溜息を吐いて天井を仰いでいた。
「はぁ……次は体育の授業だったっけ」
「元気出して雷志くん! 次はワタシの授業だからきっと楽しいよ! なんだったら特別に雷志くんだけの特別補修……やってあげよっか?」
「尻撫で回しながら言うのやめてもらっていいですか? あぁもう、先に失礼します!」
落胆している自分を励まそうとしてくれていた、その気持ちを雷志はありがたいと思うがいやらしい手付きがすべてを台無しにした。
尻に執着するエルトルージェからの逃れんとした雷志は、どかどかと応接室を後にした。




