第8話 和紗の『何故?!』
「和紗ー起きなさいー」
階下から聞こえてくるお母さんの元気な声。
「はーい…」
ベットの中から決して聞こえない大きさの声で返事をする。
瞼が重い。
そして熱い。
瞼腫れちゃった・・・
気付いたらあのまま寝ていた。ご飯も食べずお風呂も入らず。
一回くらいご飯抜いても大丈夫だよね。
今日は休みなんだからお風呂は今から入ればいいし。
そうは思っても体が動かせない。
泣いたせいか頭も重い。
それでも起きないわけにはいかず、のそのそと布団から出る。
「和紗〜遅いわよ!早く用意しなさい!」
あまりにも起きるのが遅かったためお母さんが部屋に入ってくる。
「んー用意?」
なんの用意?今日は休みで一日ごろごろ過ごす予定なのに・・・・
「そう用意!さっさとお風呂入ってきなさい」
お母さんは私の背を押しせかす。
何でそんなに慌ててるの?
私は言われたとおりお風呂に行き面倒くさかったのでそこで歯を磨く。
湯船にどっぷりと浸かる。
昨日泣いて腫れた瞼にぱしゃんと湯をかける。
湯が目に染み入りじんわりと温かくなる。
泣いた顔が洗われすきっりする。
昨日の疲れが洗われていく。とりあえず今日と明日家から一歩も出なければ新ちゃんに会うことも無い。
一時しのぎだけど少し間を置きたい。
考える時間が欲しい。
「和紗〜早く出なさい〜」
お母さんがドア越しにせかす。
何でそんなに急いでるのよ。いいじゃん休みくらいゆっくりしていても。
「うーん今出るから」
あーでも結構長く入ってたかも。脱衣所は涼しく自分の体が火照っているため肌から湯気がもうもうと立ちのぼる。
手早くバスタオルで水気を取り何時ものジャージに着替える。
あーお腹すいた〜
昨日の晩御飯を抜き起きていきなりお風呂はきつい。だけどお蔭で無かった食欲が出てきた。
「お母さんご飯〜」
何時もはすでにテーブルに用意してあるはずの朝ごはんが無い。
何で?
「何言ってんの。そんな時間ないわ。早くこれに着替えて」
はい?時間が無い??
しかもこの服・・・・
渡された服はデニムのショートパンツにオフホワイト+ピンクのドットトップス&タンクトップ。
あ〜のー
「コレ何?」
「服」
いやそんなこと分かるから!!
「これどうするの」
「服なんだから着るにきまってるでしょ」
「誰が」
「あんたが」
・・・・・・・・。
こんな可愛い服着れるわけないでしょー!
けして派手とかそういうわけじゃないけど・・・・
女の子の服なんてどんなけ前に着たきりだと思ってるのよぅ
実は何時もはメンズのSサイズを着ている。・・・その・・デザインとかメンズのしか気に入らないんだよね。
ムギさんの格好をし始めて髪を切ったら今まで着ていた服が全く似合わなくなった。
しょうがないので暫くは新ちゃんに服を借りていた。当たり前だけどサイズが全然合わなくて新ちゃんと買いに行ったら自然にメンズの方へ行っちゃたんだ。
だからこんなの着れない〜〜!
着る必要もなーい!
「早くしなさい。後一時間しかないんだから」
だから何でそんなに急いでるのよ!ていうか後一時間あるならいいじゃないか!
「早く」
私が全く着替える様子がないのを見て凄みのある声で急かされる。
やだーー着たくないーー
目で訴えると無視された。
うー却下かーー
しぶしぶ服に袖を通す。何か緊張する。女の子の服着るだけなのにー
パンツ短い!!足なんて出したくない!!
「着れた?」
お母さんがひょこりと顔を出す。
着れたけど・・・
「良かったサイズ合ってて」
嫌むしろ合わないで欲しかったのにぃ
私がふてくされている間にお母さんは椅子を引っ張り出し座らせ化粧水をつけ日焼け止めをぬり、パウダーをつけビューラーで睫毛を上げられる。
透明のマスカラを付けリップクリームをぬり仕上げに薄いピンク色グロスを軽く塗る。
「完成〜〜かなりかなり軽いメイクだけどどう?」
どうっていわれても・・・・・
鏡で自分の顔を確認する。
うわ〜めちゃくちゃ変わってない。
派手じゃないしこのくらいならまだ許容範囲かな。
「別にいいんじゃない」
「うー その態度可愛くないの。姿はこんなにも可愛いのにー そんなんじゃ新希ちゃん逃げちゃうよ?」
何でそこで新ちゃんが出てくる!思い出させないで〜!
本当にもう。 はぁ
可愛いとかなんでそう思うのかなぁ それは親の贔屓目だ!というかお母さんのその方が可愛いじゃんか!
今日のお母さんは異様に気合がはいっている。
メイクはそれほど厚くないけど口紅の色が何時もと違う。爪もネイルばっちり。
家のお母さんは年のわりに若く見える。それ幸い。
「なんか今凄く失礼なこと思わなかった?」
「な・なにも・・・」
お母さんは鼻をふんと鳴らし今度は私の爪を磨き始める。
今更なんだけど何でこんなことしてるんだろ?
お母さんは私の手を解放する。
わーぴかぴかだー
土いじりをしている私の短い爪はいつもと見違えるような光を放っていた。
「どんなふうにする?」
髪を弄られる。
まさか髪の毛まで?!
「軽くでいいか」
もともと髪に癖を持っている私。短いと余計に目立つんだよね・・・
お母さんはアイロンで癖に合わせて軽く巻き始める。
アイロンなんてはじめて使ったかも・・・
「ふふ 完成ー!!」
お母さんはうきうきと私の手を取り玄関に走り出す。
「ちょっと待って!トイレ!」
私はお母さんの手を外しトイレに駆け込む。
「お父〜さん。もう来てる〜?」和紗母が間延びした声で夫に尋ねる。
「あぁ皆さんお待ちかねだよ」
和紗父は妻に呼びかけられ開いている玄関の扉からひょこりと現れる。
******
「やっと出てきた」
私が洗面所で手を洗っているとお母さんがまた急かす。
「ねえ何でこんな格好するの?」
「出かけるから」
「普通なら何時もの服でいいじゃんか。なんで今日はこれなの?」
私はトップスの裾を軽くつまむ。
「あーそんなことはあとあと。早く行くよ」
私の背を押し玄関に行く。
そこには見慣れないバックが。カゴで私の服と同じドット柄の布があしらわれていて可愛い。
お母さんはそれを私に持たせる。恐る恐るその中を覗くと私の携帯、財布・・・・その他もろもろの私物が。
何時、こんなの用意したのよ!
お母さんはすでにヒールを履き私を待っている。
私もスニーカーを履こうとし靴箱を開ける。・・・・ない。
スニーカーが無いー!!
お母さんの方を振り返るとその指は私の目の前にある白いサンダルを指していた。
これを履けって!?スニーカーはどこ行ったのさっ
私はそれを慣れない手つきで履き立ってみる。
ヒールが付いてるから何時もより目線が高い。
歩くとふらふらとする。
「大丈夫か?」
お父さんがふらふらしている私の手を取る。うー助かった。一人じゃ怖い。
お母さんは戸締りをする。
「和紗とお父さんは後ろに乗って」
お母さんはリンカーンナビゲーター(車)の運転席に座る。
ウチのお母さんは運転が巧い。お父さんも巧いけどお母さんはそれ以上に巧い。
私は慣れない足取りでお父さんに支えてもらいながらリンカーンまで一歩ずつ進む。
お父さんががちゃりとドアを開ける。
そこに居たのは・・・・小父ちゃんだった。
明日の更新は諸事情により朝になると思います。
ここまで読んでくださりありがとうございます。




