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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
42.ラロスゼンロ決着

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その21

 拠点での攻防は、直ぐに始まった。


 だが、直ぐに思わぬ光景を目にした。


 先陣であるバメグラッド伯の部隊が、攻勢を仕掛けているだけではなく、そのまま敵拠点に侵入を試みていたからだ。


「ん?どうなっているんだ?」

 エルドラン侯は、目の前の光景が信じられなかった。


 息子であるバメグラッド伯は、軽挙妄動に走るタイプではない。


 若いから多少の血の気はある方だとは思う。


 だが、いきなり、寡兵で突撃を噛ます程、アホな子ではない筈である。


 そして、先陣と言っても、敵の兵力に比べれば、圧倒的に少ない。


 なので、精々威力偵察レベルの戦闘が関の山である。


 それが、どう見ても、一気呵成とばかりに、攻め込むだけではなく、拠点攻略を始めていた。


「どうにも、敵の士気の落ち方が予想以上だったようです」

 副官であるフルイが、そう報告してきた。


「……」

 エルドラン侯は、フルイの報告に唖然としていた。


 戦闘の様子を見れば、分かることなのだが、未だに信じられなかった。


 つい先程まで、頑強で統率の取れた軍隊であった。


 それが、こうも簡単に崩れるとは予想していなかったからだ。


「閣下、如何なさいますか?」

 本隊に対して、いつまで経っても命令を下さない司令官に、参謀長であるラーケイが命令を促した。


 目の前の光景が信じられないとしても事実である。


 ならば、適切に対応しなくてはならない。


 例え、予想外の事が起きていてもだ。


「擬態という事はないのか?」

 エルドラン侯は、腕組みをしながらそう言った。


「分かりかねます……。

 ですが、最早、この状況です。

 仮に、擬態だった場合でも、敵の拠点の占拠は行うべきかと愚考します」

 参謀長なので、ラーケイは罠の可能性を考えていた。


 だが、擬態としても拠点を明け渡す利点が全く見当たらない。


 なので、チャンスと判断したのだった。


「確かにそうなのだが……」

 エルドラン侯は、意外に躊躇っていた。


 総指揮を執っているので、当たり前である。


 息子のように、突撃はしたいが、見極める必要がある。


「閣下、敵の一部が拠点を離脱し始めているとのことです」

 フルイは、今入った報告を伝えた。


「うっ……」

 エルドラン侯は、思わず唸ってしまった。


 あまりにも味方に有利すぎる情報が入ってきたからだ。


 人間不思議なもので、有利すぎる情報で、行動を躊躇ってしまう場合がある。


 エルドラン侯は、正にその場面にぶつかっているのだった。


「敵の援軍の確認は?」

 ラーケイは、フルイに確認を取った。


 判断しかねている指揮官に対して、より多くの情報を与える為だった。


「現在、確認は取れていません」

 フルイは、即答した。


「理由は分からないが、敵軍は総崩れと言った所か……」

 エルドラン侯は、今の情報でそう確信した。


 そして、今一度目の前の光景を確認した。


 ……。


 意外に、時間が過ぎた。


 それだけ、エルドラン侯は、現状が信じられなかったのだろう。


「よし、本隊も攻勢に出る。

 事前に撃ち合わせた部隊に分かれて、敵拠点の制圧を目指せ!」

 エルドラン侯は、漸く決心し、命令を下した。


 とは言え、目の前の光景を最初に確認してから、十数分のことであり、全然問題がなかった。


「了解しました」

 フルイは、そう言うと、各所に伝令を飛ばすべく、手配を始めていた。


「やはり、あの亡命騒ぎが引き金になったなのでしょうか?」

 ラーケイは、エルドラン侯にそう話し掛けた。


「何とも言えんな……」

 エルドラン侯は、そう答えるしかなかった。


 シーサク軍としては、厳格な軍律によって強化されていた。


 それを破る上級貴族が出てきたのだ。


 それが、綻びとなって出てきた格好である。


 とは言え、それはあくまでも切っ掛けに過ぎなかったのかも知れない。


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