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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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その9

 トントン。


「閣下、副官殿がお越しです」

 タイミング良く、扉がノックされて、外から声が掛けられた。


 まあ、何のタイミングがいいのか分からないが……。


「通してくれ」

 バンデリックは、無言でサラサの意向を汲み取った後、扉に向かってそう言った。


 すると、衝立の向こうから扉が開く音がしてから、バタンと閉じられた音がした。


「フィルタですが、よろしいでしょうか?」

 フィルタは、衝立の向こうから声を掛けてきた。


 フィルタは、残念ながら、いつの間にか、副官になっていた。


 そう、正式な副官である。


 姉のフィアナが結婚に伴い、退任する事で弟フィルタがそれを引き継ぐ事となった。


 フィルタは、姉が結婚できたことを大いに喜び、そういう理由ならばと、副官を引き受けたのだった。


 騙されている?


 まあ、そう言う事になるねぇ、明らかに……。


 実際は、サラサの出産により、産婆としての役目を終えたフィアナが、診療所に戻っただけだった。


 フィアナの結婚時期が重なった事により、罠を仕掛けたのだった。


 そして、その罠にフィルタがまんまと掛かったのだった。


 実に、単純である。


 でも、まあ、仮に掛からなかったとしても、なし崩し的に副官補から副官に役名が変わった事は疑いがない。


 という事は、こんなにくどくどと書くほどのことではないのかも知れないねぇ……。


 とは言え、嵌められた人間を見るのは、何だかやるせない気持ちになるよね。


「うん、大丈夫よ」

 サラサは、気を遣っているフィルタにそう声を掛けた。


 フィルタは、そう言われると、衝立を避けて、サラサ達の前に姿を現した。


 そして、ビシッと直立すると、敬礼した。


 まあ、色々あったが、フィルタは、この辺はしっかりしていた。


 安心である。


 どんな時も、副官としての責務を果たそうとしているフィルタは、やはり、向いているのかも知れない。


 とは言え、かなり固い。


 まあ、砕けすぎるのも、それはそれで問題ではあるが……。


 そんなフィルタに対して、サラサとバンデリックは答礼した。


 それを見たフィルタは、敬礼を解除した。


「第2艦隊全艦に、出撃準備を整えるように通達済みです。

 また、バステス部隊にも伝達済みです」

 フィルタは、早速報告した。


 なお、バステス部隊は、ワタトラの留守を守って貰うことになる。


「ご苦労様」

 サラサは、フィルタを労った。


「閣下、出撃はいつになりますか?」

 フィルタは、尽かさずそう尋ねてきた。


 副官として、優秀である。


「そうね、1ヶ月後って所ね?」

 サラサは、そう言うとバンデリックを見た。


「そうですね、このまま順調に行くと、そんな感じですな」

 バンデリックは、サラサに同意した。


「ならば、準備は急がせる必要はないのでしょうか?」

 フィルタは、更に尋ねた。


「いえ、何があるか分からないから、それなりに急がせてね」

 サラサは、そう答えた。


「はぁ……」

 フィルタは、サラサの答えに戸惑っていた。


「海戦は意外と早く決着するから、こういった場合は、タイミングを合わせないといけない。

 なので、帝国艦隊の動きによっては前後する可能性があるんだよ。

 だから、柔軟に対応しなくてはならない」

 バンデリックは、フィルタにそう説明した。


 だが、まあ、説明していて、身につまされる点があった。


 結局、今回も手伝い戦なのである。


「了解しました」

 フィルタは、説明された事で納得したようだ。


「まあ、どんなものに対しても、準備というものは大事よね」

 サラサはサラサで、バンデリックが説明している間、思う所があったようだ。


 色々な思惑はあるにせよ、ルディラン艦隊の方も陣容が整っていっているようである。


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