その15
サラサに走り寄ってくるもう一人の男がいた。
サラサ達3人は、それが見えたので、その場に立ち止まった。
その男は、サラサの前で立ち止まると、敬礼した。
「この度、ルディラン侯爵の副官を拝命しましたエイリックと申します」
エイリックは、隙のない態度でそう言った。
「ああ、聞いているわ」
サラサは答礼をすると、エイリックをマジマジと見た。
歳はフィルタより上で、サラサより下であった。
精悍そうで、忠実さを持ち合わせている印象を持った。
要するに、堅苦しいと感じていたのだった。
おいおい……。
エイリックは、その辺が分かっているのか、サラサとバンデリックがマジマジと見ている間は、敬礼を続けていた。
そして、それが終わると、敬礼を解いた。
フィルタの方は、やっと敬礼が説けるので、ホッとしていた。
こちらは、サラサに毒されてきたのか?
ああ、因みに、ヘンデリックは、副官から総旗艦艦隊の副司令官へと昇進していた。
それに伴い、階級が准将に上がり、男爵位を得ていた。
更に、目出度い事に、待望の子を授かっていた。
結婚3年目の事で、本人はかなり喜んでいたのは言うまでもなかった。
「伯爵閣下、侯爵閣下が現状においての会議をご所望です。
こちらへどうぞ」
エイリックは、一通りの鑑賞(?)が終わった後、直ぐに案内を始めた。
「了解」
サラサは、そう答えた。
そして、エイリックが歩き出すと、その後に続いた。
バンデリックは、兄が出向に来なかった事を少し安心していた。
まあ、それは兎も角、サラサの横を付いていった。
フィルタの方は、その後を付いていくのだが、複雑な心境だった。
手際の良さが、まるで自分とは違ったからだ。
確かに、エイリックは自分より年上だったので、経験値は向こうが上だろう。
(正に、選ばれたという感じだな……)
フィルタは、そう思いながらエイリックを見ていた。
と同時に、自分が副官補として、採用された場面を思い出していた。
どう考えても、行き当たりばったりであった。
とは言え、人生なんて、そんなもんだよねぇ……。
いや、人柱なんて……。
こっちはこれ以上止めておこう。
とは言え、こう言った事を今後どう活かすかでフィルタの人生が変わってくるのは言うまでもない事である。
そう、人生前向きに考えるべきである。
こう言った不運を乗り越えてこそ、フィルタの人生がより良くなるというものである。
がんばれ、フィルタ、負けるな、フィルタ!
未来は君を待っている!
たぶん……。
(落ち込んでいる訳ではなさそうだな?)
バンデリックは、フィルタの気配を背中に感じながらそう思った。
そう、ここで、落ち込んでいては、サラサの思う壺……、もとい、サラサの副官など務まらない。
と言う事なので、バンデリックはバンデリックで、いい人材を引き当てたと思っていた。
人の関係は、色々な上下関係で成り立っている。
そして、意外にも下だけではなく、上も気を遣わなくてはならないのである。
ま、そんな話はどうでもいいのかも知れないね……。




