その16
エイリックに先導されて、サラサ達3人は、オーマの執務室へと入っていった。
中には、オーマとヤーデンがいて、一行を出迎えた。
現状の説明は、道々、エイリックから説明があった。
第1軍の投入が決定された事により、ソルハまで戦線が一気に拡大した事。
シーサク側は更に戦力を投入する動きがある事。
逆に、スヴィア側には動きがない事。
我が方も、第4軍を投入する準備をしている事。
つまり、ラロスゼンロの戦いの本格化はこれからと言う事である。
「流石に、シーサクにとって、2回目の攻撃。
ここで引くにはいかないようだな」
一通りの儀式が終わった後、オーマが、早速議論を始めた。
「困りましたね……」
サラサは、苦笑いで返す他なかった。
予想していなかった訳ではないが、サラサとしては打てる手がない。
と言うより、海軍としては、何も出来ないのであった。
湖があるとは言え、完全に陸戦のみの展開である。
何も出来ないのは、当然の事であった。
まあ、それを打開する為の方策を施してはいるが、未だに取り掛かれていないのが現状である。
(焦って早く来すぎたわね……)
サラサは、自分の行動を一応後悔していた。
とは言え、逆だった場合、目も当てられない状況になるので、まあ、仕方がないだろう。
「閣下、この戦いは長引きそうですな」
ヤーデンは、困っている親子の会話を少しでも進ませる為の努力をしてみた。
「……」
「……」
でも、まあ、こんな事で、親子の会話は進む訳がなく、オーマもサラサも対応に困ってしまった。
ヤーデンはならばと思い、続けた。
「ヒンデス家にとって、弔い合戦ですからね。
そう簡単に引く訳には行かないのでしょう」
ヤーデンの発言は、本当に当を得ていた。
軍事国家の面子が懸かっているのだ。
それは意固地にもなるってもんでしょう。
そう考えると、全てに合点が行くのであった。
合理主義者であるサラサも、合理主義者寄りのオーマも、そうした説明をされると、今回の事象を納得せざるを得なかった。
だが、どう考えても、割の合わない話である。
そして、現状の説明が出来たのに、対策が出来ない話でもある。
なので、オーマもサラサも更に渋い表情になるしかなかった。
(珍しいな、ここまで対処に困るとは……)
バンデリックは、他人事のように考えていた。
まあ、バンデリック自身も何かいい案がある訳ではないのである。
「現状としては、我々は只待つしかない」
オーマが、やっと口を開いた。
「そうですね。
現状の変化を待つしかないようです」
サラサは、オーマの意見に同調して、諦めた。
「ふっ……」
オーマは、サラサの表情を見て、苦笑いした。
「ふっ……」
それを見て、サラサの方も釣られて、苦笑いした。
漸く重い雰囲気が過ぎ去ったのだった。
とは言え、まだ何も変わっていない。
このまま推移すれば、状況は好転するどころか、益々悪化していく事も想像出来る。
(とは言え、本当、どうにもならないわね……)
サラサは、現状を確認しようとすればする程、打つ手の無さを思い知らされるのだった。




