その14
サラサ達が無事(?)桟橋に降り立つと、1人の男が駆け寄ってきた。
「ワタトラ伯爵閣下、シルフィラン侯爵閣下より伝言をお預かりしております」
その男は、サラサの前で立ち止まり、敬礼しながらそう言った。
「何か?」
サラサは嫌な予感を抱きながら、その伝言を問うた。
「侯爵閣下は、本日未明、第1軍を率いてソルハに出陣なさいました。
よって、会議には参加出来ません。
急な予定変更で、誠に申し訳ございませんが、ご容赦くださいませ」
伝令係は、そう告げた。
因みに、ソルハは、シーサクとの国境に近く、ラロスゼンロの北西側に位置している都市である。
「了解しました。
侯爵閣下には、ご武運を祈りますとお伝えください」
サラサは、そう返答した。
「はっ」
伝令係は、一礼すると、サラサの元から去って行った。
サラサは、それを立ち止まって見ていた。
そして、大きな溜息を吐いた。
(最近、溜息を吐くことが多いな……)
バンデリックは、サラサを見ながらそう思った。
これは心配しているというより、大人になったと温かい目で見ているのだった。
「詳細は分からないけど、面倒なことになったようね」
サラサは、明らかに呆れていた。
面倒事が増えたので、普通は、心配する所だろうが……。
「シーサク側としては、勝機があると見ているのでしょう」
バンデリックは、一応敵の気持ちになっての発言をしてみた。
「増派して勝てるのなら、もっと早くするべきでしょうに」
サラサは、艦上での会話を繰り返した。
「ははは……」
バンデリックは、力なく笑うしかなかった。
まあ、笑っていたから、結局は、サラサと同意見なのだろう。
「とは言え、シルフィラン侯がソルハに出陣となると、戦線が一気に拡大するわね」
サラサは、地図を思い浮かべながらそう言った。
敵は自国の湖畔都市シーグラッドに向かう筈であるが、その手前のプセルジャウジャスに一旦集結する筈である。
ソルハは、そのプセルジャウジャスを牽制するには、最も近い都市である。
バルディオン側としては、そこが狙い目という事なのだろう。
それにより、援軍を阻止すると共に、兵站を圧迫する目的がある。
ラロスゼンロの東の拠点を制圧したことにより、これが可能になった事も理解していた。
「ですね」
バンデリックは、先程の表情から一転して引き締まった表情になった。
シーサクの援軍の規模によっては、まだ戦いが長引く可能性があるからだ。
「とは言え、詳細を知らないとならないわね」
サラサは、得ている情報だけでは不足していることを認識した。
「仰る通りですな」
バンデリックは、サラサに賛同した。
それを見たサラサは、何故かニヤリとしていた。
そして、止めていた歩を進めた。
バンデリックは、慌ててサラサの隣に移動し、フィルタは2人の後を追った。
「それにしても、シーサク側もしつこいわよね」
サラサは、自分の感想をぶっちゃけた。
「まあ、シーサク側も意地があるのでしょう」
バンデリックは、ある意味同情しているようだった。
まあ、分からなくはないが、やれと言われた方は堪ったもんじゃないだろうとでも思っていたのだろう。
「意地?」
サラサは、バンデリックの言葉に敏感に反応した。
そして、
「意地というより、意固地と言った方がいいのでは?」
と呆れたように、訂正を求めた。
「ははは……」
バンデリックは、再び力なく笑うしかなかった。
まあ、サラサみたいな戦略家から見ると、そう見えるのは無理もない。
だけどねぇ……。




