その13
サラサは、現在、王都に入港中だった。
いきなり、話、飛んだねぇ……。
「うーん、報せが来ないわね……」
サラサは、艦が停止したところで、急にそう言って、首を傾げていた。
これから、上陸という時にだ。
当然、フィルタは自分の手落ちを気にして、蒼ざめていた。
ただ、バンデリックの反応を確認した所、苦笑いしていたので、大丈夫だと思った。
「ラロスゼンロの戦況ですね」
バンデリックは、サラサの足りない言葉を補った。
その言葉を聞いたフィルタは、最新の報告を思い出した。
「戦況は膠着したままという報告以来、ありません」
フィルタは、思い出した事を口にした。
「うん、そうなのよね」
サラサは、完全に意外そうな表情になっていた。
「まだシーサク軍が粘っているという事ですね」
バンデリックは、付け加えるようにそう言った。
「うん、そうなんだけど、現状、ラロスゼンロを落とせる戦力を有していると思う?」
サラサは、そう質問してきた。
バンデリックにして見れば、聞きたいのはこちらの方なのだが、まあ、話が進むのでいいとした。
いつもの事だ。
「スヴィアの戦力が抜けた今、無理でしょうね」
バンデリックは、当たり前の答えをした。
話を進めたい為の答えだった。
「そうなのよね。
なのに、撤退しないという事はどう言う事かしらね?」
サラサは、益々分からないと言った表情になっていた。
戦略家としての『銀の魔女』の意見としては、その通りなのだろう。
だが、時に、人は、合理性を無視する事がある。
その事が、サラサには理解が出来ないのである。
「スヴィア軍が戻ってくるのでは?」
バンデリックは、可能性を言ってみた。
サラサに、非合理性云々を言っても仕方がない事が、よく分かっている言動である。
「拠点にしていた砦は、既に帝国軍が防御を固めているわよ。
そこにノコノコ戻ってくるとは思えないわよ」
サラサは、苦笑いしていた。
それに対して、バンデリックはまあそうだなという表情をしていた。
予想した答えの通りだったのだろう。
「ならば、シーサク本国から増援が来るのでは?」
バンデリックは、次の可能性に言及した。
「まあ、そうなるでしょうね」
サラサは、現状を説明する為にはそれしかないと考えていたようだ。
だが、やはり、納得はしていなかった。
「ならば、何故、最初から使える兵力を投入しなかったのかしら?
最初からでなくとも、こうなる前に投入する機会はいくらでもあったでしょうに」
サラサは、首を傾げるのだった。
これに対しては、バンデリックは再び苦笑いするしかなかった。
完全な正論だったからだ。
とは言え、相手にも事情があると考えていた。
どういう事情かは分からないが……。
傍らで聞いていたフィルタは、2人のやり取りを聞いていた一々尤もだと頷いていた。
だが、副官らしく、ある事に気が付いた。
「両閣下、上陸なさいませんか?」
フィルタは、いつまで経っても動こうとしない2人にそう呼び掛けた。
「そうね。
検討するには、ここよりは、上陸してからの方がいいわね」
サラサは、ニコッと笑うと、タラップへと歩み出した。
バンデリックは、フィルタの言動に花丸サインを出してから、サラサの後に続いた。
フィルタは、その2人の後を追うのだった。




