その12
ワタトラで、サラサがスヴィア撤退の速報を聞いたのは、重い腰を上げた時だった。
○りなので、体重が重いという訳ではないですよね。
「ええっと……」
サラサは、フィルタからその報告を聞いて、明らかに戸惑っていた。
(閣下も、こういう反応をするのだな……)
フィルタは報告前に、その内容を再確認していた。
フィルタでさえ、そう思ったのだから、サラサの反応は当然であった。
「撤退が擬態の可能性は?」
バンデリックの方も戸惑っていたが、参謀長としての役割は果たした。
「報告が上がっていないので、何とも言えません」
フィルタはそう答えたが、戸惑ったままだった。
「まあ、いくら速報と言っても、擬態だったら、直ぐに続報が来るわよね……」
サラサはそう言うと、考え込んだ。
バンデリックとフィルタは、サラサの言う事を尤もだと思った。
なので、サラサの反応を待つ事にした。
「スヴィアは、手伝い戦だからね、やる気がなかったのかもね」
サラサは、まずはそう判断した。
この時、当然、その手伝い戦の辛さを思い出しているようだった。
そして、出来れば、あたしもそうしたいと思っているのは明らかだった。
「……」
「……」
バンデリックとフィルタは、今度は呆れていた。
こういう時のサラサは、フィルタにも分かるぐらいの雰囲気を醸し出すのであった。
「そうね、まず、あたし達がやらなくてはいけない事をやりましょう」
サラサは、色んな思いがあるものの、国防委員会の委員としての役割を果たす事にした。
流石に、気持ちの切替だけは早い。
それにより、バンデリックとフィルタは、呆れ顔から直立不動になっていた。
「王都、出発を早めるわよ。
ラロスゼンロのロンデリックに状況を確認。
勿論、戦況ではなく、ドックの改修についてのね」
サラサは、そう命令を下した。
「了解致しました」
フィルタは、そう言って敬礼すると、直ちに部屋を出て行った。
素早く行動出来るようになったフィルタである。
副官として、様になってきているようだ。
「ラロスゼンロの防衛は成功したと見るべきなのかな?」
バンデリックは、サラサにそう質問した。
「まあ、戦況的にはそうなんでしょうね。
撤退は擬態で、シーサクとの合流を果たす事が考えられるけど、それだと、報告が直ぐに入るでしょうし……。
それがないと言う事は、そう言う事になるのでは?」
サラサは、何時になく歯切れが悪かった。
まあ、自分が指揮している戦場ではない事と、戦場にいない事がそう言った発言に繋がっているのは明らかだった。
「そうなると、ドックの改修を本格的に動かせますな」
バンデリックは、歯切れが悪いサラサの言葉を肯定する他なかった。
それよりも、次の行動が大事だと感じたのだろう。
「そういう事ね。
で、ロンデリックの方は、どうなっているのかしら?」
サラサは、一応確認した。
「ロンデリック兄は、ラロスゼンロに駐在中ですが、職人達はソルハに避難中ですね。
あれから、報告が来てませんので、変わっていないと思われます」
バンデリックは、非公式ルートからも連絡が来ていない事を話した。
「そう」
サラサは、フィルタの報告待ちとなった。
「それにしても、エルドラン侯もきちんと気を遣っているのね、安心したわよ」
サラサは、苦笑いしていた。
自分に対しての敵意を思い出しているのだろう。
「まあ、結構激しい戦闘だったみたいですからね。
その中、ドックの改修は無理でしょうし、邪魔になるだけですからね。
そして、職人達に被害があったら、目も当てられない状況になりますから」
バンデリックは、現状を説明した。
「と言う事で、あたし達は王都に急いで行かないといけなくなったわね」
サラサは、面倒臭そうにそう言った。
「あれから半年も経っていませんが、状況が大分変わりましたからね。
まずは、各所の調整を再度行う所からですな」
バンデリックは、これからやる事は大変だとばかりに言った。
それを聞いたサラサは、急速にやる気が失せるのだった。




